データ・生成AI活用による企業変革のポイントとは?〜Dataiku社とデロイト トーマツが金融業界向けのイベントを共催〜 ブックマークが追加されました
データならびにAIの活用が、あらゆる業界やビジネスシーンで求められている。一方で、特にエンタープライズ企業においては、リスク管理やコンプライアンスなどがネックとなり、思ったように活用が進まない、との課題もある。そこで同領域で世界をリードするDataiku社とデロイト トーマツは、金融機関で該当業務に携わる方々を招き、データ・AI活用における世界のトレンドを紹介するイベントを開催。Dataikuが提供するサービスや金融業界における活用方法を紹介するとともに、日本の金融業界における課題や取り組みについてディスカッションした。その様子をレポートする。
*Dataikuの特徴が分かる3分デモ動画
右からDataiku Japan社 取締役社長カントリーマネージャーの佐藤 豊氏、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社執行役員金融インダストリーLeaderの中村 吉信、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社パートナーの宍倉 剛、Dataiku社Global VP, Product and Business SolutionsのSophie Dionnet氏、デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社パートナーの染谷 豊浩
最初に30年にわたりデータや・AIの活用事業に携わり、数多くのクライアントのビジネス改革を推進してきたデロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社パートナーの染谷 豊浩が登壇した。
日本企業でこれまでデータ活用が重視されてこなかった背景には、日本企業は企業間での人材の流動が低いことがある。業務が人に依存していることが少なくないため、データに基づいた検証や判断が重視されてこなかった、と染谷は指摘する。またジェネラリストや文系人材を育成する流れが主流でデータ活用で求められるテクノロジー人材が不足していること、関連システムの構築などにおいてSIerへの依存度が高くノウハウが社内に残らない、といった点も染谷は挙げた。
さらに「データ活用戦略の不在」「ガバナンス体制の不備」「組織や人材の課題」といった要因から、データ・AIの活用をはじめてもなかなか進まない現状がある。このような状況も踏まえ、染谷はデータ・AI活用における欧米や中国と日本の状況を紹介。日本は明らかに遅れていることを示した。
では、このような状況を打破するには、日本企業はどうすればよいのか。「情シスなどの一部の部門や専門家が取り組むのではなく、すべてのビジネスユーザーが主導的に取り組むこと。組織全体の変革が必要」だと染谷はいう。
変革を推進する際には必要な要素を明確にし、それぞれの要素のバランスが重要だ。特にAIにおいては規制やガイドラインの導入が急速に進むため、フレームワークを活用しガバナンス体制を整えることが重要だと染谷は講演を締めくくった。
続いてはDataiku社Global VP, Product and Business SolutionsのSophie Dionnet氏が登壇し、同社のグローバルにおける取り組みを紹介した。Sophie氏は、世界的な金融機関で15年働き、データ活用に関するプロジェクトにも携わってきたキャリアを持つ。Dataikuは現在グローバルで600以上の顧客を持つが、その中でも銀行や保険会社といった金融機関が120社以上で「最も多い」とSophie氏はいう。
活用領域は大きく5つあるが、中でもリスク管理は「コスト削減や強度アップに寄与する」との効果を説明。具体例として欧州のメガバンクBNP Paribasでの、マネー・ロンダリング対策や不正検知業務を、従来のルールベースから機械学習に変更した事例を紹介した。
Sophie氏は取り組みを進める上でのポイントも紹介。染谷が紹介した内容とも重なるが、データ部門など一部の専門部署だけで取り組みを進めるのではなく、ビジネス部門やリスク管理部門など、プロジェクトに携わる部門のメンバー全員が参加し、協力して取り組むことで、自発的な動きが加速する、と強調した。
Sophie氏はこのような取り組みをAIジャーニーと呼び、「AIジャーニーを迅速に推進するには“インクルーシブ”、つまり関係者全員にとって役立つことが重要だ」という。メンバーの一人ひとりがAIの恩恵を受けることで退職者の減少や採用コストの削減といった効果も見込めるためだ。
最後にSophie氏はEUでもAIに関する規制が強化されていることに触れ、Dataikuでは安全を考慮したプラットフォームを構築していると説明。「ガバナンスをしっかりとAIに組み込むことが重要だ」と考えを述べた。
ここからはDataiku Japan社の取締役社長カントリーマネージャーを務める佐藤豊氏がモデレーターとなり、参加者それぞれが自身の取り組みや直面する課題を共有しあうラウンドテーブルが行われた。ここで出された主な意見や質問を紹介する。
ある参加者は「コストや投資効果にばかり着目しがちで、意識改革が難しい。会社全体としてリテラシーが低い」という意見があり、これには大きくうなずく参加者も多かった。また「以前からデータ活用は進めているものの、ユーザー部門が必要性を感じておらず浸透しない」という意見もあった。
海外事業も展開している企業では「クラウドサービスの利用を検討しているが、顧客データが海外サーバーで処理してしまうと会社のコンプライアンスに抵触する」という課題も出た。
企業も会社内の立場も異なる参加者たちだが、抱えている課題や乗り越えるべき壁は、ある程度共通する部分もあるようだ。
