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業界別ライセンス料の考え方

ブランドの性質ごとの傾向と事例のご紹介

個々の知的財産がユニークであるために不動産における賃料のように近隣における賃料相場などの客観的データが存在しないのが実情である。ここではその参考としてブランドをライセンスする場合における業界ごとのライセンス料率の考え方および米国のライセンス料率の事例について紹介する。

ライセンス料率とは

ライセンス取引に基づいて技術、商標等をライセンスする対価としてはランプサム(一時金)で支払うケース、ランニング(売上高に対する一定料率)で支払うケース、及びその両者を併用して支払うケースが存在する。支払方式により回収リスクの程度はあるものの、事業価値の観点からはいずれにしても将来のライセンス料を割り引いた現在価値のベースで検討することになる。また個々の知的財産がユニークであるために不動産における賃料のように近隣における賃料相場などの客観的データが存在しないのが実情である。ここではその参考としてブランドをライセンスする場合における業界ごとのライセンス料率の考え方について紹介する。 

一般的なブランドの相対価値の度合い

一般的に事業買収を行う際に企業の超過収益力の源泉としては「マーケティング関連(ブランド等)」「顧客関連(長期的な顧客との関係等)「芸術関連(映像・音楽等)」「契約関連(営業許可の権利等)」「技術関連」が挙げられる。ブランドは業種・性質ごとに傾向があり、「B2BよりもB2C」、「日常品よりも娯楽品」のほうが、いずれもブランド価値(=ライセンス料率)が高いとされている。なぜならB2BよりもB2Cの方が、日常品よりも娯楽品の方がそれらの超過収益力の源泉の中でブランドの相対的な価値の度合いが高まってくると考えられるからである。図表1はその傾向を示したものである。 

 

米国におけるライセンス料率事例

図表2は米国におけるライセンス料率の業界・ブランドの性質に応じた事例を示したものである。上述の通り一般的には業種・ブランドの性質に応じてある程度の目安となる料率が存在する。この事例の料率の平均値は娯楽玩具>アパレル>食品小売>卸売製品>産業財となっている。しかしながら、実際に取引されているライセンス料率は、個々の取引上の特性によって、最低値と最高値との間の幅があるのが実状である。この一因としてライセンスの個々の取引においてライセンシーの利益に寄与するブランドの程度が相違することが挙げられる。

従ってこのような事例はある程度参考となるものの、ライセンス料率の決定・交渉にあたっては次のような多面的なアプローチによって幅広い材料を収集することが望ましい。
1) 類似取引事例法(マーケット・アプローチ):ライセンス料に関して類似のライセンス契約の取引事例より算定する方法
2) 超過収益法(インカム・アプローチ):ライセンシーが知的財産を用いて事業を行った結果生み出された利益から、当該事業に貢献するその他資産の要求利回りを控除した利益を基にライセンス料を算定する方法
3) 利益分割法(インカム・アプローチ):知的財産を用いた事業から得た利益を各種財産の貢献度に応じて配分し、対象知的財産のライセンス料を算定する方法
4) 再調達原価法(コスト・アプローチ):現時点で、対象知的財産と同等の知的財産を新規に調達(製作)する場合に要するであろうコストの総額からフローの観点で期間的なライセンス料を算定する方法 

 

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