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資産税等に関する令和7年度税制改正について

ファミリーコンサルティングニュースレター 2025年1月

令和6年12月20日、「令和7年度税制改正大綱」が公表されました。今回は、その中から資産税・所得税・法人税のうち重要性が高い項目について解説を行います。

はじめに

令和6年12月20日、「令和7年度税制改正大綱」が公表されました。今回は、その中から資産税・所得税・法人税のうち重要性が高い下記項目について解説を行います。

【資産税】

  • 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予の特例制度における役員就任要件の見直し
  • 個人の事業用資産に係る贈与税の納税猶予制度における事業従事要件の見直し
  • 相続税の物納制度における物納許可限度額等の計算方法の見直し
  • 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の期限延長
  • 相続に係る所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置の期限延長

【所得税】

  • 基礎控除等及び給与所得控除の最低保証額の引上げ
  • エンジェル税制の見直し
  • 外国子会社合算税制等の見直し

【法人税】

  • 防衛特別法人税(仮称)の創設
  • 中小企業者等の法人税の軽減税率の特例
資産税等に関する令和7年度税制改正について [PDF, 1.01MB]

資産税

1. 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予の特例制度における役員就任要件の見直し

(1) 制度の概要

後継者が非上場株式を先代経営者等から贈与により取得した際、一定の要件を満たすことで、当該非上場株式に係る贈与税の納税が最大全額猶予される制度です。

(2) 税制改正の概要

非上場株式等に係る贈与税の納税猶予の特例制度における役員就任要件について、次のとおり見直しが行われます。

上記の改正は、令和7年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用されます。

 

現行

改正案

役員就任要件

贈与の日まで引き続き
3年以上役員等であること

贈与の直前において役員等であること

(参考:「令和7年度(2025年度)経済産業関係 税制改正について」 経済産業省ウェブサイトPDF12ページ)

POINT:

現行の場合、当該納税猶予の特例制度を適用するためには、令和6年12月31日までに後継者が特例認定贈与承継会社の役員等に就任する必要があったが、改正案により柔軟な事業承継が期待されます。

当該納税猶予の特例制度の適用期限について、令和4年度及び令和6年度と同様に、適用期限(令和9年12月31日まで)の延長は行わない旨が大綱に記載されています。また、令和8年3月31日までに特例承継計画を都道府県知事に提出する必要があるため、適用を考えている納税者は期限に留意が必要です。

 

2. 個人の事業用資産に係る贈与税の納税猶予制度における事業従事要件の見直し

(1) 制度の概要

後継者が一定の事業用資産を先代経営者等から贈与により取得した際、一定の要件を満たすことで、当該事業用資産に係る贈与税の納税が最大全額猶予されます。

(2) 税制改正の概要

個人の事業用資産に係る贈与税の納税猶予制度における事業従事要件について、次のとおり見直しが行われます。

上記の改正は、令和7年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用されます。

 

現行

改正案

事業従事要件

贈与の日まで引き続き3年以上従事

贈与の直前において従事

 

POINT:

当該納税猶予制度は適用期限が令和10年12月31日までであり、かつ、令和8年3月31日までに個人事業承継計画を都道府県知事に提出する必要があるため、適用を考えている納税者は期限に留意が必要です。

 

3. 相続税の物納制度における物納許可限度額等の計算方法の見直し

(1) 制度の概要

相続税について、金銭で納付することが原則ですが、延納によっても金銭納付を困難とする事由がある場合には、その納付を困難とする金額(物納許可限度額)を限度として、一定の相続財産による納付(物納)が認められています。

(2) 税制改正の概要

物納許可限度額の計算の基礎となる延納年数について、次のとおり見直しが行われます。

 

現行

改正案

物納許可限度額等の
計算の基礎となる
延納年数の上限

最長延納年数(最長20年)

相続税の納期限等における
申請者の平均余命年数

 

(参考)物納許可限度額の計算式の概要は次の通りです。

POINT:

