Posted: 21 Nov. 2022 3 min. read

ゲーム×Web3の進化の方向性とは?(前編)

本稿では、前編と後編に分けて、ゲーム業界全般のトレンドやWeb3ゲームの論点を整理した上で、Web3におけるゲームの進化の方向性について論じたい。前編では、議論の前提として、ゲーム業界全般のトレンドを整理し、Web3ゲームの最近の状況や今後の可能性などを紹介する。
 

 

ゲーム業界全般のトレンド

2010年以降ゲーム業界においては大きな変化が起きている。
代表的なものとしては、グローバリゼーションの進展、ハードウェアの進化、遊び方の多様化があげられる。
 

グローバリゼーションの進展

2000年前半までは日本の市場/ゲーム会社が大きな存在感を放ち市場をリードしていた。

その後、市場の観点では、現在の日本市場はグローバル市場の10%程度の売上規模になっており、中国やアメリカが市場をリードすることとなった。ゲーム制作費が高騰しゲームの開発がますますハイリスクハイリターンになっていく中で、IPのマルチチャネル展開やロングテールでのコンテンツ提供を行うための資本力の重要性がより増してきていることが背景だと考えられている。

欧米におけるトップメーカーの買収による巨大化の事例としてEmbracer Groupが挙げられ、中国においては規制緩和により台頭した新興企業としてTencent、NetEaseが挙げられる。近年ではそれらに加えGAFA、NetflixといったIT業界の巨人の参入/拡大も続いている。
 

ハードウェアの進化

ハードウェアの進化においては単に演算能力や通信速度の向上のみならず、VR端末やジェスチャーの読み取り、ハプティクスといったよりインタラクティブで没入感を与える方向で進化が進んでいる。

現在では当たり前となったが、スマートフォンやゲーミングPCでのゲーム体験の浸透により、シーンに合わせたゲームの利用が可能になった点も大きな変化である。様々な入力デバイスやゲームのUI設計によるアクセサビリティの改善により、身体的/社会的弱者にとっての娯楽体験も生み出されている。
 

遊び方の多様化

基本プレイは無料でゲーム内通貨の売上や広告による収益で成り立つFree to Playによるユーザーのプレイ機会の拡大や、eSportsに代表されるようなゲームコンテンツの競技化による自身のスキルをつき詰めるような遊び方が、一般にも浸透してきている。

特にコンテンツの販売方法の試行錯誤により、マネタイズは多様化し、コンテンツの長寿命化や売り切り型から運営型への変化などもあって、ゲームの在り様の変化につながっている。

Web3ゲームの論点

Web3におけるゲームと言えば、Axie Infinityなどに代表されるPlay-to-Earnや、STEPNなどゲーム性と何かを組み合わせて参加することが収入につながるX-to-Earnの事例に事欠かない。これらは新規利用者からのインカムに支えられるモデルでありポンジスキームだ、という議論も続いているのが実態だ。

ただ、Web3ゲームがX-to-Earnに縛られずに、新規利用者が増加しなくとも運営が成立するように、マネタイズモデルを複線化することで、一部の批判的な議論を回避し、尚且つゲームに留まらない価値創造につなげることは可能だ。

実際に、Web3ゲームの一部では、従来のトークンの価値向上というマネタイズに加えて、参加に必須となるNFTのレンタルサービス「スカラーシップ制度」や、最近ではWeb3ユーザー共創型のIP創出プロジェクトの開始が発表されるなど、コンテンツを活用したビジネスが生まれている。さらに、今後NFT保有を始めとしたウォレット利用者が増加することが条件であるものの、ゲームアカウントと紐づけたウォレットを通じてデジタルマーケティングが可能になる未来も有識者から得た意見として添えておきたい。

著者が外部サイトで述べたWeb3における有望な戦略は、コンテンツから参入し、アプリケーションでユーザー交流を盛り上げてからプロトコル層に進展するアプローチだが、ゲームのコンテンツを共創できる点や貸し借りできる点は、ユーザー同士の交流を活発化させる好例と言えるだろう。

 

以上の通り、前編ではゲーム業界の全般のトレンドとWeb3領域での議論の基礎を整理した。

後編では、Web3におけるゲームの進化の方向性を論じる。

 

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