最新動向/市場予測

コーポレートガバナンスの潮流<後編>

世界的な動向と日本企業への影響

デロイトにおいてコーポレートガバナンスサービスのグローバルリーダーを務めるDan Konigsburg氏の来日に伴い、コーポレートガバナンスの世界的な潮流と日本企業への影響について、インタビューを行ったので紹介する。

海外と日本のコーポレートガバナンス

●他のアジア諸国と比較して、日本がコーポレートガバナンスという点でやや後れを取っているということでしたが、それに加え日本ではまだ不況が続き、グローバル市場で生き残るための強力な能力を失っています。でも、日本の多くの経営者は、倫理観があり真摯さが高いことから、企業の競争力はまた高まるのではないかと思っています。
 つまりグローバル市場で他の会社と競争できる力を取り戻せると考えているのですが、それについてはどう思われますか?

Konigsburg氏: 最初に申し上げたいのは、それは難しい質問だということです。私も日本の経営者が真摯であると信じています。日本の経営者は強い倫理観を持っていると思います。それは、社員、株主、社会のために利益を上げ、成功し続けている多くの健全な日本企業を見れば分ります。戦後の日本の奇跡は、これがほとんどいつでも機能することを証明しています。しかし、コーポレートガバナンスが必要とされる理由は、これら強い倫理観等が常に機能するわけではないと考えられているからです。
 アメリカでも、多くの経営者は倫理感があり真摯です。問題は、日本にはアカウンタビリティ(説明責任)を強く求めるメカニズムがないことです。それは「フェイルセイフ(fail safe)」と呼ばれています。この言葉が意味するのは、「何か間違いが起きたときに、それを修正するために何を期待できるか」ということです。日本企業で何か間違いが起きたとき、それを修正するために頼れるのは経営者だけです。残念ながら、最近、経営者が倫理的ではなかった例が発生しています。コーポレートガバナンスが示唆するのは、万が一のためにアカウンタビリティを強く要求するメカニズムが必要だということです。そしてほとんどの国で、そのメカニズムは経営者を監督する取締役会です。それは経営者をモニタリングし、同時に経営者の良き相談役でもあります。取締役会は戦略とリスクについて、その他いろいろなことについて考えるので、95%の時間は経営者の相談役に費やしているといえます。しかし、重大な形で、重大な瞬間に、取締役会は役目を切り替え、監督者としての役目を引き受けます。コーポレートガバナンスが望ましいのはそのためです。つまり、何か間違いが起きたというごく稀なケースに備え、何らかのアカウンタビリティが存在するのです。
 さて、日本ではどうかというと、何か間違いが起きたときの備えであるメカニズムとして、別のシステムが発達しています。ひょっとすると、1つの考え方として、日本の会社には一生を会社に捧げる人たちがいるということなのかもしれません。それは会社に献身的に尽くす人たちで、何か起きそうだ、間違いが起きそうだ、と気づいたときに手を挙げて発言し、それを正そうとする、そのような行動を促す強いインセンティブが、その人たちにはあるのです。それに頼ることも可能かもしれません。しかし、外国投資家に言わせれば、「社外取締役がいる取締役会のようなアカウンタビリティを保証するメカニズムの方が安心できる」でしょう。
 銀行等を通じて資金調達ができてきたことは、日本企業が他の国々と違って見えることの大きな理由です。でも、それはドイツとよく似ているのです。ここ20年間のイタリアともよく似ています。フランスも同様です。それらの国では株主の存在感が薄く、株主に力がなく、影響力がありませんでした。企業は銀行から借り入れれば済むからです。
 繰り返しになりますが、それは別のタイプのコーポレートガバナンスです。そちらの方が良いか悪いかは私にはわかりません。日本が後れを取っているという訳ではなく、それはただ違うシステムなのです。しかし、M&Aのために株式資本を使うようなシステム、つまり、他社を買収するための手段として株式を使うようなシステムに移行するのであれば、株主の要望にもっと注意深く耳を傾ける必要があるでしょう。そしておそらく、古典的で伝統的なコーポレートガバナンスに、もっと注目する必要があります。
 先ほどのご質問は、「企業を所有するのはだれか」という根本的な疑問でもあります。アメリカであれば、「企業を所有するのは株主だ」と答えるでしょう。日本であれば、歴史的に、これまでは「企業を所有するのは従業員だ」にきわめて近い答えだったと思います。エネルギーと時間と生活を捧げるのは従業員ですから。あるいはひょっとすると、「従業員」と「広い社会全体」を何らかの形で組み合わせた答えだったかもしれません。ですが日本はゆっくり変わろうとしています。 