申請者の平均余命年数の計算方法、延納年数を計算する上での現行の最長20年との比較有無等の取り扱いは、税制改正大綱に明記されておらず定かではないため、その内容を注視する必要があります。

 

4. 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の期限延長

父母・祖父母などの直系尊属からの贈与により、結婚・子育てに充てるための資金を信託受益権等として取得した場合に1,000万円までは贈与税が非課税となる当該制度について、適用期限が令和9年3月31日まで2年延長されます。

 

5. 相続に係る所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置の期限延長

次のいずれかに該当する場合の土地の登記に係る登録免許税が免税となる当該制度について、適用期限が令和9年3月31日まで2年延長されます。

  • 相続(相続人に対する遺贈を含む)により土地を取得した個人が相続登記をしないで死亡した場合の当該死亡した個人を当該土地の所有権の登記名義人とするための相続による所有権の移転登記をする場合
  • 不動産の価額が100万円以下の土地について、相続人が所有権の保存登記又は相続による所有権の移転登記をする場合

所得税

6. 基礎控除等及び給与所得控除の最低保証額の引上げ

物価が上昇傾向にあり、基礎控除が定額であることなどにより実質的な税負担が増加するという課題に対処するため、基礎控除等が次のとおり引き上げられます。

(1) 基礎控除

合計所得金額が2,350万円以下の場合に基礎控除額が48万円から58万円に引き上げられます。

上記の改正は、令和7年分の所得税から適用され、給与及び公的年金等の源泉徴収については令和8年1月1日以後支払分から適用されます。

合計所得金額

 

控除額

現行

改正案

2,350万円以下

48万円

58万円

2,350万円超2,400万円以下

48万円

48万円

2,400万円超2,450万円以下

32万円

32万円

2,450万円超2,500万円以下

16万円

16万円

2,500万円超

0円

0円



(2) 扶養親族及び同一生計配偶者の合計所得金額の要件

基礎控除の引上げに併せて次のとおり、扶養親族の合計所得金額の要件等が引き上げられます。

 

現行

改正案

扶養親族及び同一生計配偶者の
合計所得金額の要件

48万円以下

58万円以下

ひとり親控除の対象となる子の
総所得金額等の合計額の要件

48万円以下

58万円以下

勤労学生の合計所得金額の要件

75万円以下

85万円以下

 

(3) 給与所得控除の最低保障額

給与所得控除の最低保障額が次のとおり引き上げられます。

上記は令和7年分の所得税から適用され、源泉徴収については令和8年1月1日以後支払分から適用されます。

 

現行

改正案

給与所得控除の最低保障額

55万円

65万円

 

7. エンジェル税制の見直し

(1) 制度の概要

スタートアップに対する投資の促進を図る観点から、スタートアップへ投資を行った個人投資家について、投資時点と売却時点において税制上の優遇措置を受けることができます。

(2) 税制改正の概要
  • 譲渡益発生年に遡る繰戻し還付の制度の創設
    • エンジェル税制の対象となる特定中小会社の株式を払込みにより取得した場合には、その取得に要した額をその年の一般株式等の譲渡所得等及び上場株式等の譲渡所得等の額の合計額から控除(適用額)することができますが、取得に要した額で控除しきれない金額(特定株式控除未済額)がある場合に、その年の前年分の所得税額のうちその特定株式控除未済額に対応する部分の金額を還付請求(繰戻し還付)することができることとされます。
    • この場合に、その特定中小会社の株式の取得価額は、適用額と特定株式控除未済額の合計額をその取得に要した額から控除した額とされ、譲渡所得の課税が繰り延べられます。
  • 株式が特定中小会社のうち特例株式会社の特定株式(特例控除対象特定株式*)である場合の措置
    • その特例控除対象特定株式の取得価額は、適用額と控除未済額との合計額(20億円を超える部分の金額)をその取得に要した額から控除した額とされ、20億円を限度として譲渡益が非課税とされます。
      * 特例控除対象特定株式とは、設立の日以後5年未満の株式会社であるなど所定の要件を満たす株式
    • この特例の適用を受けた居住者等が、その取得した特例控除対象特定株式を取得した年の翌年中に譲渡した場合には、20億円までの譲渡益非課税の措置を適用しないこととされる(取得価額は、適用額と控除未済額との合計額を控除した額となる)ため留意が必要です。
  • 特定新規中小企業者が、設立の際に発行した株式の取得に関するエンジェル税制の適用についても、同様の措置が講じられます。
  • 上記の改正は、令和8年1月1日以降に取得したものについて適用されます。

