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インド政府が国家デジタルヘルスミッションを発表

【第114号】ライフサイエンス・ヘルスケアに関する海外サイバーセキュリティニュース

2020年8月15日、インドのモディ首相は、第74回独立記念日の演説の中で、「国家デジタルヘルスミッション(NDHM)」の開始を発表しました。北部のチャンディガルや南部のポンディシェリ、アンダマン・ニコバル諸島など、連邦直轄地6カ所で、NDHMの実証試験事業を実施するとしています。

第114号 2020.8.31公開

NDHMは、モディ政権のユニバーサルヘルスカバレッジをめざす「国家健康保護ミッション(Ayushman Bharat)」に匹敵するような、新たな旗艦プロジェクトを創設することを目的としたエコシステムであり、すべてのインド市民に固有の健康IDを発行して、診療録のデジタル化や、医師および医療施設の電子登録を実現するとしています。

モディ首相は、一意の保健IDを介して、共通のデータベースに、疾患、診断、レポート、診療などの情報が集約され、診療録のIT化の基盤となると述べています。このデータベースに、インド全土の医師および医療施設の登録情報が紐づけされる仕組みを構築する方針です。保健IDは、モバイルアプリケーションを介して提供され、すべての州、病院、臨床検査施設、薬局で利用可能になるとしています。さらに、提供されるデータは保護され、診療録は個人の認可後にのみ共有されることを、政府が保証すると述べています。

ただし、個人情報保護法制に関して、インド政府は、2019年12月11日、個人データ保護法案をインド議会に上程しましたが、今も継続審議中です。サイバーセキュリティ関連法制についても、サイバー犯罪が顕在化する金融業界などから必要性が叫ばれていますが、具体的な法整備に向けた動きが始まるまでには至っていません。

その一方、デジタルヘルスの外交面において、インド政府は積極的な姿勢を示しています。たとえば、2019年2月27日、世界35カ国以上の政府関係者をデリーに招いて「グローバル・デジタルヘルス・パートナーシップ・サミット」を主催しており、そこで、世界保健機関(WHO)に対して、ロードマップを作成し、デジタルヘルス戦略の実現に向けて、加盟国を支援するよう求める「デジタルヘルスに関するデリー宣言」が採択されました。その後同年3月26日には、WHOが、適切なデジタルヘルスの採択を加速させることによって、誰でもどこでも受けられる保健医療を向上させることをビジョンとする「2020-2024年グローバルデジタルヘルス戦略」草案を公表しています。

 

当該記事が関係機関に及ぼすと考えられる影響

医療機関

・日本の医療機関が、従来からの国際協力プログラムに加え、民間企業(例.総合商社)などとの共同プロジェクトでインドの医療機関と連携する機会が増えており、国家デジタルヘルスミッション(NDHM)の動向が注目される。医療データ利活用などでインドと連携する日本の医療機関は、個人情報保護/サイバーセキュリティ関連法制の整備動向を捕捉しながら、データリスク評価を慎重に行う必要がある。
 

医療機器メーカー/医療品メーカー

・インドにおいて臨床試験や医療データ利活用を行う医薬品/医療機器製造企業は、国家デジタルヘルスミッション(NDHM)が、今後の自社のビジネス面・技術面に及ぼすメリットと課題に加え、個人情報保護/サイバーセキュリティ関連のデータリスクについても事前に評価を行っておく必要がある。

サプライヤー

・インドの医療機関向けにICT関連製品・サービスを提供するサプライヤーは、国家デジタルヘルスミッション(NDHM)に係るデータの技術標準化動向を注視するとともに、インド国内における個人情報保護/サイバーセキュリティ法制の整備が外部委託管理やサプライチェーン・セキュリティにどのようなインパクトを及ぼすかについても、他国・地域と比較しながら分析する必要がある。

ライフサイエンス・ヘルスケアに関する海外サイバーセキュリティニュース

デロイト トーマツ グループのサイバーセキュリティチームでは、ライフサイエンス・ヘルスケア業界に向け、海外の規制情報やそれに伴う関係業界への影響について情報提供しています。(不定期刊行)

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