Vertex AI Searchの特徴とビジネスへの活用 ブックマークが追加されました
ビジネスでは迅速かつ正確な情報アクセスが重要ですが、情報量の増加により検索は困難になっています。従来の検索方法では、単語の揺れや同義語への対応が不十分で、ユーザーの意図と結果が乖離することがありました。この問題を解決するために、Google CloudのVertex AI Searchが注目されています。このツールは、情報検索を効率化し、より精度の高い検索結果を提供します。本稿ではVertex AI Searchの概要と、活用例について解説します。
Vertex AI Search は、「Google Cloud の Vertex AI プラットフォームに備わっているすぐに使える検索エンジン」*¹で、Google の最先端 AI 技術を活用したエンタープライズ向け検索サービスです。自然言語処理と機械学習により、ユーザーの検索意図を理解し、最適な検索結果をフルマネージドで提供します。
脚注)*¹ 出典:Vertex AI Search, 概要, https://cloud.google.com/enterprise-search?hl=ja(参照2024年7月31日)
Vertex AI Searchの利点はその汎用性やユーザビリティなどの点から以下のように挙げられます。
また、そのような利点からVertex AI Search は、次のようなビジネスシーンで活用できます。
実際に、関連する規定やガイドラインを手動で検索する必要があり、このプロセスは困難で時間がかかるという問題がありました。しかし、Vertex AIの同義語登録機能を活用することで、異なる表現を用いてもRAG*²を使用して関連する規定を効率的に検索できるようになりました。結果として、規定検索の効率が向上し、業務のスピードアップに大きく貢献しています。
脚注)*² Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)の略称で、LLM(大規模言語モデル)に外部情報を取り込むことで、回答精度を高める仕組みのこと
以下では、実際にビジネスに活用する上での、Vertex AI Searchの特長を具体的に3点あげます。
RAG は、複雑なマルチステッププロセスを必要とするため、有望ですが実装は困難です。そのため、開発者は、通常以下に対処する必要があります。
Vertex AI Search はフルマネージドサービスとなっており、データをインポートするだけで上記の処理を自動で行うことができます。また、単純に検索を行うだけではなく、検索結果の要約も取得することが可能です。
要約に利用する LLM のモデルは Google が開発している PaLM2(text-bison)、Gemini (1.0、 1.5) から任意のものを選択することが可能です。ただし、これらのモデルにはそれぞれライフサイクルが存在し、将来的には更新や置き換えが行われる可能性があります。また、ここで作成した UI はウィジェットとして提供されるため、簡単に自社のウェブサイトに組み込むことも可能です。
参考:回答生成モデルのバージョンとライフサイクル |Vertex AI エージェント ビルダー |グーグルクラウド (google.com)
Vertex AI Search ではウェブサイト、構造化データ、非構造化データをデータソースとして取り込むことが可能です。また、2024年8月時点では、様々なサードパーティデータソースも許可リスト付きのコネクタを利用してプレビューとして利用することが可能です。
前述の通り Vertex AI Search は、API での呼び出しの他に検索機能を簡単に組み込める JavaScript ウィジェットを提供しています。ウィジェットは要約に利用する LLM、生成される要約のトーン、スニペットまたは抽出コンテンツの有効化など様々な項目をカスタマイズでき、設定した内容のウィジェットを簡単に自社サイトに組み込むことが可能です。また、ウィジェットでは JWT または OAuth による認証をかけることもできます。
Vertex AI Search は、多様なデータソースに対応し、ユーザーの検索体験を向上させることが可能です。これにより、企業は情報アクセスの効率を高め、業務の効率化を図ることができます。
坪田 弘紀
デロイト トーマツ アクト デリバリーコンサルタント
電気通信事業会社を経て現職。Google Workspace関連プロジェクトに従事しつつ、デロイト トーマツグループにおけるGoogle Cloudコミュニティの運営を行っている。