さまざま挙がったトピックスの中から、佐藤氏は「クラウドの越境」に注目。参加者に改めて対策を聞くと、「国を超えるような利用はしない。すべて国内リージョンにあるクラウドを利用するようにしている」との意見が多かった。
一方で、グローバルでビジネスを展開する企業は、どうしても海外リージョンのデータ利用が必要になるケースもある。その際は、過去に承認を取得したデータを利用する。承認済みのデータを明確にしておくことで対応している企業もあった。
続いてのテーマは「個別・全体最適化」について。部署ごとに個別最適の期間が長く、これから全体最適化していきたい、とのフェーズの企業が数社ある一方で、同じく個別最適で構築したシステムを元に、分析基盤を統合するようなイメージで構築している企業も見られた。さらに「部署によりテーマが異なるため、データやガバナンスにおいて共通、全体最適化をしている」との意見もあった。
イベント終了後、Dataiku社Global VP, Product and Business SolutionsのSophie Dionnet氏、Dataiku Japan社 取締役社長カントリーマネージャーの佐藤 豊氏と、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社パートナーの宍倉 剛、デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社パートナーの染谷 豊浩、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社執行役員金融インダストリーLeaderの中村 吉信の5名が、金融業界におけるデータ・AI活用をテーマに対談を実施。日本の金融業界における活用のポイントや課題について語った。
佐藤:成熟度は企業によって異なりますが、データやAIの活用は、以前と比べて確実に取り組みが進化しています。そこで止まることなく、生成AIを組み込んだフェーズまでいかないといけない、そんな風に現状を捉えています。
Sophie:私も、昨年と比べると着実にAIに対する成熟度が高まっていると感じています。おそらくここ最近の生成AIの急激な浸透が、企業を本気にさせたのではないでしょうか。
中村:一方でまだまだ日本の企業の多くは、基幹系システムに紐づいたデータを抽出している段階であり、必要な情報を効率よく取り込みパフォーマンスを出していくフェーズには達していない、とも感じています。
ラウンドテーブルの中でROI(投資利益率)というキーワードが出ましたが、データは資産でありインフラです。ですから、ROI以前の問題として、データ基盤が整わなければ前には進めません。他社との差別化を生むために何が必要なのか、そんな考えを持たなければ進化できないのではないでしょうか。
宍倉:データ・AIの導入については「待ったなし」で、取り入れなければ他社に負けてしまうという危機感を持つ企業が大半だと思います。一方で、データやAIの活用は、単に生成AIを導入したりシステムを統合したりすればバリューが出るような簡単なテーマではありません。現場の課題解決にはどのようなデータを取得すべきなのか、入口の部分からしっかりと考えて取り組むことが重要です。
佐藤:生成AIはどの企業も取り組んでいるため、同じ施策では差別化になりません。現場の課題を確実に解決する業務アプリケーションに組み込む、という段階までいけば差別化となります。今日ご参加いただいた中には、そんなフェーズの企業がいらっしゃいましたね。
中村:現場で若手メンバーが活用しているのに、管理職や役員が利用していない。その結果、会社全体に浸透しない。このような点も大きな課題と捉えています。解決するには、トップダウンで全社を変革する必要があるでしょう。
染谷:経営者が強力にリーダーシップをとって、トップダウンで全社的に取り組むことが重要です。個別の案件でROIなどと言い始めた瞬間に、導入スピードは遅くなります。
もうひとつ気になるのは、日本企業が「100%」を求める傾向があることです。ところが生成AIを含めたAIは100%ではないですから、ある程度の誤りを許容する必要があります。実際、海外ではこのような考えがスタンダードです。
Sophie:グローバルで成功している企業を見ても、AIの活用などはトップダウンのアプローチが強いですね。やはり新たなイノベーションは、トップダウンで行うからこそ全社に広まることも少なくありません。これは非常に重要なポイントです。
AIスタートアップ、国内系コンサルティング会社を経て現職。 先進技術を用いた新規ビジネス創出、業務の変革等、企業のデータドリブン・トランスフォーメーション実現に従事。データサイエンス領域における戦略策定・業務変革、組織設計・人材開発に強みを持つ。 『ビッグデータ総覧』日経BP社等、著書・寄稿多数。 関連サービス ・ストラテジー・アナリティクス・M&A >> オンラインフォームよりお問い合わせ
金融機関を中心とした、経理・財務に関する業務改善、システム構築、有事・規制対応に強みを持つ。また、業種・業界、プロジェクト規模を問わず、戦略策定、業績管理、資金効率最適化、業務効率化、シェアードサービスセンター構築、IFRS導入支援、リスク管理構想策定、経営統合支援等、戦略・構想策定から業務・システム導入までの全てのプロジェクト工程における経験を有する。特にオペレーション領域においては、RPAやCognitiveを活用したビジネスモデル変革を推進している。 関連するサービス・インダストリー ・ AI & Data >> オンラインフォームよりお問い合わせ
25年以上に渡り、統計分析や機械学習、AI導入等の多数のデータ活用業務に従事。 同時に数理モデル構築やディシジョンマネジメント領域でのソフトウエア開発、新規事業やAnalytics組織の立上げなどの経験を通じて数多くの顧客企業のビジネスを改善。 リスク管理、AML/CFT、不正検知、与信管理、債権回収、内部統制・内部監査、マーケティングなどの幅広い分野でAnalyticsプロジェクトをリードしている。