ESGソリューションの活用を通じ、未来の内部統制の高度化へ向かう ブックマークが追加されました
IFRSでのサステナビリティ開示基準や欧州のCSRD/ESRS、SECの気候関連開示規則案の最終化が進む現在、日本でも有価証券報告書の開示項目にサステナビリティに関する記載欄が新設されるなど、経営戦略に企業のサステナビリティ対応が求められるようになった。サプライチェーン、GHG排出量、人権、生物多様性など、サステナビリティ対応の基盤となるESGデータは多岐にわたる。それら非財務情報の収集や分析だけではなく、連結で財務と同じタイミングでかつ内部統制を含む第三者保証が求められる中、テクノロジーの活用は欠かせない。
今回は日本アイ・ビー・エム株式会社の関敦之氏と磯部博史氏にお話をうかがった。
中島(デロイト):デロイト トーマツはESG領域の取組のひとつとして、グローバルで御社のEnviziをコアとしたGreenlightというソリューションを提供しています。この対談では、ESGに対する日本とグローバルにおける意識の違いについての意見交換と、Enviziに関するお話をお伺いできればと思っています。
磯部氏:私と関が在籍しているサステナビリティ・ソフトウェア事業というのは、業界や領域に特化したAIやIoT系のソリューション群にサステナビリティという新しい領域のソリューションを加えた事業で、その中心となるのがEnviziです。Enviziはオーストラリアで設立され、2022年1月にIBMが買収したESGデータ管理製品で、この業界で20年を超える実績があります。サプライチェーン対応や生成AI連携など今後は製品の拡張計画もあり、Enviziという製品にお客様が求める機能を連携させ、サステナビリティトータルソリューションとしてご提供をしていこうとしています。
磯部 博史氏(日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 サステナビリティ・ソフトウェア事業部 ソリューション・リード)
国内の企業や組織を見ると、ESG関連はスプレッドシートをベースに作業している企業が少なくありません。そういったお客様に対して、透明性を持った監査対応を実現するEnviziをご紹介すると、たいへん喜ばれます。今後はEnviziで日本の企業や組織におけるカーボンニュートラルの実現に向けてご支援していきたいと考えています。
三沢(デロイト):個人的な意見ですが、今まで各企業は財務的サステナビリティ、つまり売上を伸ばしたり、利益を伸ばしたりすることが大きなドライバーだったように思います。特に上場企業は、株主に対して財務的なサステナビリティを求められてきました。
今後は、さらに社会的サステナビリティという要素が加わり、地球環境や気候変動、もしくは人材といったサステナビリティと財務的サステナビリティの両面を追わなければならなくなるでしょう。気候変動リスクも含めて、より社会的なサステナビリティに対応することが今の潮流の一つだと思います。
社会的サステナビリティに関して求められるのは、開示に加え、社会的サステナビリティへの貢献活動をしっかり示すことと感じています。グローバル企業は先行して取り組み始めていますが、日系企業はまだそういう視座に至っていないように感じています。
関氏:各企業は、サステナビリティレポートで細かいデータを開示することに注力しています。それが企業のブランドイメージや売り上げアップに繋がり、社会的に「我々はこんなことをやっている」とアピールできますからね。しかし「そもそもそのデータは正しいのか」と問われると、誰も答えられない。現在はそれが問題視され、正しいデータを選ばなければならないという意識が高まっている段階でしょう。実際、海外では開示した情報自体が間違っていたという訴訟が起きているなど、大きな潮目の変化を感じます。そこで我々は、どうやって正しいデータを出すのか、という方向に向かって進んでいます。
関 敦之氏(日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 サステナビリティ・ソフトウェア事業部 事業部長)
お客様先では「スプレッドシートでの集計作業が大変なんだ」という声を聞きますが、本質的な問題はそこではありません。人の手を介在したデータにトレーサビリティも信憑性も無いということが問題です。中立・公正にあるデロイト トーマツのような組織から開示規制やデータの第三者保証に関するガイドラインが出れば、それを機に皆さんが目を向けるようになるでしょう。今まさにそのタイミングかなと思っています。
中島(デロイト):国内トップ企業のリーダーたちはグローバルな視点で考えながら、様々な問題があるとも感じているようです。