POINT:

これまでは株式売却年内に再投資する必要があったため、売却時期によっては適用が難しい場合もありましたが、翌年内まで再投資期間が延びることで、活用の機会が拡大することが見込まれます。

 

8. 外国子会社合算税制等の見直し

(1) 制度の概要

軽課税国に海外の資産管理会社(ペーパーカンパニー等)を有している日本居住者である個人について、外国子会社合算税制が適用される場合、その資産管理会社の現地所得が、日本居住者である個人の所得に合算される可能性があります。合算所得が生じる場合、日本居住者である個人は、当該合算所得を雑所得(最高税率:約55%)として所得税申告を行う必要があります。

(2) 税制改正の概要
  • 合算課税タイミングの見直し

    居住者が、その外国関係会社につき外国子会社合算税制の適用を受ける場合における、外国関係会社の各事業年度に係る課税対象金額等に相当する金額は、その居住者の雑所得に係る収入金額とみなして、その外国関係会社の各事業年度終了の日の翌日から4月(現行:2月)を経過する日の属する年分のその居住者の雑所得の計算上、総収入金額に算入することとされます。

    例えば、その居住者に係る外国関係会社(S社)が9月決算である場合の取扱いは、次のとおりです。

現行

改正案

S社のX1年9月期に係る課税対象金額等に相当する金額は、その居住者のX1年の雑所得の金額の計算上、総収入金額額に算入する。

S社のX1年9月期に係る課税対象金額等に相当する金額は、その居住者のX2年の雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。

  • その他書類添付要検討の見直し、法人税等についても同様の見直しが行われます。
  • 上記改正について、所得税は明らかではありませんが、法人税については、内国法人の令和7年4月1日以後に開始する事業年度に係る外国関係会社の課税対象金額等(その外国関係会社の令和7年2月1日以後に終了する事業年度に係るものに限られる。)について適用され、一定の経過措置も講じられます。

POINT:

合算課税のタイミングについて、現行では外国関係会社の事業年度終了日翌日から2月を経過する日を含む居住者の各年度の所得税申告に反映させることとされていますが、作業時間を十分に確保できるよう、改正案では4月を経過する日を含む年分の申告に反映させることとされています。

法人税

9. 防衛特別法人税(仮称)の創設

法人税額に対し、税率4%の新たな付加税として、防衛特別法人税(仮称)が課され、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。中小法人に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から500万円を控除されます。

10. 中小企業者等の法人税の軽減税率の特例

中小企業者等の法人税の軽減税率の特例について、次の見直しが行われた上、その適用期限が2年延長されます。

 

現行

改正案

軽減税率の内容

所得800万円以下の部分について、税率19%。さらに、時限的に税率15%

所得の金額が年10億円を超える事業年度について、所得の金額のうち年800万円以下の金額に適用される税率が17 %(現行:15%)に引き上げられる

適用対象法人

当該各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下であるもの若しくは資本若しくは出資を有しないもの(適用除外事業者、大法人による完全支配関係がある普通法人、大通算法人等を除く)等

適用対象法人の範囲から通算法人が除外される

適用期限

令和7年3月31日までの間に開始する各事業年度

2年延長

※本記事は、掲載日時点で有効な日本国あるいは当該国の税法令等に基づくものです。掲載日以降に法令等が変更される可能性がありますが、これに対応して本記事が更新されるものではない点につきご留意ください。

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