Posted: 13 Nov. 2019 3 min. read

ラグビーに続け!日本ハンドボール界の挑戦―競技者に注目するマイナースポーツならではの改革の視点―

令和元年の一大スポーツニュースになるであろうラグビーワールドカップ。大会直前に急速に盛り上がり、日本代表が勝利する度に加熱していった。多くの人が熱狂し、「にわかファン」という言葉がポジティブに使われたのも印象的だった。この盛り上がりが一過性のもので終わらないことを「にわかファン」の端くれとして楽しみにしている。

ボールを持つ選手の画像

ところで、ラグビーと同じく日本初開催となる世界大会が、今月11月30日に熊本県で行われることをご存じだろうか。ハンドボール女子の世界選手権がそれである(大会特設サイト:https://japanhandball2019.com/)。地域予選を勝ち抜いた世界24か国の代表が熊本県内の4つの会場で世界一を争う。来年44年ぶりにオリンピックに出場する日本代表女子チーム(通称おりひめJAPAN)は昨年開催された第17回女子アジア選手権で準優勝をするなど、過去最強の代表チームとしてファンの期待を背負って自国で世界の強豪と対戦する。

競技力強化のために、実績のある外国人監督を招聘し、男子も含めて海外遠征を増やすなど積極的な活動を行ってきた日本のハンドボールだが、もう一つ改革の柱を立てている。それが、公益財団法人日本ハンドボール協会(JHA: Japan Handball Association)に設置された戦略企画委員会だ。

JHAは2019年度の基本活動方針の中で「『予算を使う』から『予算を生む』へ」と標榜し、ハンドボールのビジネス化を明言した。兼業、副業で4人の戦略プロデューサーと契約し、それぞれの専門性を武器に、ヨーロッパでは一試合2万人がアリーナで熱狂するハンドボールの持つポテンシャルを開花させようと改革を行っている。

その改革の中でも他の競技にはない特徴的なのがハンドボール競技者に注目した取り組みだ。競技生活を充実させ競技者であり続けることに対する満足度を高めるためのサービスの改革を行う。

JHAは競技者向けに様々なサービスを検討しているが、その中でも代表的なのは、主に学生の競技者に対して、彼らの競技者としての記録を蓄積し、マイページで公開していこうというものである。競技者は出場した試合での記録や動画、写真などにいつでもアクセスできるようになる。例えば記録は、シュート位置や距離、キーパーであればポジション別のセーブ率など、国際試合や海外のプロ選手並みの細かさで提供されるようになる(図1)。

 競技者向けアプリ開発中のデモ画面
図1. 競技者向けアプリ開発中のデモ画面

これらは競技者としての満足度や上達したいという意識の向上につながり、競技生活を長く続けたいという動機にもつながるであろう。数十年後にマスターズで集まった選手の思い出話にも一役買いそうだ。

カテゴリーを問わず競技者生活が充実していくことで競技人口が増え、その観戦者が増えることで市場も拡大していく。全ての競技者に目を向けることが日本のハンドボール界を改革していく大きな推進力になる。プロ化、スタジアム・アリーナの新設、最新テクノロジーの活用などスポーツのビジネス活性化に向けたアプローチは様々であるが、マイナースポーツと呼ばれるハンドボールならではのアプローチといえるだろう。

1997年に同じく熊本で開催された男子ハンドボールの世界選手権でおよそ29万人をも集客したハンドボールが、間もなく開催される女子世界選手権で再び注目され、これらの改革によって真のメジャー化に向けた一歩を踏み出すその瞬間に注目である。

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