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ゲノムデータ解析を支える英国保健安全保障庁が業務開始

【第142号】ライフサイエンス・ヘルスケアに関する海外サイバーセキュリティニュース

公衆衛生システムと国家安全保障インフラストラクチャの統合組織として、今後、データ分析およびゲノムサーベイランスにおける最新技術や画期的な機能を有効活用しながら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や将来の脅威に、地域レベル、国家レベル、グローバルレベルで取り組む

第142号 2021.10.18公開

2021年10月1日、英国保健省は、英国保健安全保障庁(UKHSA:UK Health Security Agency)が新たに業務を開始したことを発表しました。UKHSAは、イングランド公衆衛生庁(PHE)、NHSテスト&トレース、合同バイオセキュリティ・センター(JBC)をベースに、公衆衛生システムと国家安全保障インフラストラクチャの統合組織として機能することを目的としています。今後、データ分析およびゲノムサーベイランスにおける最新技術や画期的な機能を有効活用しながら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や将来の脅威に、地域レベル、国家レベル、グローバルレベルで取り組むとしています。

UKHSAの前身であるイングランド公衆衛生庁は、国民保健サービス(NHS)と連携しながら、イングランド地域の公衆衛生行政を所管してきました。これに対して、NHSテスト&トレースは、COVID-19に係るPCR検査結果や、保健・公的介護省(DHSC)が提供する接触確認アプリケーション「NHS COVID-19」からの情報に基づく接触追跡業務を担ってきた組織です。また、合同バイオセキュリティ・センターは、2020年5月、COVID-19感染拡大に対応する地域レベルおよび国家レベルの意思決定を告知するために、エビデンスに基づく、客観的な分析・評価・助言を提供することを目的として設置された組織です。

UKHSAは、新規変異株評価プラットフォーム(NVAP)の構築・運用業務を担うことによって、英国が全ゲノム配列決定(WGS)における世界的リーダーとしての地位を維持するのに、重要な役割を果たすとしています。特に、NVAPを支える英国独自のシーケンシングおよび変異株評価機能を活用して、他国のCOVID-19対応を支援し、グローバルヘルスの安全保障を強化し、国内外の人々を保護することが可能になるとしています。

従来、イングランド公衆衛生庁が所管してきた全国がん登録・分析サービス
。(NCRAS)はNHS傘下のNHSデジタルに移管されました。今後は、NHSデジタルが英国GDPR上のデータコントローラーとしての役割を担い、がん登録情報の匿名化管理、オプトアウト手続窓口の運営などを行うとしています。

なお、世界各国で、COVID-19関連の行政機関や研究開発組織を標的にしたサイバー攻撃が深刻化していますが、UKHSAやNHSおよびその傘下組織のサイバーセキュリティ管理策に対しては、重要インフラストラクチャ保護の観点から、政府通信本部(GCHQ)傘下の国家サイバーセキュリティ・センター(NCSC)が継続的に支援活動を行っています。

当該記事が関係機関に及ぼすと考えられる影響

医療機関

・COVID-19関連業務で公衆衛生行政機関とデータ連携する医療機関は、行政機関側にサイバーインシデントが発生すると、自組織の業務プロセスに影響が及ぶ可能性があるので、サプライチェーン全体の観点から、現行の事業継続管理体制を見直し、行政機関との間でサイバーセキュリティに関する情報共有体制を強化する必要がある。
 

医療機器メーカー/医療品メーカー

・COVID-19パンデミックへの対応の一環として提供された保健医療データを研究目的で2次利用するメーカーは、自社の保健医療データ利用が適正であることを患者や医療機関に説明できるような仕組を構築し、インシデント発生時を想定しながら、個々のデータライフサイクルにおける役割・責任分担や情報共有機能などについて、再点検しておく必要がある。
 

サプライヤー

・公衆衛生行政機関向けに保健医療データシステムの開発・運用を受託するパートナー/サプライヤーは、技術的なサイバー攻撃対策を強化するとともに、データを介して連携する企業や組織などとの間でサイバーセキュリティに関するリスクコミュニケーション体制を構築しておく必要がある。

ライフサイエンス・ヘルスケアに関する海外サイバーセキュリティニュース

デロイト トーマツ グループのサイバーセキュリティチームでは、ライフサイエンス・ヘルスケア業界に向け、海外の規制情報やそれに伴う関係業界への影響について情報提供しています。(不定期刊行)

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