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ナレッジ
行政の未来はアイデンティティの未来にかかっている
デジタル世界と現実世界の融合によって、公共サービスの新たな可能性の扉が開かれる。しかし、信頼を高めその可能性を実現するには、新たなアイデンティティビジョンが求められる。
今日の新しいデジタルサービスに必要となる新たな形のアイデンティティ。その共通のビジョン「アジャイルアイデンティティ(agile identity)」についてご紹介します。
より詳しい内容はPDFをご覧ください(※)。
<本冊子の構成>
- アイデンティティをめぐる状況は進化しつつある
- 新たなアイデンティティビジョン
- どのように実現するか
- 信頼へのロードマップ
「アジャイルアイデンティティ(agile identity)」の必要性
世界各国で行政サービスが変わりつつある。オーストラリア、オーストリア、エストニア、シンガポール、さらに英国などの国々では、既にライフイベントに基づいた行政サービスや、プロアクティブ型のサービスが提供されている。例えば、退職年金制度への自動加入サービスや、申請書を提出することなく子どもの出生証明書を受け取ることが可能なサービスなどがある。このような新しいタイプの行政サービスは行政と国民の間で、まったく新しいより良いインタラクションをもたらすことができる。
しかし、このような新しいサービスには大抵新たな形のアイデンティティが必要となる。出生証明書を例にとってみよう。証明書の発行機関は、病院の記録上のデジタルアイデンティティと特定の住所に住んでいる個人の物理的アイデンティティが一致しており、市民権を得る権利があることなどを確認する必要がある。我々はもはや現実世界のみを生きているのではなく、現実世界およびデジタル世界を行き来しながら生活し、働き、活動しているのだ。そしてアイデンティティも両方の世界でシームレスに機能する必要がある。
しかし、行政は何年もの間、人々を識別するために寄せ集めのシステムを使用してきた。すなわち、現実世界では運転免許証やパスポートのような物理的なIDカードで個人を識別し、オンライン上では汎用ログイン名やパスワードでデジタルユーザーを識別してきた。そして、行政サービスに必要なレベルの精度で、物理的アイデンティティとデジタルアイデンティティの両方を識別できるソリューションはほとんど存在してこなかった。COVID-19によるパンデミックによって、デジタル渡航資格証明書などの多くのアイデンティティに関するツールやアプローチの採用が加速したものの、その導入にはばらつきがあった。その結果、統一に必要なまとまりのある国家戦略、政策、法律またはリーダーシップのない、分断されたエコシステムが生まれた。
アイデンティティには共通のビジョンが必要である。現実世界であれ、デジタル世界であれ、あるいはバーチャルリアリティのような現実とデジタルの組み合わせであれ、ユーザーのプライバシーを保護すると同時に、ユーザーがどのチャネルを好むかに関わらず、トランザクションを容易にするビジョンが必要だ。共通のビジョンがあれば、アイデンティティエコシステムにおいて多数のプレイヤーのイノベーションを調整することが可能となり、誰もが共通の目標に向かって、自主的に行動できるようになる。私たちはこのビジョンを「アジャイルアイデンティティ(agile identity)」と名付けた。
様々なアプローチやテクノロジーによってこのビジョンを実現することは可能だが、行政はアイデンティティをめぐる状況の統一を図り、このビジョンの信頼性を高める必要がある。国民が将来望むサービスが実現できるか否かは、今必要としているアイデンティティソリューションを持っているかどうかにかかっている可能性がある。行政の未来はアイデンティティの未来にかかっている。
(「行政の未来はアイデンティの未来にかかっている」, P2より)
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