Posted: 04 Feb. 2022 3 min. read

アパレル業界に問われる大量消費――「成功の罠」から抜け出すための3つの視点

【シリーズ】サステナビリティ経営新トレンド

アパレル業界がいま、窮地に立たされている。ウィズコロナ時代の新たな消費スタイルへ適応するためのデジタル化に加え、環境汚染や人権侵害、動物虐待、廃棄ロスなど、川上から川下まで社会課題を数多く抱える産業として、今後の在り方を問われている。大量生産・大量消費時代の「成功の罠」から抜け出すためには、筆者は消費者を中心に据えた3つの視点が重要であると考える。

1つ目は、「トレンド作りの民主化」だ。いまやパリコレの最前列は、著名な業界人を抑えて、SNSのインフルエンサーの指定席になっていると聞く。D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)ブランドも増えるなか、売れ残りを減らし、商品廃棄をなくすには消費者の声に耳を傾け、流行の種を見つけてトレンドを作っていく視点が重要だ。
方法の一つとして「ウルトラファストファッション」があげられる。ECに特化してAIを駆使し、多様な商品を100~300枚以下の小ロットで展開する事業形態だ。顧客の反応や売れ筋を踏まえた機動的な追加生産で「新しさ」を常に提供する一方、販売・在庫ロスの極小化も実現している。SNSの投稿画像などをAIで解析してトレンドを見極める「リアルタイムファストファッション」も登場しており、ボトムアップ型で多様なブームを生み出す潮流が加速している。


2つ目は「共感の輪」だ。アパレル業界は、自社サイトや店頭デザインなどを通じて世界観を一方通行で発信する傾向が強い。だが、サステナブルなファッションの普及には、再生素材や人権問題に取り組んだ製品を展開するだけでは不十分で、消費者が「自分ごと」として捉える機運を醸成することが重要だ。
生産者とのつながりなどを通じて、その意義や購入がどう社会貢献につながるのか、理解を深めるきっかけや仕掛け作りが必要となる。バッグなどを手掛けるマザーハウスは、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもと、自社サイトなどで現地の職人の人柄や手作業の製造工程の写真や動画を発信。工場見学や交流イベントも開催することで、「作り手」と「売り手」と「買い手」が同じ世界観を目指す“同志”となる状態を築いている。


3つ目は「エシカル+αの価値」だ。エシカル素材を使ったり、店頭で回収した中古品をリサイクル・アップサイクルしたりするなど、供給側の取り組みは広がっている。加えて、消費者の購買意欲をくすぐり、反響を生み出そうとする視点が重要だ。
レザーや毛皮などの動物性素材を使わず、Z世代から支持を受けるブランド「ステラ マッカートニー」は、アディダスとのコラボレーションで女性用のスポーツウエアを再定義した。ナイキも、サステナブルな素材の活用に加え、日本発の「sacai」とのコラボ商品を発売した。
いずれもブランドをてこにした新たな価値の創造に加え、異色のコラボで話題づくりをしている。
消費者のサステナビリティ意識が諸外国に比べて低い日本では、市場の形成・拡大に向けて一人ひとりの意識や行動を変えることから取り組まねばならない。
単に「サステナブルだから」というだけの一方通行な大義や理念の押し付けではなく、ファッションに対する根源的な欲求を満たし、消費者と共にサステナブルファッションの未来を切り開く視点が欠かせない。

 

本稿は日経MJに2022年1 月21日に掲載された寄稿を一部改訂したものです。

D-NNOVATIONスペシャルサイト

社会課題の解決に向けたプロフェッショナルたちの物語や視点を発信しています

 

三由 優一/Yuichi Miyoshi

三由 優一/Yuichi Miyoshi

デロイト トーマツ グループ シニアマネジャー

モニター デロイト所属。 大手SIer、外資系コンサルティングファームを経て現職。キャッシュレス領域や銀行・生損保・証券向け経営戦略・新規事業・DX支援、及び幅広い業種・業態の金融参入/強化戦略・実行支援における実績を有している。