調査レポート

スマートウォッチ/ヘルスケアバンドにより高まるデジタル健康意識

デロイト『Digital Consumer Trends 2022』日本版

若年層ほど、デバイスに費やす時間が長いと感じている

国内のスマートフォンの保有率は前年までの伸びが鈍化し飽和に近づいているようだ(88%)。比較的新しいデバイスのスマートウォッチ/ヘルスケアバンド(15%)や音声アシスタントスピーカー(8%)は逓増している。UKやベルギー、オランダやドイツのスマートウォッチの保有率は24%、音声アシスタントスピーカーの保有率は10%を超え、日本よりも早く成長している。スマートウォッチの決済機能や音声アシスタントスピーカーの対話機能はスマートフォンにも具備されているが、消費者が利便性でデバイスを選んでいると考えられる。また、スマートウォッチで自身の健康状態を見る体験や、音声アシスタントスピーカーで家電を手放しに操作する体験が、これらの多様なデバイスを普及へと導いていると考えられる。
 

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*1 スマートウォッチ:Apple Watch、Samsung Galaxy Watch, Huawei Watchなど
*2 ヘルスケアバンド:Fitbit、Garmin、ドコモ・ヘルスケア ムーヴバンドなど
*3 据え置き型ゲーム機:PS5/PS4、X-Box Series X/Series S/360 Nintendo Switchなど、 Nintendo Switch Lite は除く
*4 音声アシスタント搭載スピーカー:Amazon Echo、Google Home、Google Nestスマートスピーカーなど

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 *5:例:PlayStation VR、HTC ViVe、Meta Oculus Questなど、Google Cardboardなどのユーザー自身が厚紙や段ボールを使って工作する方式は除く

 

今回の調査では、デバイスとの付き合い方を見直すきっかけとなるような傾向が見られた。国内の消費者の33%は「デバイスに費やす時間を減らしたい」と考えており、また消費者の42%は「デバイスの使用が理由で予定よりも夜更かしをする傾向がある」と回答している。特に18‐24歳の62%は「夜更かし」すると回答しており、国内平均と比べ20ポイント高い。デジタルの「使い過ぎ」の感覚は若年層で高い傾向にあり、デバイスの利用時間を過多に感じ、改善したいと考えているのだろう。

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身体と健康指標モニタリングの広がり

スマートフォン等のデバイス所有者の46%、特にスマートウォッチ/ヘルスケアバンド所有者の90%は何らかの健康指標をモニタリングしている。

2021年の調査結果に続き、最も多い計測項目は、歩数(スマートウォッチ/ヘルスケアバンド所有者の71%, 以下同)と心拍数(54%)である。睡眠パターン(44%)や血中酸素濃度(32%)はスマートウォッチ/ヘルスケアバンドならではの測定機能であり、スマートウォッチ/ヘルスケアバンド保有者に顕著である。摂取カロリー/食事といった項目はスマートフォンでも記録可能だが、スマートウォッチ/ヘルスケアバンド保有者の方がよりそれらの指標をモニタリングしている。2022年から「エクササイズの種類や量(強度×時間など)」(28%)と「1日あたり水分摂取量」(12%)を調査に加えた。エクササイズや水分量といったアクティビティは、より手軽に記録できるスマートウォッチ/ヘルスケアバンドだからこそ、所有者と非所有者に顕著な差が出た。

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バイタルデータを医師に提供することを、ウェアラブルデバイス保有者の半数近くは許容する

2021年の本調査では、ウェアラブルデバイスから得られる健康関連データを医療で活用できるかどうかを考察した。こうしたデータが医療で活用される状況には至っていないが、健康管理を目的としたモニタリングや一部のバイタルデータを活用する外来診療を始める医療機関も出てきつつある。

2022年は健康関連データに関するデバイス保有者の意識を調査した。回答者の54%はウェアラブルデバイスで収集した自身の健康関連データを医師に提供してよいとしている。また、医師に提供してよいと回答する割合が若年層になるにつれて高くなることが興味深く、若年層ほどプライベートな健康関連データを提供し、健康でいることの大切さに関心が高いであろうこと、そしてそもそもデータを他者と共有することに関して、若年層の方が抵抗が少ないという傾向の表れと考えることもできる。

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デバイスに費やす時間の増加と、ウェアラブル端末による健康指標モニタリングの意識拡大は今後どのような消費行動へと変化するのだろうか

消費者のデバイス所有率は日本では依然として増加傾向にあるなか、諸外国では減少するデバイスもあり飽和状態になりつつある。デバイスの種類はここで挙げたデバイス以外にもスマートリング1やスマートグラス2といった新たなウェアラブル端末が登場している。消費者はそれぞれのデバイスを利用用途や体験によって取捨選択していくことだろう。

今年の調査で若年層ほどデバイスとの向き合い方に課題意識を感じていると分かったことは、デジタルコンテンツやサービスが普及して過多となった表れであろう。デバイスを用いる時間を抑えたい消費者は、次にどのような行動をするのだろうか。デジタルデトックスという言葉も知られるようになり、疲れを感じてデジタルデバイスから離れたいという感情は以前よりあった。近年ストレスの緩和や睡眠の質の向上を助ける食料品やサウナが注目されていることもまた、心身のリフレッシュと維持を目的としたデジタル消費との距離感を見直す行動ではないだろうか。

昨年のDigital Consumer Trends2021でも述べた通り、消費者の健康意識が高まっている。スマートウォッチ/ヘルスケアバンドで心身や健康のデータが随時可視化されることに消費者は有用性を感じているのだろう3。スマートウォッチ/ヘルスケアバンドが普及するにつれて、消費者は健康意識にさらに敏感になっていくと考えられる。国内でも心疾患の再発をウェアラブルデバイスで早期に発見する実証実験が開始されている4。 ヘルスケア領域におけるデジタルデータやウェアラブルデバイスの活用は以前よりビジネス機会として捉えられている。デジタルやデバイスの使い過ぎから距離感を保ちたいニーズと、可視化された健康状態と興味の高まりにより、どのような消費に向かうか今後も注視していきたい。

脚注

1.Oura RingやEVERING等

2.Google glass等

3.デロイト『Digital Consumer Trends 2021』日本版 スマートフォンとウェアラブルから始まるデジタルヘルス

4.スマートウオッチは健康守るデバイス 医療現場の試み: 日本経済新聞 (nikkei.com)

執筆者
 

内野 幸治/Koji Uchino
デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャー

総合コンサルティングファームを経て現職。メディア・エンターテイメント、エージェンシー、テレコミュニケーション業界向けに事業戦略策定、デジタルトランスフォーメーション、BPR、新規事業企画から実行の支援まで幅広く手がける。

 

大池 徹/Toru Oike
デロイト トーマツ コンサルティング コンサルタント

新聞社での営業・企画職を経て現職。通信・広告代理店・半導体業界を中心に、ベンチマーク動向調査やシステム構想の策定といった調査~構想フェーズから、システムの導入推進支援、マーケティングコンテンツ作成支援の実行フェーズまで、幅広い領域のコンサルティングに従事。

 

佐藤 里奈/Rina Sato
デロイト トーマツ コンサルティング コンサルタント

半導体メーカーでの企画・マーケティング職・自然言語処理領域の修士課程を経て現職。メディア・ハイテク業界・素材業界を中心に海外市場動向調査・アライアンス戦略策定・海外拠点へのシステム導入支援等、多岐にわたる領域のコンサルティングに従事。

 

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