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「暦年課税による生前贈与の加算対象期間の見直し」による影響

ファミリーコンサルティングニュースレター 2024年8月

令和5年度の税制改正において、生前贈与により取得した財産が相続財産に加算される期間が7年となり、令和6年から適用されることになりました。本措置における影響について再確認します。

はじめに

令和5年度の税制改正において、生前贈与により取得した財産が相続財産に加算される期間が7年となり、令和6年から適用されることになりました。本措置における影響について再確認します。

「暦年課税による生前贈与の加算対象期間の見直し」による影響 [PDF, 813KB]

暦年課税による生前贈与の加算対象期間の見直しの概要

1.改正前の制度概要

相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、その3年以内の贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算し、その加算した価額を相続税の課税価格とみなすこととされていました。

また、相続税の課税価格に基づき計算された相続税額からは、その3年以内の贈与財産に課せられた贈与税額のうち相続税の課税価格に加算された贈与財産に対応する部分の税額が控除されていました(旧相法19)。

2.改正の内容

相続税の課税価格に加算される生前贈与の対象期間が、相続開始前7年以内とされました(相法19①)。この改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用され、令和6年1月1日から令和12年12月31日までの間に相続又は遺贈により財産を取得する者については、相続税の課税価格に加算される生前贈与の対象期間を以下の通りとする経過措置が設けられています(改正法附則19①~③)。

(1)令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に相続又は遺贈により財産を取得する者

相続開始前3年以内

(2)令和9年1月1日から令和12年12月31日までの間に相続又は遺贈により財産を取得する者

令和6年1月1日からその相続開始の日までの期間

また、今回の改正により延長された対象期間(相続開始前3年超7年以内)に贈与を受けた財産の価額の合計額のうち、100万円までは相続税の課税価格に加算されないこととなりました。

(改正内容のサマリー)

相続又は遺贈により財産を取得した日

相続税の課税価格に加算される生前贈与の対象期間

改正により延長された対象期間(生前贈与財産の合計額から最大100万円控除)

令和6年1月1日から
令和8年12月31日まで

相続開始前3年間

令和9年1月1日から
令和12年12月31日まで

令和6年1月1日から
その相続開始の日までの期間

令和6年1月1日から
相続開始から3年前の応当日の前日までの期間

令和13年1月1日以降

相続開始前7年間

相続開始前3年超7年以内の期間

 

影響及び留意点

令和6年以降に行った贈与に係る贈与者を被相続人として相続が開始した場合は、本改正の影響を受けることになります。

なお、前述の通り、相続税額の課税価格の加算対象となる贈与財産のうちに、改正により延長された対象期間内に贈与を受けた財産がある場合には、加算対象となる贈与財産の価額の合計額から最大100万円が控除されますが、当該改正により延長された対象期間内に贈与を受けた財産の価額の合計額が100万円以下である場合には、相続税の課税価格に加算される金額はゼロとなります。この場合、控除しきれない金額があったとしても、相続開始前3年以内に贈与を受けた財産や、他の相続人等が生前贈与を受けた財産の価額からは控除されない点に留意が必要です(相基通19-1)。

また、改正により延長された対象期間内に贈与を受けた財産の価額の合計額が100万円以下であっても、当該贈与を受けた年中に他の贈与者からの贈与を受ける等の理由により贈与税を納税している場合には、相続税額の計算上、贈与税額控除の適用可能性がある点にも留意が必要です。( 相基通19-6 なお書)。

まとめ

計画的に暦年贈与を行っているような企業オーナーファミリーは、本改正の影響を受けることが想定されます。また、令和5年度税制改正により相続時精算課税制度についても改正がされているため、必要に応じて課税方法の選択の検討が必要と考えられます。

※本記事は、掲載日時点で有効な日本国あるいは当該国の税法令等に基づくものです。掲載日以降に法令等が変更される可能性がありますが、これに対応して本記事が更新されるものではない点につきご留意ください。

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