2つの帽子をかぶる

●銀行もグローバル市場で他の会社と競争できる力を取り戻せると考えられますか。

Konigsburg氏: そうかもしれません。現時点ではバランスを取っている状態で、「日本企業を所有するのはだれか」という質問に対する答えは、たぶん、従業員、社会、それに株主を加え、その間でもっとバランスを取ったものになるでしょう。そして、経営をどのように進めてゆくのか、どのようにそれを受け入れ、経営を進めてゆくのか、それが日本にとり、今後数年の大きな問題になるでしょう。
 それは何を意味するのか。例えばドイツでは、社外取締役もいますが、従業員も取締役会に加わっています。日本にとって、それがモデルになるかもしれません。つまり、「取締役は10名です。4名は経営側、3名は独立した社外取締役、3名は従業員です」という具合です。ドイツはまさにそのような状況で、とてもうまくいっています。
 もっとも、モデルは1つだけではありません。ただ、だれが会社を所有するのかという実質的な討論をして、モデルを決める必要があると思います。単にだれが所有するかだけでなく、「だれのために会社を経営するのか」ということです。従業員のために経営するのか、それとも株主のためか、社会のためか。もしもその3者すべてのためだとすれば、それらの間でどのようにバランスを取ればいいのでしょうか。その間で利害の衝突が起きた場合、どうなるのでしょうか。
 フランスがよい例です。フランスでは、大企業数社で従業員と株主の利害が衝突するという状況が発生しています。収益性が低下したため、必要な工場の数が減り、会社は工場を閉鎖しようとしました。しかし、政府の主張は「それはだめだ。フランスの会社なのだから、フランス国内にとどまり、広い社会全体を支えなければならない」というものです。このように、フランスはまさに今、この同じ質問(どうバランスを取るか、だれのために会社を経営するのか)という質問をめぐり、論争を繰り広げている国だと思います。いろいろな意味で、日本はそのような鋭く対立する問題には直面していないと思います。

●決して日本が遅れているとは思っていない。システムの話なのだということ。それから確かに強い倫理感があれば、そのように強くなれると思っていると。そういうことでしょうか。
 現時点で、日本政府は企業のコーポレートガバナンス強化を重視しようとしています。しかし、私の考えでは、コーポレートガバナンスという点で、もっと取締役間での話し合いが必要だと思います。その理由の1つは法律と取締役の責任ということで、日本では、取締役が執行と監督という2つの役目を担っています。それが障害となり、コーポレートガバナンスに関して取締役会メンバーの間で話し合いがあまり起きていない理由だと思います。
 この点について、どう思われますか?

Konigsburg氏:日本の法律の専門家ではありませんが、それはさほど異例な事態ではないと思います。どの民間企業でも、取締役にはその2つの役目があります。デロイトを例に挙げましょう。当社は民間企業であり、プライベート・パートナーシップです。取締役会の構成は全員、内部のパートナー(役員)です。私たちにも2つの役目があります。取締役会では、執行について、つまり業務についてすべきことを話すこともあれば、監督ということについて話すこともあります。賢いディレクター、つまり、これら2つの役目を理解できるだけの賢いディレクターが必要ではないでしょうか。英語では「2つの帽子をかぶる」という言い回しがあります。1つの帽子、つまり執行の帽子を脱いで、監督の帽子をかぶるというやり方ができなければなりません。デロイトには、それができるだけの賢いディレクターがいると思います。
 確かに、デロイトの取締役会議で休憩時間になったときに、廊下で同僚と「このクライアント管理はどうなっているのかな」などと話すことはあります。取締役会の外で一緒に働いていますから。でも、取締役会議では別の帽子をかぶり、別の考え方をするのです。私の仕事に役立つようなことについて、私自身の仕事との関わりについての決定は下しません。全員にとり最善のことを考えねばならず、監督について考えなければならないのです。その両方をすることは可能だと思います。 