関氏:IBMでは毎年CEOスタディを開催しています(*1)。2022年もグローバル企業のトップ3000人にご参加いただきました。このグローバルレポートで最初に掲げられた項目がサステナビリティで、各企業は「待ったなし」の優先課題と明言しています。実は、企業に影響を与える外部要因として「環境要因」は、21年のレポートでは下位だったのですが、22年のレポートでは大きい上昇が見られました。グローバルで一気に空気が変わったことが分かります。
CEOの方のお話を聞くと、「企業の行動を求める圧力が高まっている」とのこと。単に「2030年にはカーボンニュートラルを実現する」というだけではなく、そこに向かってどう行動するのかが強く求められています。特に取締役会メンバーや投資家からの圧力が強く、外部が会社を変えようとしています。
また、サステナビリティがビジネスに直結し始めているという点も挙げられます。価格が高くてもサステナビリティを謳った商品を選ぶ人が増えている。グローバルでは特にそういう傾向があります。日本企業も欧米でビジネスをしているため、そういった意識を持たないと乗り遅れます。そういう危機感も表れているのでしょう。
これまでは「外部要求に応じるために対応しているという意識」が強かったように思いますが、現在は多くのCEOが「今後5年でサステナビリティに関する投資がビジネス成果に繋がる」という認識を持っています。つまり、成長戦略として投資しようとしているのです。これに対する日本企業の温度感について、皆さんはどのように感じていいらっしゃいますか。
中島(デロイト):トップレイヤーとその他とでは意識が違うかもしれませんが、トップの方々はグローバル感度が高いと思います。ただ、強力なリーダーシップによる変革や、中間層への共感といった点では課題も抱えていらっしゃるようです。組織的にも、リーダーシップや事業戦略、コーポレートドメインや事業部門との関係、そこにおけるサスナビリティ部門やDX・情報システム部門との役割分担や壁など、課題は山積していますね。
中島 史博(有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部 ESG統合報告アドバイザリー ディレクター)
関氏:我々も、メッセージの出し方について相談されることはあります。日本は調整型の企業が多いので、難しいようですね。
三沢(デロイト):リーダーからの強いメッセージが必要です。各社のホームページを見ると、「カーボンニュートラルを○○年までに達成します」といった宣言はありますが、それに向けて具体的にどういった行動を起こすのかについては記載されていません。セミナーなどに参加する企業も「開示に向けて」というトーンが強いように感じます。
関氏:例えば日本でも、炭素税は今後さらに重くなっていくでしょう。しかし現状を見ると、そういったことを意識されているように思えません。CO2の排出を減らさなければ、排出権や炭素税などに費やす支出が増えて収益が悪くなり、商品力も下がります。そのキャッシュアウトについて、どのように考えているのでしょうか。
行動を起こす際、その基となるデータは非常に重要です。可視化ツールを使用すれば行動を促すグラフを作成することは可能ですが、そもそも可視化しているデータそのものの正確性が前提となります。
今後排出量取引を行う際には、信憑性のないデータをお金に換算できるのか疑問です。我々はそのデータの信憑性を担保する必要があると考えています。
三沢(デロイト):非常に的確なご指摘ありがとうございます。財務情報における第三者の保証が要求されるように、2028年までには、データの正確性を保証して公開する必要が出てきます。しかし現状でも、経営者や企業として誤った数字を公表するわけにはいきません。保証の形態に関わらず、正確なデータの把握は常に必須だと考えています。
三沢 新平(デロイト トーマツ リスクアドバイザリー株式会社 デジタルガバナンス マネージングディレクター)
財務データはインボイス、請求書、納品書などをエビデンスとして保管するプロセスが成立していますが、非財務データの扱いは「常態化したプロセスのひとつ」という感覚が残っていて、きちんと管理できていない。そういったボトム部分の切り替えが上手くいっていないのが日本の現状であり、データガバナンスの根底にある問題だと思います。
関氏:本当に実行しようとすると、プロセスやルール、人のバランスも変える必要があると思います。2028年にデータが整備されたとして、その後、多くの企業が「カーボンニュートラルを実現する」と宣言している2030年や2050年がやってきます。2028年を目標とすると、ニュートラルという点ではおそらくキャッシュアウトが非常に多くなってしまう。整備という意味では時間が足りず、企業としては本当に「待ったなし」です。まさにこのようなことに気づき始めているタイミングが「今」なんだと思います。
中島(デロイト):今年有価証券報告書(有報)に関する内閣府令の改正で、サステナビリティの欄ができました。それに伴い、我々はESGデータに関するサーベイの設問の中に「今年の有報にESGデータを掲載しましたか。掲載したとすると、どのようなデータですか」といった質問を入れてみました。その結果、掲載したデータは「GHG排出量Scope1〜3」、「女性管理職比率」、「男性育休取得」、「男女間賃金格差」などですが、対象年度や集計範囲にはばらつきがありました。最新の2022年度実績という回答が多かったですね。
