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調査レポート
グローバリゼーションの再構築:ビジネス環境に変革をもたらす5つの地経学動向
「デロイト地経学動向指数」は、地経学トレンドを定量的に捉え、企業が取るべき対応について示唆を抽出する
国と国の対立や競争が激化する中、企業にとっては、地政学や経済環境の理解を深め、リスク軽減や強靭化を図ることが一層重要になっている。デロイトが新たに発表した本レポートでは、独自に開発した「デロイト地経学動向指数」が示す地経学トレンドを、4つの軸(貿易、金融統合、地政学的連携、社会的関係)で深掘りする。過去に国家間連携が如何にして発展してきたのかを俯瞰したうえで、今後どのような形で進化するのかを考察する。特に、欧州に焦点を置き、その新たな地政学環境でどのように機会を見出し、依存関係を持ち続けるのかを検証する。
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の余波と、世界各地で見られる紛争に象徴されるように、2020年代は世界経済と政治環境の大きな転換期の様相を呈している。地政学イベントが、世界各国で経済、サプライチェーン、貿易に大きな影響を及ぼし、グローバリゼーションが新たな形態をとりつつある。
政治と経済がますます密接に絡み合う中、企業では、これらの環境変化がもたらす課題を理解し、対応する能力を構築することが不可欠となる。デロイトが開発した「デロイト地経学動向指数」は、3,200万を超えるデータポイントに基づいて国家間連携の強弱を定量化しており、国家間や地域間の関係性の変化を経年で追うことを可能にしている。
5つの主な地経学的動向
① グローバル連携の後退
グローバリゼーションは、世界金融危機前に隆盛を極めた後、過去15年間で大きく変動してきた。2020年以降は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大と地政学的な緊張の高まりにより、国家間連携は総じて脆弱化の傾向を見せている。
② 国家間連携の「細分化」
国家間連携の強弱は、構成要素により異なる方向性を示している。地政学の観点からは、多国間の結束力が低下し分断が進む一方で、貿易、金融統合、社会的関係といったマクロ経済的な観点からは、国家間の関係は依然として強いと言える。
③ 地域統合の加速
グローバルで見ると国家間連携が脆弱化する中、地域内では連携が強化されているといという側面もある。この傾向は、アジア、欧州、北米等といった地域でみられる。特に欧州では、地政学動向を踏まえ新たな関係を構築したり、貿易関係を見直したりする動きが目立つ。
④ 西側諸国と環大西洋における連携強化
地域統合の強化に伴い、政治的同志国間の結びつきも深まる傾向にある。欧州と米国の環大西洋における関係は深化しており、将来的に新たな成長機会をもたらす可能性がある。
⑤ 欧州の世界的サプライチェーンへの依存
国家間連携の再編が進行しているとはいえ、化学、医薬品、技術といった重要な分野における欧州のサプライチェーンは、依然として原材料を域外国・地域に依存している。具体的には、欧州は、中間品の多くを戦略的に米国、中国、スイス等から輸入している。
『地経学的要素を積極的に戦略に組み込むことで、企業は新しい環境における競争で優位な位置に立つことができるだろう。』
~ Dr. Alexander Börsch(Deloitte Germany, Chief Economist & Head of Research)~
企業にとって、複雑化する地経学的環境を上手くナビゲートすることは重要な課題だ。混乱と変化が常態化する時代を勝ち抜くためには、企業は競争力を維持することに注力し、地経学的な強靭性を築くことが不可欠となるだろう。
※ 本稿は、Deloitte Germanyが発行した原著をデロイト トーマツ コンサルティング合同会社が翻訳したものである。和訳版と原著「Rewiring globalization: Five geoeconomic trends transforming the business environment」の原文(英語)に差異が発生した場合には、原文を優先する。