世界と日本における取締役の状況の違い

●聞いたところでは、アメリカでは取締役会メンバーの大部分は執行を担当していないということですが、日本の状況と比較して、取締役がコーポレートガバナンスについて話しやすい状況になっていますよね。アメリカでは、執行を担当しない取締役が過半数を占めることが義務付けられているのですよね。

Konigsburg氏: はい、その通りです。

●日本では、新しい会社法で、企業に対して少なくとも1人の社外取締役を指名することが義務付けられたところです。 それがアメリカと日本の状況の違いではないでしょうか。

Konigsburg氏: 世界の他の国々における経験を見ると、これは常に進化という形を取っています。それは長い時間がかかる行程なのです。他の国々でも、1人の社外取締役から始まり、会社はそれに慣れてゆく。社外取締役は会社の邪魔にはならないと理解する。社外取締役は知的で物分かりの良い人たちであり、建設的な人たちです。取締役会で問題を起こしたりしない。やがて、それを2人、3人、4人に増やすという意見が支持されるようになります。そうした取締役の価値に気づくのです。それは単に我慢しなければならない存在ではないと。
 それがうまくいくと、社外取締役は実際に価値を提供します。新鮮な視点を提供し、社内の人からは出ないような質問をします。礼を失しない形で異議を唱えることができます。繰り返し、自分の過去の経験を活かしてくれます。考えてみてください。社内の人のみの取締役会では、全員が同じ会社で、同じ業界で働いてきた人たちです。ほぼ同じ絵を見ているようなものです。そうすると、それよりも大きな絵を見ることは難しいでしょう。社外取締役に可能なことは、特にそれが別の業界の人であれば、新たな発想、思考を会議にもたらし、価値を付加し、貢献することです。
 例えばデロイトですが、先ほど述べたように、デロイトのメンバーファームでは、取締役会には社内のパートナーしかいません。しかし、すべてがそうではありません。ロンドンではごく最近、デロイトの取締役会に3人の独立した社外取締役を加えました。社外取締役の人数は過半数ではありませんでしたが、正直なところ、ロンドンのパートナーたちは懐疑的でした。それがうまくいくかどうか確かではなかったのです。しかし、今彼らに話を聞けば、それが大きな良い変化をもたらしたと答えるでしょう。取締役会での討論に多くの価値をもたらしました。 

日本政府と大企業における社外取締役

●先ほど触れたように、日本政府は大企業に対し、少なくとも1人の社外取締役という義務付けを導入します。大企業に対し、社外取締役が取締役の総数の過半数を占めるよう義務付けることを日本政府に推奨されますか?

Konigsburg氏: 推奨といいますか、社外取締役が日本の取締役会にいかに貢献できるかを検討することには価値があると思います。

●現在、政府は企業に対し、少なくとも1人を義務付けています。しかし、ガバナンスについてのスピードという点から考えると、コーポレートガバナンスの強化という意味で、投資家にとってはそれでは遅すぎるように見えます。
 日本政府についてどう思われますか?政府はまだ日本企業を変えることを躊躇しているのでしょうか。

Konigsburg氏: どのような変化であれ、どのような国であれ、それは難しいものです。その意味で、日本でも特に違いはありません。何かうまく機能している体制があり、それに長いこと慣れていれば、変化はとても難しくなります。保守的な体制の中で何らかの変化を進めようとしている日本政府はすばらしいと思います。ですが、それには時間がかかります。2~3年では足りないかもしれません。でも、それでいいのではないでしょうか。拙速によっていろいろ躓くよりも、ゆっくり進めて良い結果を出す方がいいですよ。私は正確にどのような政策立案が望ましいかを言える立場ではありません。でも、確かに正しい方向に進んでいるように見えます。 

社外取締役のベストプラクティス

●日本企業において社外取締役のベストプラクティスが十分ではなく、適任な候補者の数は限られています。
 社外取締役の人数を急いで増やさなければならないということであれば、このような人材を育成し、維持するようにしなければなりません。