これまで7〜8月、企業によっては9〜10月に集計して開示していた「TCFD Scope1〜3」を6月末の有報に集計して掲載し始めています。一方、「検討したものの断念した」という理由の中に「収集したが精度が不十分」、「保証が得られなかった」といった回答もありました。こういった課題に対応するソリューションとしてEnviziに注目が高まるのかもしれません。そういった観点でEnviziの内部管理、監査などの機能についてもご紹介くださいますでしょうか。
関氏:それではEnviziの概要を中心に説明させていただきます。IBM自身もEnviziを買収する前の2020年からEnviziを使用しています。
(図:日本アイ・ビー・エム株式会社様ご提供)
数多あるツールの中からEnviziを選んだ一番の理由は、透明性の高さです。ESGデータにはいろいろありますが、IBMではエネルギー領域をEnviziで管理しています。その理由は、最も対外的に透明性が求められ、各方面からの開示要求が強く、排出量取引のようにお金に絡む重要な情報がエネルギーだからです。
弊社は170カ国以上に事業展開していますが、3ヶ月に1回全拠点のデータを収集し、それを分析するというプロセスを回しています。その核となるプロセスを確立するうえで、それを支えるための最適なツールとして、Enviziを選びました。
磯部氏:歴史的な部分から説明すると、IBMはサステナビリティに対する取り組みとして1971年に環境ポリシーを発表し、1990年に最初の環境レポート、データに基づいた環境レポートを発行しました。1997年にはグローバル企業として世界で初めてISO14000の統合認証を取得しています。それまでは国、地域、事業部ごとにプロセスが個別に作成されていましたが、統合認証を取得する際に統合的な仕組みを導入したんです。
ITカンパニーとして、IT系の様々なシステムやデータベースなどを使用している中で、昨今のエネルギー領域における様々な動向を考えた上で、手組みのシステムではなくEnviziを選びました。
日本の企業の多くが、まだプロセスが確立されていない段階でスプレッドシートを使用しています。プロセスの確立とデータの透明性の保証を同時に進める必要があります。
我々もパッケージベンダーとして、「システムやツールを入れてください」と言うだけではうまくいかないと考えています。そこで、コンサルティングを含めて3年程度のロードマップを組み、プロセスの変更、システムの拡張も一緒にやっていく。そこが一番重要だと思っています。
透明性のある情報開示に関する企業の取り組みについては、外部的な環境への影響があるため、透明性や監査証跡が保証されたデータでなければ行動を促すことはできません。サステナビリティ担当部門がそれぞれの事業拠点やサプライヤーを説得する際は、当然データが必要になります。
Enviziの一番の特徴である透明性のあるデータ登録は、このような観点からも重要なポイントになると思います。
ワークフローについては、「タスクの進捗状況が取り組み開始前から取り組み中に変わった」、「データが承認された」などの経緯が自動的に取得されます。ファイルの添付記録や証跡、監査証跡のデータも自動的に記録されますし、誰が誰にどのようなメッセージを送ったか、どのように値を変えたかなど、全て履歴が自動で残る仕組みになっています。このように透明性がある形でデータを整える基盤が、20年近くシステム基盤として実装されています。
Enviziのもうひとつの特徴としてあげられるのが、単一のデータ基盤だということです。スプレッドシートのバケツリレー方式のように、ESGに関するデータをとりあえずEnviziに集めるのではなく、新しい透明性のあるデータを集めることができます。
本来は整ったデータを基に企業として脱炭素にどのように取り組むのかを考えなければならないのに、スプレッドシートだと形を整えるところに時間がかかってしまいます。サプライヤー、各事業部門、海外の拠点も含めて言語の壁がある上、精度が低い。計算結果しかわからない、データの桁が違うなどの問題があり、それらを整えることに多くの時間が使われています。
Enviziは基本的に毎月データが整った状態で自動的に収集され、その段階では人手を介する必要がありません。そのため、利用ユーザーはそのデータをしっかり分析し、打ち手を考えることに注力することができます。
中島(デロイト):データの成熟度には結構幅がありますね。例えば、今注目されているネイチャーポジティブについては、「ネイチャーの単位とは何か」、「どうやって計算するか」という問いに対する明確な答えはありません。女性管理職比率でいえば、どこから管理職なのかという認識合わせができていない。計算するロジックがあっても、その定義を揃えるのがすごく難しい。データの成熟度が低い、定義がない段階にあるのでしょう。
