Posted: 20 May 2020 2 min. read

AIにより見直される”紙”のカタログによるマーケティング

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再認識されるアナログチャネル

デジタル化が進行する中で、カタログは時代遅れのように思えるかもしれませんが、人工知能(AI)を活用することでその機能はより強化され、企業のマーケティングやブランド構築を高度化するポテンシャルを持っています。テクノロジーの進歩やリモートワークの推進が追い風となり、メールやソーシャルメディアを活用したデジタルマーケティングが全盛を迎える一方、ダイレクトメール(以下、DMという)やカタログの郵送量は増加しています [1]。そして、これはデジタル化に乗り遅れた世代だけでなく、デジタルに多く接しているミレニアル世代も郵送のカタログに関心を示しているという調査結果もあります [2]。このレポートには、Amazonのような効率的でデジタル化されたオンライン事業者までがアナログなDMやカタログを印刷しているという報告が述べられており、特に物理的な店舗を持たない小売業者あるいは保険代理店などはDMやカタログによるキャンペーンの活用が効果的な商品提示となることを再確認しているのです。

人工知能を用いた顧客価値ベースのダイレクトマーケティング戦略

CRM(顧客関係管理;Customer Relationship Management)は、獲得した顧客により多く、より長期の購買を働きかけてLTV(顧客生涯価値;Life Time Value)を高めることで購入確率の高い顧客層へのアプローチに注力し、効率的なビジネスの実現を目指す管理手法です。CRMにおいて、スポットCMやソーシャルメディアといったマス向けコミュニケーションの売上げへの貢献度を測定することは容易ではありませんが、ダイレクトマーケティングのDMやカタログであれば発送日や顧客属性データが明らかで、ターゲティングも以前と比べて自動化が進みデジタル媒体との連携により追跡も可能となっていることから、効果測定や次の施策が可能となります。さらに、多くの企業がオンラインでの購買行動データを自前に蓄積し、業界の外部データと組み合わせることでさらなる顧客のセグメント化を進めています。これらの顧客分析にあたり、より複雑な因果関係を表現するモデル構築が必要とされており、近年これを実現するために人工知能が積極的に用いられています。複雑で膨大なデータから顧客行動を高精度で予測すると共に、顧客行動への影響度が高い要因の的確な識別や分析により顧客の過去の購買行動を探り、顧客理解やクロスセルを促進するといったマーケティング活動に寄与することが期待されています。

複数の施策を連動させたブランド体験の醸成

さらに注目されているのが、顧客一人ひとりに合わせてカスタマイズしたアプローチを展開するOne to Oneマーケティングです。この概念自体は決して新しいものありませんが、人工知能をはじめとするテクノロジーの発展とともに日々進化を遂げています。近年では膨大な顧客情報を統合管理・活用できるDMP(Data Management Platform)やマーケティング活動を自動化するマーケティングオートメーションツールが活発に提案されており、何万人、何百万人のターゲットに対しても、顧客一人ひとりに応じたタイムリーなコミュニケーションが可能になってきました。このように個々の消費者が共感して、感情的なつながりをも喚起する能力があるかどうかが、デジタル化が進むほどに決定的な競争優位性の要因になり、そのためにレガシーなチャネルであるDMやカタログの活用は、依然として強力な媒体になり得ます。マーケティングにおいても「人間か機械か」という二者択一選択ではなく,それらが融合した新しい顧客とのコミュニケーションの姿を考えていくことが重要ではないでしょうか。

参考文献

[1]    一般社団法人日本ダイレクトメール協会:「DMメディア実態調査2018」報告(要約版)、 available from  <https://www。jdma。or。jp/upload/research/20-2019-000013。pdf>(accessed 2020-04-03)。

[2]    Jonathan Z。 Zhang: “Why Catalogs Are Making a Comeback”、 Harvard Business Review、 February 11、 2020、 available from<https://hbr。org/2020/02/why-catalogs-are-making-a-comeback>(accessed 2020-04-03)。

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