ゲーム×Web3の進化の方向性とは?(後編) ブックマークが追加されました
前編での整理事項を中心に振り返りつつ、後編ではWeb3におけるゲームの進化の方向性を3つ提示したい。
前編で論じた通り、ゲーム業界全般でユニバーサルな機器の登場や遊び方の多様化など利用者に自由を与える動きがある点や、Web3領域ではコンテンツシフトといった事業構造の変化を捉えた多様なマネタイズモデルが生まれている点が、ゲーム×Web3の進化の方向性を議論するために前提となる特徴といえる。
同様にWeb3の基礎的な特徴も進化を検討するためには重要な前提となる。詳説は外部サイトに譲るが、DAOの「平等でフラットな貢献と報酬」や、DeFiに代表されるような「仲介事業者を不要とするサービス」、およびNFTの「代替不可能なデジタルアセット」などが挙げられる。
これらを元に、よりゲームとWeb3が交わる世界観を考察するとすれば、真のオープンワールドゲーム、現実社会における社会的弱者を救う新たなユニバース、Web3の先進的な思考実験の場の3つがWeb3におけるゲームの進化の方向性として議論に値するのではないかと考えている。
コンテンツへの投資がグローバルで盛り上がる中で、作り手としてユーザーを巻き込むことでコンテンツをロングテール化することも可能ではないだろうか。
実際にゲームの攻略以外にステージを作ることに場を提供する事例として、Unityはゲーム開発と収益化のプラットフォームを提供しながら、作成したアセットを販売できるようにする取り組みも進めている。こうした流れもあってか、ユーザー間におけるゲーム内で開発した内容の共有など、用意されたコンテンツを消費する以外の楽しみ方が生まれつつある。
さらに、ゲーム会社が場を提供するだけではなく、作り手自体が資金を集めるなど、DAOの仕組みをうまく活用した協創型のゲームを実現できれば、一つのゲームが多様なゲーム性を演出しながら成長することも多様なマネタイズポイントの創出も可能になる。
Web3の世界観では、金融に係る仲介事業者などが不要になり、限りなくフリクションレスなペイメントなどが可能になるため、今後ゲーム機器のユニバーサル化や更なるメタバースとの融合に合わせて、社会的弱者がゲーム内で金銭報酬を得ることも可能になるだろう。
様々な理由で社会に出て金銭を稼ぐことが困難な人々にとって、ゲームの中で報酬を得られる仕組みは自助自立に向けた打ち手の一つとなるはずだ。
社会的弱者との親和性の観点では、NFT等を通じて関連の深い周辺領域であるメタバースが、身体などの様々な制限を取り払うという特長を有する点にも目配せしておきたい。福祉施設でVR体験会を通じた高齢者の支援が始まりつつある事例など、メタバースを含めた広義のWeb3ゲームは一部のコアプレイヤーのためだけのものではなくなっていく点も重要な変化だと捉えている。
今後ゲームが更に現実社会に類似していくことを予想すると、様々な論点が想定される。例えば、あるプレイヤーがプレイグラウンドで特殊な模様の、ただし無料の石を拾い、後日に他のプレイヤーが何かとの交換を申し出たとして、どの瞬間から経済的な価値が生まれ、NFTになるか、その取引の報酬は誰に分配されるべきかなど答えが求められるのではないだろうか。
また、個人のLikeが経済価値に転換される際の考え方や、現実世界でテストできない思考実験および現実世界であるがゆえにノイズが生まれるインタラクションの代替など、ユーザーの機微をテストする場として現実世界に向けても重要な示唆を得ることが可能になると期待している。
このように、ゲーム業界とWeb3業界とはますます密接に関わりあう傾向にあるが、2つの業界は大量の電力を消費するという点で、社会的な批判を受けるリスクを背負っていることにも留意が必要だ。ゲーム業界では、クラウドゲームの電力消費が環境に与える影響が指摘されて久しい。Web3業界では、イーサリアムが新たなコンセンサスアルゴリズムを導入したことによって電力消費が大幅に削減される見通しであるとのニュースが報じられて注目を集めたが、依然として両業界とも電力消費問題をはらんでいると言えよう。
また、環境問題のみならず、特にWeb3に関して政府主導で制度整備も変化していく最中の日本において、提示した3つの進化の方向性に関して慎重な議論が必要だろう。引き続き、ゲーム業界の様々なプレイヤーと議論を重ねていきながら、日本企業がWeb3で勝ち抜くための戦略検討を深めていきたい。