関氏:まずは現在どのような状況なのかを人伝てに確認するのではなく、システムに入っている状態で分析できるようにならなければなりません。その上で、精度や欠落などを調査し、必要に応じて拠点や担当者に依頼する。
これが具体的な脱炭素の最初の一歩だと思います。進んでいる部分と進んでいない部分とを比較し、「こういうところが足りていないので協力してください」とお願いするのが、データに基づいて行動変容を促すということだと思うんです。
三沢(デロイト):御社は、今後重視されるポイントとして「透明性」、「内部統制」を挙げられていますが、それらは守備範囲が広く、すぐに全てが網羅できるわけではありません。
データ収集にマニュアル入力であったり、一旦スプレッドシートでファイルを作ってインポートするというやり方を許容せざるを得なかったりするかもしれません。その場合、どうやって証跡や統制を取ればいいのか、お考えをお聞かせください。
磯部氏:その点についてはEnviziでも留意しています。これまでの実績を振り返ると、約90%のデータをシステム間の自動連携で収集ができたお客様が多いですね。これが日本の企業でも直近で目指すべき最初のゴールかと思います。
ただ、日本にはデータ専門業者というものが存在しないという事情があります。アメリカには、ユーティリティ(送電会社)系のデータを自動的に収集し、電子化して企業に渡すサービスが存在し、それらと連携してデータを収集できる仕組みになっていますからね。
三沢(デロイト):欧米ではエネルギー会社との連携を進める動きがあり、APIを提供している企業もあると聞いています。請求書のアグリゲーターが存在するだけでなく、ユーティリティ会社と他社とのAPIが用意されているようです。日本でもこういった仕組みを整えるために、データ収集業者のような企業が出てくるかもしれませんね。
関氏:Enviziは自動化を目指して設計されているため、システムと連携させるインターフェーズは柔軟になっています。しかし、現時点ではほとんどの企業は手入力で、データを流し込まなければならない状況ですね。
そうしたデータソースを明確化し、監査的に問題があることがわかれば、指摘することもできるでしょう。そうやって全体の整合性を取り、将来に向かって電子化して全部をつなぐように押し上げていくためのツールがEnviziです。
磯部氏:Enviziは基本モジュール群、拡張モジュール群、最適化モジュール群といった9つのモジュールから構成されています。それらを使い、単一のデータ基盤を作成して、データの獲得方法を確立し、抜けているところを洗い出して課題を分析し、次の段階でそれらの課題に対してアクションを取り、問題を修正します。データがしっかり整ったら、ESGの情報開示フレームワークにも対応できるのです。
(図:日本アイ・ビー・エム株式会社様ご提供)
サプライヤーからのデータも、バリューチェーンサーベイのような形で自動的に取り込みます。この段階に到達すると、具体的なデータに基づいたサステナビリティの分析基盤が整うため、電子化された請求書データの詳細な分析や、自社の工場または施設のIoTセンサーから収集されたデータによる分析が可能になります。
ESGの粒度では月単位でデータを収集しますが、例えば30分単位、1時間単位で分析を行って、どこに問題があるのか、どこに無駄があるのか、何パーセント削減が可能なのかなどの判断をサポートします。
このように拡張していくことができますし、Enviziは排出係数や情報開示フレームワークなどの最新版にも追従し、ユーザーはそれを利用して情報開示を行うことができます。
三沢(デロイト):多くの企業から、「データ収集における一番の課題は、社外に当たるバリューチェーンのデータを収集すること」という声が寄せられています。御社のSupply Chain Intelligence Suiteなどが、それらのキーになるソリューションではないかと思います。追跡しなければならない主要なデータから始めるだけでも、パワフルなツールとして活用できるのではないでしょうか。
関氏:ありがとうございます。当社は、Enviziだけではなく、もっと広範囲でソリューションラインナップを用意しています。
Enviziで管理するデータ証跡については、サプライチェーン以外にも様々なシステムから取得しています。それらのシステムがすべてEnviziに繋がり、エンドツーエンドでデータが担保される環境を提供いたします。
行動を加速させるという意味では生成AIを利用できますし、シミュレーションツールも用意しています。弊社がフルスタックで準備し、お客様の欲しいものを全て利用できる環境を提供していきます。
(対談の様子)
三沢(デロイト):内部統制に非常に力を入れているという力強いメッセージを感じました。私どもは監査法人系のファームですので、目指す方向が一致しているのではと思います。