Konigsburg氏: それはとても良いご意見ですね。日本には十分な人数の取締役に適任な人がいるか。実際には、いるのではないでしょうか。すでに他の企業のCEO、CFO、経営トップの人でも取締役に就任できるとすれば、経営トップの人で、別の業界で新鮮な視点を提供できる人は何千人もいますよ。自動車業界の経営トップで、食品メーカーの取締役に就任するなどですね。その場合、利害の衝突はありません。現に多くの国で、企業は経営陣が他の取締役会に参加することを望んでいます。なぜそれを望むのかというと、それにより新たな視点が得られるからです。経営陣はそれを自社に持ち帰ります。それを自社での人材開発につなげよ
うとするわけです。
 また、先ほど女性について話しました。日本には賢く才能のある女性がいます。その方向で考えれば、皆さんがお考えになるよりも多くの取締役がいるかもしれません。外国人取締役もそうです。日本はある意味で、外国人のリーダーを大歓迎する国です。日産の状況は見事な例ですが、他にも予想外に大勢いると思いますよ。
 第2のポイントとして、日本取締役協会という団体があります。取締役が集まる協会で、研修を行うなど、集まって討論するための場を提供しています。それも役に立つかもしれません。さらに多くの人を取締役に昇進させること以外に、日本では何かが必要でしょう。

●問題は、社外取締役になれる人が少ないということではないのです。これは人材の流動性の問題と考えています。日本人は組織に頼ります。大学を卒業して、有名企業に入社します。そして通常、定年退職するまで働きます。
 日本経済には多数のタイプの経営者がいますが、社外取締役の良い候補を見つけるのは難しいのです。なぜなら、今申し上げたように社外取締役の役目を引き受ける機会がないからです。

Konigsburg氏: それこそ私の意見のとおりです。私はある日本企業の取締役を務めつつ、同時に時間を割いて、別の企業の社外取締役になることができます。これは、外国ではごく普通によく行われることです。例えば、私がある日本の会社の取締役、経営トップの一員だったとしても、私が毎月1日、別の会社の取締役会に出席することを、その会社は許可しなければなりません。先ほど述べたように、世界中の多数の企業が他社の取締役になることを推奨しています。自社の人たちに、そうするよう奨励しているのです。それは良い経験になり、それによって視野が広がり、他の業界や他の考え方に触れることができると考えているからです。

●でも、他社のために何時間か割くのであれば、自社に貢献できる時間は減りますよね。

Konigsburg氏: そうですね。理屈としてはその通りです。ただし、第1に、それほど多くの時間ではありません。たぶん月に1日でしょう。それよりも少し多いかもしれません。勤務時間の10%ぐらいかもしれません。第2に、自社に価値を持ち帰ることができます。それは新しい発想に触れることにより、効果的に仕事を進められるようになり、他の人たちと関係を築けるからです。私なら、それを単に時間を取られる面倒なこととは考えませんね。本当にそういうことであるなら、確かに取締役はほとんどいないでしょう。でも、これは少し違う見方をする良い機会です。
 それに加え、あなたは引退した取締役のことに触れていましたが、日本は代表的な高齢化社会であり、年齢のために定年退職を余儀なくされても、まだ気力に溢れ、とても頭脳明晰な人たちが大勢います。70代、80代まで取締役を務めることが可能です。実際、一部の問題については、これが解決策になるかもしれません。例えば70代か80代の引退した人たちを、非常勤の取締役として任命するとしましょう。これは非常勤であって、週40、50、60時間というような仕事ではないことに留意してください。ある意味で、これは退職者にとり理想的です。1日に2~3時間、あるいは週に1日か2日というような仕事で、その後はゴルフでも何でも好きなことに戻ればいいのですから。アメリカでは、大勢の取締役が退職者です。 

経営者の年齢層

●現在、日本企業は経営幹部が他社の社外取締役に就任することを認めていないと思います。経営者が考え方を変え、経営幹部が他社に行くことを許可し、その優良事例を作れば・・・。

Konigsburg氏: そうです。それには精神面の変化が必要です。

●示唆されたように、日本のマネジメントは考えを変え、取締役が他社の社外取締役になることを認める必要があるということですね。ただ、日本では経営者が執行と監督を両方の役目があるため、忙しすぎるのではないかと言う懸念があります。そして年齢層も高いため、体力的にもやはり懸念が出てきます。
 他の国はもう少し若いうちに経営者になると思っているのですが、昔からそうなのか、何かきっかけがあって経営層が若返っていったのか。若返るには、どうしたらいいかを伺いたいです。

