第4回:欧州サイバーレジリエンス法案(Cyber Resilience Act)のセキュリティ要件 ブックマークが追加されました
本ブログでは、全6回構成にて、2022年9月に発表された「欧州サイバーレジリエンス法案(以下、CRAという)」の解説を行います。
第4回では、CRAのポイント③「セキュリティ要件への適合の義務化」について説明します。
CRAでは、対象製品に関係する様々なプレイヤーがCRAで規定された義務を遵守する必要があります。
その中でも、特に製造業者に対しては、セキュリティ関連を含む厳格な義務への対応が求められます。また、義務を満たせない場合には、EU市場からの締出しや罰則等のリスクが想定されるということもポイントです。
CRAのAnnexには、「セキュリティ特性要件」及び「脆弱性処理要件」が具体的に規定されています。ポイントは、CRAへの適合性を証明するためには、製品ライフサイクル全体でのセキュリティ対応が必要であり、SBOM作成や更新プログラムの提供等も要求されているということです。
・製品を元の状態にリセット可能であるなどの安全な構成
・適切な制御メカニズムによる、不正アクセスからの保護
・最先端の暗号化などによる、データの機密性の保護
・データ・プログラム等の完全性に係る許可されていない操作からの保護
・必要なデータに限定した処理の実施(データの最⼩化)
・DoS攻撃からの回復・緩和など、重要な機能の可⽤性観点での保護
・他の機器やネットワークからの⾃⾝(製品)への影響の最⼩化
・外部インターフェース等の攻撃対象領域を制限した設計・開発・製造
・インシデントの影響を軽減する設計・開発・製造
・アクセス等の活動の記録・監視及びセキュリティ情報の提供
・自動更新などのセキュリティアップデートによる脆弱性対応の実施
第5回では、脆弱性発見時やインシデント識別時における「当局への報告の義務化」に係るポイント等を解説していきます。
北町 任/Takashi Kitamachi
デロイト トーマツ サイバー合同会社
デロイト トーマツ サイバー合同会社所属。会計系の大手コンサルティング会社を経て現職。製造業を中心に、取引先を含めたサプライチェーン全体のサイバーセキュリティー戦略や製品セキュリティー戦略の策定などに従事。
※所属などの情報は執筆当時のものです。
大手インテグレーター、戦略系コンサルファームを経て現職。企業に対するサイバーセキュリティ戦略立案、リスク分析・対応方針立案等の業務を歴任。CISO等の経営アジェンダを広くカバーする一方、技術対策までサイバー全体に一貫整合した経験を有する。