登る人の数と同じだけの登り方がある ― それぞれの場所でWell-beingを目指すメンバーが語り合う ブックマークが追加されました
デロイト トーマツ グループは次世代に向けた社会的価値創出に向けて、人と人との相互の共感と信頼に基づくWell-being社会の実現をAspirational goalとして掲げています。デロイト トーマツの卒業生の皆さんも、いつまでもデロイト トーマツ コミュニティの重要なメンバーであり、デロイト トーマツを離れてご活躍されている方々とも、様々な形でつながり、交流できる自由なコミュニティが活性化していくことを目指しています。
今回は、デロイト トーマツ グループ卒業生で、Well-beingに関わる分野で幅広くご活躍されている、一般社団法人giv代表 西山直隆さんとデロイト トーマツ グループ内でPersonal Well-being促進の活動を自主的に推進している、DIALABO(ダイアラボ)というイニシアチブの発起人の藤 杏里沙さん(デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社所属)と、メンバーの黒川 達生 さん(有限責任監査法人トーマツ所属)のお三方にお集まりいただき、それぞれの活動やWell-beingへの想いについて語り合っていただきました。
──皆さんは普段、どのような活動をされているのでしょうか。
西山:私は2018年までデロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社に所属していました。現在は一般社団法人givとTechJapan株式会社、2つの組織の代表を務めています。それぞれ活動や事業の内容は異なりますが、ともに「誰もが最高に輝ける社会を作っていく」ことをミッションとして掲げています。
藤:デロイトトーマツ ファイナンシャル アドバイザリーに所属し、現在はイギリスに赴任して働いています。2022年1月に、デロイト トーマツ グループにおけるPersonal Well-beingの自発的なイニシアチブとして「DIALABO」という対話を促進する活動を立ち上げ、現在も取り組みを行っています。
黒川:私は2021年に監査法人トーマツへ入社しました。グループ内のメンバーが楽しく働きながら良い人生を送ってほしいという想いから、藤さんが立ち上げたDIALABOの活動にも参加しています。他にも、地域活性化のプロボノ活動にも参加していて、西山さんの活動とも通じる部分があると思うので今日はお話しできるのを楽しみにしていました。
──それぞれの活動に対する想いやきっかけについて教えてください。
西山:givの活動には「経済的な豊かさではなく、心の豊かさが得られる社会を」という想いがあり、そのアプローチとして「価値を贈って、感謝でつながる」社会の創出を目指しています。何かをしてくれた方にお返しをすることを「恩返し」と言いますが、この恩を別の誰かに繋いでいく「恩送り」を実践しています。具体的には、自分の好きなことや得意なことを人に贈り、受け取った人はまた別の違う誰かに贈っていきます。
私が実現したい社会をキーワードで表現するならば「村をアップデート」でしょうか。近代化前、私たちは「村」というコミュニティにいて、助け合いながら生きていました。現代は隣に誰が住んでいるのかも分からず、頼れる人がいない孤独のなかで生きていますよね。そこで、現代にも村のようなコミュニティを作りたいと考えたのですが、かつての村にはしがらみの多さや多様性の無さ、同調圧力などのデメリットもありました。givでは、多様性や自由があり、人と楽しみながら緩いつながりを持つことができる、テクノロジーによって物理的な制約を受けないアップデートされた村のような、そんな仕組みをデザインしたいなと考えています。
黒川:「恩送り」のような活動を始めるきっかけは何だったのでしょうか?
