調査レポート

見直される屋内のコネクティビティと問われる5Gの真価

デロイト『Digital Consumer Trends 2022』日本版

COVID-19以降は外出等の行動が制限され、消費者は自宅で映像コンテンツを楽しむことも増えた。このような巣ごもりの行動は、屋内での主に固定回線のインターネット利用量に表れており、COVID-19の前の2倍ほどのトラフィック量1となっている。また、消費者の5G利用も堅調に伸びている。5G対応端末の普及と5G通信エリアの広がりにより今年も一段と進んだ。しかし、消費者の5Gへの関心は昨年よりも弱まっている。本稿では消費者の行動の変化を踏まえて屋内でのコネクティビティや5Gに今何が求められるかを紐解く。

自宅での映像コンテンツ消費が伸長し、屋内のコネクティビティが見直されている

行動制限のなか、この2年は大企業を中心にリモートワークを推し進めた。また、消費者においては「巣ごもり需要」と呼ばれるように自宅で映像コンテンツを楽しむようになった。「デバイスとデジタルコンテンツ消費体験の変容」の章でも触れた通り、映画やテレビ番組の視聴や見逃し配信サービスの利用においては、2021年まではスマートフォンでの視聴から、2022年はテレビデバイスによる視聴に変化していることに注目したい。デジタルコンテンツは動画配信サービスを通じて利用が堅調に伸びている。特に25歳以降の年代の回答からは、自宅にいる時間はスマートフォンでなく、ゆったりとした居心地のテレビデバイスでデジタルコンテンツを視聴したい嗜好が表れていると見てとれる。(図1)

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屋内での固定系ブロードバンドサービスの総トラフィック量はCOVID-19前と比べて倍増し(図2)、モバイル通信の総トラヒックが約1.3倍伸びており、総トラヒックの伸びからも自宅などの屋内でのデジタルコンテンツ利用が進んでいることが見受けられる2

今後COVID-19の収束もしくは共存とともに、外出機会がさらに増え、屋外でのデジタルコンテンツの利用機会も増えうるが、長期化している状況では、屋内でのデジタルコンテンツ利用が定着し、COVID-19の収束後に消費者動向が元に戻る(または更に変容する)にせよ、時間をかけて回復・変容していくものと考えられる。

 

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通信環境が整備され、日本の消費者の5G利用がより一段と進んでいる

日本では2020年3月に消費者向けの5Gサービスを開始し2年以上が経過した。今年の調査では「5G端末を所有している」消費者は30%に達していることが分かった。「現在は5G端末を持っていないが、次は5G対応端末が欲しい」消費者は20%いる一方で、「5G対応端末を持っておらず、次の端末が5Gに対応しているかどうかは気にしない」消費者は40%もおり、5Gサービスに対する意欲が高いとは言い切れない。(図3)そのため、5G利用の伸長は、最新のスマートフォンへの買い替えに伴ったものとも考えられる。

なお、現在の5Gの利用エリアは人口カバー率が93.2%3となっており、総務省のデジタル田園都市国家インフラ整備計画では2023年度末に95%を目標としている。助成金などの活用も見込まれており、5Gエリア化は継続して進むものと考えられる。
 

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問われる5Gの真価

日本の消費者の5割近くは、有料・無料を問わず5Gで提供されるサービスを「使ってみたい」「使っている」と回答しており、関心はある。回答者の42%は「追加の料金を払ってまで利用したい」と思えるほどまでには至っていない。有料・無料を問わず「使いたいと思わない」消費者は、昨年度の調査結果よりも約10ポイント増えていることにも注目したい。5Gで提供されるサービスへの関心は停滞しているように見られる。(図4、図5)

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これまで日本では NTTドコモのiモードが登場して以降、2000年代に3Gが展開されスマートフォンが出現し、携帯端末でインターネット接続することを可能とした。さらに、2000年代後半に4Gが展開され、動画や音楽を携帯端末で楽しめるようになる大きな変化をもたらした。他方で、4Gから5Gへの移行によるメリットや5Gならではのコンテンツに対する期待が感じられない状況であり(図5)、本質的な5Gの普及に向けてはこれまでのように一筋縄ではいかない様相となっている。まさに5Gの真価が問われ始めたといえる。

先述の通り屋内利用が進む中で、5Gで提供するサービスの需要を一層喚起するには、通信事業者がホームルータ向けの5G通信サービス(FWA:Fixed Wireless Access)などを強化することもオプションになりうる。消費者の需要の変化が見通しづらい現況では消費者動向に注視し、屋外と屋内の5Gビジネスの投資をコントロールしていくことが今後求められる。

脚注
  1. 総務省,「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果(2022年5月分)」, 2022/8/2
  2. Ibid.
    総務省,「我が国の移動通信トラヒックの現状」, 2022/12/9アクセス
  3. 総務省 総合通信基盤局,「5Gの整備状況(令和3年度末)の公表」,2022/10/21

執筆者
 

相楽 健太/Kenta Sagara
デロイト トーマツ コンサルティング マネジャー

日系通信キャリアを経て現職。モバイルネットワークインフラにおける新技術導入などの経験を有する。
近年は、通信業界・テクノロジー業界における新規事業開発や新規事業会社設立の支援に従事。

 

 

サマラコン ジャヤトラ/Jayathura Samarakoon
デロイト トーマツ コンサルティング スペシャリストリード

大手通信会社のコアネットワーク部門を経て現職。主に無線通信ネットワークで3G、4G、5Gの設計から保守までの経験を有する。通信業界のソフトウェア開発におけるDevOps・Agile戦略のリード。

 

 

中村 尭史/Takashi Nakamura
デロイト トーマツ コンサルティング コンサルタント

日系大手システムインテグレーターにて、大手通信事業者向けセールス職を経て現職。通信業界を中心として要件定義フェーズよりEnd to Endでのシステム導入支援などコンサルティングに従事。

 

 

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