コンタクトセンターにおける生成AI活用がもたらす顧客体験高度化 ブックマークが追加されました
ChatGPTに代表される生成AIは文章や画像、プログラミングコード等のコンテンツ生成に特化したAIであり、従来のAIと比較して自然なアウトプットを実現します。現在、カスタマーサポートの自動化、マーケティングコンテンツの生成、データ分析などの分野で、業務効率を向上させるためのツールとして活用されています。特に、人的コストの負担が大きく、かつ顧客接点の要であるコンタクトセンターにおける導入に注目が集まっています。
生成AIを導入したコンタクトセンターで既にコスト削減、顧客体験(CX)と従業員体験(EX)向上の成果が出ています。
例えば、グローバルに事業展開する米国通信会社のコンタクトセンターでは、AWSで稼働しているバーチャルエージェントがCRMシステムと連携し、問合せに対して自然な言語でパーソナライズな回答を行い、業務の90%を自動化、総コール量の35%を削減し、また年間1億5,000万ドルのコスト削減を実現しています*1。
そして、国内のコンタクトセンターでは、音声認識機能と生成 AI を組み合わせたシステムを実装し、顧客問合せに対応中のオペレータへリアルタイムに、よりパーソナライズされた的確な回答支援を行うことでCX向上を実現しています。また、従来すべてオペレータが手入力していた「問合せ内容の入力業務」を生成AIを活用し自動化することで、全体の34%の後処理業務を削減する等、EX向上につながる成果を創出しています。
一方、生成AIは大規模言語モデル(LLM)の確率分布を用いて文書生成を行っているため、内容が相違している可能性がありますが、出力された結果の信頼度をチェックする機能(正確性・妥当性判断)などを活用することでリスクを最小限に抑えることが可能です。
例えば、ベクスト株式会社のソリューション*2では、独自のテキストマイニング技術と分析ノウハウを応用することで、会話本文に対する要約結果の「信頼度」を高・中・低で判定・信頼度が高い要約結果に絞り込むことが出来ます。
生成AIはこれまでと比べ、大幅に少ないリソースでCX・EXを向上することが可能な革新的技術です。コンタクトセンターが提供する顧客体験のうち、生成AIを活用することでエフォートレスな体験やパーソナライズされた体験を効率的・効果的に提供することにつなげられます。その結果、ヒトは熱量高く顧客に寄り添い、エモーショナルな体験を提供することにより注力することができるようになるのです。このとおり生成AIは高度化する顧客の期待値に応えられるコンタクトセンター実現につながる技術であり、優先的な投資先と位置付けた上で、自社業務に最適なユースケースを検討することから始めてみてはいかがでしょうか。
*1 2023 Global Contact Center Survey Results& Trends and AI In the Contact Center
*2 VextResume+ powered by ChatGPT(β)
デロイト トーマツ コンサルティング シニアコンサルタント
佐野 直子