西山:私はデロイト トーマツ時代、シンガポールに赴任していました。当時、先ほどお話ししたような思想を「こうあるべきだ」と同僚たちに説いていたのですが、ある時「来年も同じ話を同じ仲間に話している口先だけの自分」を想像してぞっとしたのです。それがきっかけとなり、具体的に何をするのか決める前に、まず行動しようとデロイト トーマツを飛び出しました。日本に帰国してから、まだ漠然としていた「心の豊かさが得られる社会」とはどういう仕組みかを考え、ワークショップをしたり、フィードバックをもらったり、アジャイルで試行錯誤を繰り返しながら現在の形を作ってきました。
藤:私は中学から大学まで学生時代の大半をアメリカで過ごし、日本に帰国して社会人になりました。アメリカではインターンの経験もあったので、日本と海外の仕事上でのコミュニケーションの違いに衝撃を受けたのです。職場での上司と部下の衝突を見ていると素朴に「話し合えばいいのでは?」と感じることが多々ありましたし、仲間から相談を受ける機会も増えていきました。そんな日々の中で、日本では対話がうまく進まないこと、それゆえにメンタルヘルスに悪影響を与えていることが社会課題だと感じるようになりました。
「何かできることはないのか」、「行動を起こさなくては」と一念発起してDIALABOを立ち上げました。簡単に言うと、社内で対話が自然に発生するような仕掛けを作る活動で、具体的には「社内でこういうモヤモヤがあるよね」ということを基にコンテンツ化し、イベントやパネルディスカッションを開催しています。コンテンツはWell-beingに関するものでありながら、あくまで対話の発生を目的としているので、Well-beingに関する解答を提供するわけではないのが特徴ですね。
実際に対話をしてみると、多くの社職員が、西山さんがおっしゃっているような「つながり」を求めていることがよく分かりました。そこで私は、DIALABO Supporterという「サードプレイス」を作り、そのコミュニティを通じて、いろんな人が集まり、困ったことがあれば相談するような場づくりを行っています。
黒川:私はデロイト トーマツに入社して2年が経ちますが、大手プロフェッショナルファームの一員としてがむしゃらに働く中で、利益や成績がプレッシャーになり働くことの楽しさが時に薄れてしまったり、リモートワークの影響もあって人間関係が希薄になったりしている面があるのではないかと感じるようになりました。
そこで出会ったのが、藤さんの主催するDIALABOの活動でした。所属メンバー同士の気配り、思いやり、心理的安全性、対話などを1つひとつ積み上げていくことで、グループの良い文化やWell-beingの文化を広めていける。「そうすれば組織がもっと良くなるのでは」という考えで、DIALABOの活動に参加するようになりました。
西山さんが活動の中で大切にされている「見返りを求めるより、人のためになることに喜びを感じる」という考え方は、是非組織にも取り入れていきたいなとお話を聞いていて思いました。メンバー同士の関係性も良くなりますし、働くモチベーションとなる喜びや楽しさにもつながりそうですよね。
──皆さんが考える「Well-being」とはどのようなものですか。
黒川:DIALABOの活動の中で「Well-being」とは何なのか考える機会は多いのですが、その答えを出すのは非常に難しいと感じています。同じ人物でも、年齢や環境により考えが変化することもありますし、結局のところ「人や状況により異なる」ものなのかもしれません。そう考えると、「それぞれの人がそれぞれのWell-beingを感じられる環境を作る」ことが命題なのだと感じています。
私自身は、人から必要とされる、頼られることで自己肯定感が高まり、Well-beingな状態になりますね。DIALABOや地域創生のプロボノ活動は人と人とのつながりの中で「私自身が必要とされている」という感覚をストレートに感じることができるので、続けられています。
藤:私も「Well-beingが何なのか」という命題は非常に難しいと感じていて、普段はあまり明確な定義や言葉では表現しないようにしています。ただ、先ほどの西山さんのお話を聞いていると、「心の豊かさが継続している」状態なのかなと感じました。私の場合、対話が上手くできている時がその状態ですね。
人との対話では、相手のストーリーや経験を聞かせてもらって、疑似体験のような感覚です。また、自分自身との対話という意味では、自分は何をしたいのか、自分は何者なのかを俯瞰して見ることができている状態が私にとってのWell-beingです。実は昨日、とても困ったことがあったのですが、「ああ、私は今困っているんだな」と把握できると、困りながらも自分自身の状態は理解できているので、その状態をWell-beingと認識しています。
西山:僕はすごくシンプルで、夜ベッドで寝るとき「今日は楽しかったな」、朝起きて「今日もワクワクするぜ」と思えているかどうかが「Well-being」なのかそうじゃないかの分かれ道だと考えています。
