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AIの歴史②:第二次AIブーム(1980年代~1990年代)

エキスパートシステムの登場によるAIブームの再燃

近年AI(人工知能)という分野に非常に多くの注目が集まっており、私たちの日常でもよく耳にしますが、実はAIの歴史は長く、その進化は波状的でした。約70年前にAIという概念が誕生して以来、幾度かのAIブーム、そして停滞期を乗り越え、現在は第三次AIブームを迎えている段階です。各時代にそれぞれ特徴がありますので、今回は、1980年代から1990年代までの第二次AIブームについて詳しく説明します。再びブームとなった要因は何か、そしてブームの終焉はなぜ起こったのか。第二次AIブームをひも解いていきます。

1. 第二次AIブームとエキスパートシステム

1970年代に第一次AIブームが終了し、数年の間、AI分野は「冬の時代」を迎えていました。ブーム終焉の要因は、人々がAIに対して過剰な期待を抱いていたにもかかわらず、当時のAIはいわゆる「トイ・プロブレム」と呼ばれる簡単なパズルや迷路のような問題しか解くことができず、その実用性に問題があったことでした。しかし、冬の時代にもかかわらず、一部の研究者たちが細々と研究を進めた結果、AI分野は再び世に注目される存在となります。1980年代初頭に、AIにより専門的な知識や推論能力を学習させることのできるエキスパートシステムという技術が開発されました。人間の持つ専門分野の知識をAIに学習させ、AIが特定の分野の専門家のようにふるまうことができるようになり、特定の専門領域での高度な問題解決や意思決定を行うことが可能になりました。医療分野や研究開発分野などでAIの活用が検討され始め、人々のAIに対する期待感と共に、第二次AIブームが巻き起こりました。

2. 日本でのAI研究:第五世代コンピュータ

第二次AIブームは日本にも到来します。1980年代から1990年代初頭にかけて、第五世代コンピュータ計画とよばれる国家プロジェクトが、通商産業省(現在の経済産業省)を中心に推進されました。第五世代コンピュータ計画では、複数のプロセッサが同時にタスクを実行する並列処理能力を獲得し、高速な計算や複雑な問題の効率的な解決を可能にすることを目指しました。その予算は500億円とも言われており、研究の成果に対して国内外から大きな注目を集めることとなりました。

3. ブームの終焉と冬の時代への再突入

エキスパートシステムの登場により、各国でAI分野の研究が盛んに行われるようになったもの、そのブームは長続きしませんでした。世間の注目を浴びていたエキスパートシステムには大きな問題がありました。それは、エキスパートシステムに学習させる専門知識の量が膨大になり、当時のコンピュータの性能ではそれらすべてを処理することができなかったということです。結果的に、エキスパートシステムでは専門家の知識を限定的に模倣することとなり、不完全な情報や複雑な問題に対処できない場合が多くありました。さらには、学習させる専門知識も人間が一つずつ記述する必要があり、その労力の大変さや精度の低下も相まって、AI研究は思うように進まず、再び人々の期待を裏切る結果となりました。日本で行われていた第五世代コンピュータ計画も成果が出ず打ち切りとなり、AI分野は再び冬の時代へと突入することとなります。

4. おわりに

ここまで、第二次AIブームについて説明してきました。AI分野では、新たな技術の発展と共に、新たな課題が見つかり、再び冬の時代を迎えることとなりました。約15年後、ニューラルネットワークやビッグデータなどの登場により、再び世間の注目を集めることとなります。

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