今現在のお客様の状況を見ると、システム基盤、収集ツール、報告、それから高度化に向かってまだまだ加速していかなければなりません。我々はこれまで主に上流工程で開示に向けた取り組みを進めてきましたが、その知見などをまとめて、さらにはITインフラまでを含む新たなサービスを提供したいと考えているところです。
ESGにおいて、SEC、CSRD、ISSBなどの基準に基づく開示のサポートを多数のクライアントに提供しています。この経験を通じ、効果的な開示対応のノウハウが蓄積されています。特に、具体的な開示項目、データ収集の粒度、Scope1〜3の計算方法やデータモデルについては、ESGの全領域において完全ではありませんが、環境を中心として明確な型を持っています。
単に開示やツールがあれば良いわけではありません。データをさまざまなポイントから収集し、本部での集計や分析のプロセスはもちろん、どの部門がどのようなガバナンスを果たすべきかについても明確化する必要があります。
海外を含む各拠点や工場で、どのようなガバナンスを適用すべきか。長年かけてこのプロセスを適切に実施する方法をきちんと理解し、自社に合わせて調整していく必要があります。
日本企業においては、この部分がまだ足りないと感じられます。御社との連携のもと、開示項目やデータモデルに対応するデジタルソリューションを提供することで、日本企業の支援に貢献できると考えております。
関氏:我々は監査法人ではないので、監査という観点でどのように証跡を管理すればいいか、どういったガバナンスが必要かというところはわかりません。しかし、そういったノウハウを製品に取り入れていきたいと考えています。そうすればお客様はスムーズに実現に向けた行動に移せますし、我々もITの観点でお客様をサポートできます。そういう関係を築いていきたいという思いがあります。
中島(デロイト):現在の導入実績は海外が多いということですが、日本企業の検討状況や、現状を打破していくにあたっての課題について教えてください。
関氏:日本市場ではRFP(Request for Proposal:提案リクエスト)が増加しています。これまではどちらかというと「スプレッドシートでの作業が大変」というご相談が多かったのですが、RFPの内容を見るとかなり内部統制にシフトしてきているように見えます。
RFPについてもトップランナーから出始めています。なので、我々はエンジニアだけでなくパートナーも大幅に増やし、多くの要求に即対応できる体制を整えています。
三沢(デロイト):我々も潮目が変わってきているということを実感しています。当法人でもCSRDなどに対応するための計画フェーズで、まずはどのような方向で進むかを検討する中、システム化の議論は後回しになりがちだったのですが、すでにその計画に着手されているお客様の中には2028年にはグローバル展開しなければならないという時間軸で考えると、そろそろシステム・データ基盤検討を開始しなければという危機感がインプットされている人が多くなってきている印象があります。
それでは最後に、日本企業に向けて、メッセージなどをお話しいただければと思います。
関氏:Enviziの支援範囲と日本企業の向かう方向は非常に近いと感じており、その認識をしっかりと持って準備を進めています。
Enviziは一過性のものではなく長期にわたって利用されるプラットフォームですので、安心してご利用いただけるように投資計画も立てています。私たちの製品は、データを全方位からエンドツーエンドできちんとカバーすることを目指しており、その観点でも安心してご利用いただけるものだと考えています。グローバル展開、特にグローバルパートナーとの連携もポイントの一つですが、これらの2点を特に強調したいと考えています。
中島・三沢(デロイト):ありがとうございました。
(左から、中島、三沢、関氏、磯部氏)
*1 CEOスタディ 2022「変革を起こす覚悟 ~トップ主導のSXが企業価値を向上させる~」日本語版を公開
(外部サイト)
コンサルティングファームおよび外資系ソフトウェア会社にて、デジタルトランスフォーメーション戦略、ビジネスモデル設計、デジタルマニュファクチャリング構想・設計、スマートファクトリー構想・設計、温室効果ガス(GHG)排出量削減を中心としたサステナビリティ戦略などをテーマに、自動車業界および製造業のお客様を中心にビジネス戦略を支えるDXコンサルティング業務に幅広く従事。 デロイト トーマツ グループに入社後は、デジタルガバナンスのマネージングダイレクターとして、自動車・製造業向けに複雑化・不安定化が増すサプライチェーンxサステナビリティxデジタル領域のリスクアドバイザリー関連サービスを提供。
外資系大手コンサルティング会社、サステナビリティコンサルティング会社を経て現職。サステナビリティ経営や脱炭素戦略の策定、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)対応及び気候変動シナリオ分析などに従事。