givの活動では、イベントを開催したりテクノロジーを駆使したりして、たくさんの「恩」=「ギブ」を受け取りやすい状況を創り出しています。しかし、活動を進めていくと、ギブを受け取るよりも贈りたい人が増えてくるのです。贈るほうが楽しさやワクワク感が強いということに気づくのでしょう。そういった意味では、受け取ることよりも贈ることを楽しめるようになると、より「Well-being」な状態だと言えるのかもしれません。
──デロイト トーマツに流れるカルチャーで、Well-beingにつながるようなものがあれば教えてください。
黒川:DIALABOやプロボノ活動に参加していて、デロイト トーマツのネットワークの広さをあらためて実感しています。他法人の方や藤さんのように海外にいる方など、国内外の様々な立場のメンバーと日常的に接することができるので、自然と多様性を受け入れる土壌ができているというのは「Well-being」につながる大きなメリットなのかなと感じています。
先日、地域活性化のプロボノ活動で、福井県に根ざして活動する方に出会ったのですが、その方は福井にゆかりがあるわけではなく、「『福井がWell-being度が高い』という理由で福井を盛り上げる活動を始めた」と聞いてびっくりしました。ほかにも西山さんのように法人を飛び出して活動を始めるほど強い想いを持つ方に出会うこともあります。こうした多様性にあふれた土壌を活かして、それぞれの価値観や良い取り組みをグループ全体に広げられると良いなと感じています。
藤:正直、現状のデロイト トーマツは、概念的なことが先行している傾向が強く、私たちのように活動しているメンバーはまだ少数派です。しかし、情報発信や発言しようとする若手に対して真摯に耳を傾けたり、興味を持とうとするリーダーも確実に存在しています。お互いを理解し合おうとか、多様性のなかでどう共存できるかを考えているメンバーも増えてきています。
グループ全体としても、変えていこうと前に進みだしていることを実感しています。今日、こうした対話の場を設けてくれていることが何よりの証拠ですよね。まだまだ道は長いですが、この1歩はとても大きいものだと思います。
西山:デロイト トーマツ時代、私はデロイト トーマツ ベンチャーサポートという、ベンチャー企業を専門的に支援する法人に所属していました。当時はまだベンチャー企業への注目度が低くリスクも大きかったので、堅実なデロイト トーマツとしては新しい試みだったと思います。
今、藤さんが感じている「Well-beingって何なの?」という周囲からの視線と同じように、当時の私も「ベンチャー支援って一体何?」という周囲からのプレッシャーを感じていました。しかし、当時もほんの数%のメンバーやリーダーが私を守ってくれて、やりたいことを最大限に実現できる環境を作ってくれたのです。デロイト トーマツには根本的にそうした風土が根付いていると信じているので、Well-beingにつながる活動もきっと大きく進歩していくだろうと信じています。
──皆さんの今後の展望について教えてください。
西山:自分自身の活動は、今ようやくスタート地点に立った状況だと思っています。これからの可能性を思うとワクワクしてきますし、焦って結果に固執せず、本質的な目的を見失わないようにオープンなチャレンジを進めていきたいですね。
その中でも、先ほど黒川さんがおっしゃっていた企業や自治体の中に恩送りのような仕組みを取り入れる活動は是非挑戦してみたいと思いました。givのメンバーや対象企業だけでなく、様々なステークホルダーや関心を持つ方々と連携しながら仕組みづくりを行うことで、大きなインパクトを出せるかもしれません。
藤:昨年はDIALABOを立ち上げ、デロイト トーマツ グループのメンバー同士の対話が発生・活性化されるサードプレイスを作ることに注力した1年でした。今年は少し視点を変えて、社職員自身のエンパワーメント、自立、自尊心に着目し、自分自身との対話が発生・活性化されるような仕組みを検討し、広めていきたいです。
相談できずに殻にこもったり、自分に自信が持てなかったりというテーマは、決してデロイト トーマツだけが抱える問題ではありません。社会全体の課題としてこうした取り組みを行っていきたいですね。
黒川:西山さんの活動については、書籍やDIALABOメンバーからの話を通じて感銘を受けていたので、今日はご本人から直接熱いお話を聞かせてもらえて、たくさんの学びがありました。聞いて終わりではなく、しっかりと今後の活動に活かしていきたいと思います。
私が参加しているDIALABOやプロボノ活動は、幸福度を高めたり、楽しく生きられる環境を作り出したりするための取り組みだと思っているので、こうした活動を通して、メンバー1人ひとりがWell-beingや生きがいを見つけられるきっかけを作っていきたいです。そして、その答えを見つけたとき、それを実現する環境がデロイト トーマツにはあるということを伝えていきたいですし、デロイト トーマツをそんな場所にしていきたいと考えています。デロイト トーマツはいろんな人がいて、いろんな機会がある組織だと思います。こうしたカルチャーを最大限に活かして、メンバー1人ひとりがそれぞれに楽しく輝ける場所を作っていきたいですね。
一般社団法人giv代表 西山直隆さん
デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 卒業生
近著:giver こころのウェルビーイングのためにいますぐ、できること