Konigsburg氏: 実を言うと、他国の経営層が日本よりも若いとは思いませんね。確かにマネジメントが若い会社はあります。フェイスブックとかツイッターとか。現に、私がプレゼンテーションをするときに、面白い写真を引用することがあります。「これが1950年代の取締役会です」。それは高齢男性の集団がテーブルを囲んで席に就いている写真です。次に、「これが現在の取締役会です」と言いながら、ツイッターの取締役会を見せます。それは取締役会のようには見えずまるでロックバンドです。全員が20歳、22歳というような歳なのですから。
 ですから、シリコンバレーやハイテク企業については、経営者が若いと言えるかと思います。でも、米国の取締役会は日本の取締役会より格段に若いとは思いません。ゼネラル・エレクトリックや工業分野の大企業の取締役会もそうです。それについてデロイトが調査した結果によると、アメリカの取締役の平均年齢は、ハイテク企業を除けば40代の取締役は大変珍しい存在ということがわかりました。50代でさえ、まだ若すぎます。アメリカの取締役の大部分は60歳から72歳です。そのような年齢で取締役会に加わる傾向があります。
 同僚の中には取締役になりたいという人が大勢いますが、私は「若すぎるよ」と言っています。とても珍しい経歴を持っていない限り、40代で取締役になることは滅多にありません。あるいは、先ほども述べたように、シリコンバレーであれば別ですが。
 たぶん1つの明白な違いは、アメリカでは必ずしも社内からの昇進という形でCEOを任命しないという点です。外部からCEOを雇います。それは日本ではほとんど行われません。それで違いの大部分を説明できるように思います。社内からの昇進であれば、たぶんCEOは高齢になるでしょう。外部から雇うのであれば、若いCEOになることもあります。常に該当するわけではないという意味で、皆さんの説に異議を唱えたいですね。個々の業界でのCEOの平均年齢を比較すると面白いと思います。業界同士で比較すれば、もっと類似性が見つかるかもしれません。 

日本の社外取締役に対して期待する行動

●日本では来年新たな会社法が施行されることに伴い、大勢の社外取締役が誕生します。ただ、「社外取締役を1名選任すること」としかされておらず、法律的には役目も責任も掲げていないのです。コーポレートガバナンスの専門家として、日本の社外取締役に対してどのような行動を期待しますか。

Konigsburg氏: 正直なところ、それは興味深いですね。これについても外国でも同じですから。社外取締役だからといって、別の責任や異なる責任があるわけではありません。外部の人であっても責任は同じです。法のもとでは同じなのです。

●日本でも同じです。

Konigsburg氏: ですから、その会社の経営にあたっている他の優れた日本の取締役と同じように行動することが期待されます。もちろん、会議で各自の経験を活かすことや、新鮮な見方を提供することも期待されます。でも、同じように参加すべきではないでしょうか。法律上は大きな違いはないと思います。社外取締役だからといって、責任が重くなったり軽くなったりはしません。

●コーポレートガバナンスについて社外取締役の方が社内取締役よりもたくさん発言すべきではないかと思うのですが。

Konigsburg氏: 私はそうは思いません。と言うより、その専門知識があるなら、そうすることは可能ですが、そうしなければならないとは思いません。 

OECDにおける任務

●OECDにおける任務についてお聞かせください。

Konigsburg氏: コーポレートガバナンスに関するOECDビジネス諮問特別委員会の委員長を務めました。OECDの討議と意思決定にあたり、経済界の意見を提供するのです。今年、OECDはコーポレートガバナンスの原則を改定します。投資家、企業、日本の経団連のようなビジネス団体、他の国々の見解をまとめます。原則をどのように変更するかについての意見も提供します。OECDの強い影響力を考えると、とても面白い任務です。
 OECDの原則は、世界中のコーポレートガバナンスに関する規範の大部分の基礎となり、私が思うに、いずれ日本のコーポレートガバナンスの規範になるものも含まれるのではないかと考えています。 

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