Posted: 03 Dec. 2024 5 min. read

海外拠点の経理・財務業務、きちんと管理できていますか?―潜む「コミュニケーション問題」とその解決策

経理・財務部門が知っておきたい、会計ソフト・システム最新事情【第1回】

電子帳簿が当たり前の時代にあって、今や数えきれないほど存在する会計ソフトや会計システム。あなたは使いこなせていますか?

会社の規模や用途に応じて、ほしい機能はさまざま。そもそも導入時には何を基準にしたらよいのか……。数はあれども、適切な会計ソフト・システムを使いこなせているかは別問題。どうすれば最適なツールを選ぶことができ、業務をより円滑に進めていくことができるのか。

本コラムでは、経理・財務業務に関する豊富な知見を有するデロイト トーマツ グループのプロフェッショナルが、企業が経理・財務分野で抱える課題を、会計ソフト・システムの観点から解説。さらに会計ソフト・システムの有効な活用法や課題解決策を提案します。

第1回は、海外子会社や外国人スタッフとのミスコミュニケーションが発生する理由や、テクノロジーを活用した解消法について解説します。

放置すれば大損失!?グローバル経理・財務業務であってはならないミスコミュニケーション

グローバル展開する企業において、海外拠点との円滑な業務の推進は極めて重要です。しかし、多くの企業ではコミュニケーションの難しさに直面しているのが実情です。言語の違い、文化の違い、ニュアンスの違い……。さまざまなギャップに苦労されている方は少なくないのではないでしょうか。

グループ会社のお金を管理する経理・財務部門においてはそうしたギャップを埋めることがことさら重要ですが、特に多く見受けられるのは、日本本社と海外の現地子会社スタッフとの間で、会計上の疑問点や指示が正確に伝わらないケースです。具体的には、以下のような例が挙げられます。

  • 海外現地子会社から送られてきた財務・会計レポートに疑問点があり問い合わせをしたところ、回答は送られてこず、修正した会計データとレポートだけ送られてきた。結果として原因が分からないままとなった。
  • 海外現地子会社がスケジュールを守れず、子会社情報の取得期限をいつも超えてしまう。結果、連結決算業務が遅れ、監査法人から「このままでは監査を実施できない」と言われる。

やり取りの過程で、指示した以上に帳簿が修正されるといった誤解も少なくありません。こうしたミスコミュニケーションによって発生する金銭や時間のロスが蓄積されれば、企業にとっては大ダメージにつながる可能性があります。今日を機に、解決への糸口を探っていきましょう。

 

なぜ問題は起きるのか?ミスコミュニケーションが発生する2つの大きな理由

グローバル経理・財務業務におけるミスコミュニケーションは致命的……。そう分かっていながらも、なぜ上記のような問題が発生してしまうのでしょうか。主な原因として、以下の2つが挙げられます。

① 日本本社のスタッフが、共通言語である英語または現地語に不慣れなため、明確な意思の疎通ができていない。

② 現地スタッフが本社の指示を誤解し、意図しない修正が行われてしまう。

多くの企業の経理・財務業務の課題解決をリードしてきたデロイト トーマツ グループが実感しているのは、日本本社と海外現地の間で発生する問題の根源には、双方の言語習得の未熟さと、指示にかける時間の不足があるということです。本社と現地が異なるフォーマットを使用して業務に従事している場合に、上記のような課題が発生しやすくなる傾向も見受けられます。

 

頼りになるのは「複数言語対応」の機能

こうした問題を解消するために、どのようなアクションが必要なのか。ここからは、会計システム・ソフトを通じた解決策を考えます。

最も効果的なのは、複数言語に対応した会計システム・ソフトの活用です。昨今、表示言語を日本語から現地語に切り替えられるクラウド会計システム・ソフトが多く登場しています。日本本社と現地スタッフがそれぞれ自分たちの使い慣れた言語で会計業務を行うことで、コミュニケーションによる誤解の減少が期待できます。

またクラウド型システムの特徴として、同じタイミングでの会計処理や、限られた人間のみアクセス可能なセキュリティ機能等も挙げられます。日本本社側で日本語から英語、英語から現地語に翻訳したり、海外拠点で現地語から英語、英語から日本語と順を追って行っていた業務にかかる膨大な時間も大幅に短縮することができるため、業務の効率化に大いに寄与する機能と言ってよいでしょう。

とはいえ、こうした便利な会計システム・ソフトを活用したいと思っても、導入や入れ替えにかかる時間やコストが大きなものになることも予想されます。会計システム・ソフトの提供企業の多くは、体験版を用意しています。まずはそれを使ってみて、自社の業務に適した運用が可能か、実際にどのくらいのコストと時間を短縮することが可能か、見極めるところから始めてみてはいかがでしょうか。

 

デロイト トーマツは会計システム・ソフト「Universal Business Cloud 会計」を提供します

デロイト トーマツは、複数言語に対応したフル・クラウド型の会計システム・ソフト「Universal Business Cloud 会計」を提供し、企業のグローバル経理・財務業務をサポートします。この会計システム・ソフトは、複数の言語や通貨、地域、会計基準に対応しており、外貨建取引や複数帳簿の管理を効率化することが可能です。さらに、強力な統制機能や操作履歴管理が可能で、経理・財務業務を安全かつスムーズに行えるよう設計されています。デロイト トーマツが提供する「経理クラウドサービス」内でも使用しています。また同サービスを通じて、経理人材のリソースや専門性の不足といった課題の解決にも寄与します。

詳細は「Universal Business Cloud会計(経理クラウドサービス)」をご覧ください。

 

プロフェッショナル

藤原 修/Osamu Fujiwara

藤原 修/Osamu Fujiwara

デロイト トーマツ プロダクト&テクノロジー株式会社 代表取締役社長

1989年に会計ソフト会社に入社後、財務会計をはじめ、給与計算、販売・仕入・在庫管理、顧客管理などの中小企業市場に向けた業務用パッケージを開発。 製品開発リーダーとして会計ソフトを日本を代表するソフトウェアプロダクトに育て上げた後、米系ビジネスソフトウェア会社からのMBOを経てマネジメントに参画。経営陣としてMBOに貢献するとともに、製品開発・品質保証の責任者としてその後の同社の発展に寄与した。 2008年6月にファッズ株式会社(現・デロイト トーマツ プロダクト&テクノロジー株式会社)を開発者達と設立し代表取締役社長となる。企業向けERPパッケージソフトウェア会社でのソフトウェア開発支援と自社業務パッケージ製品の開発及び販売を行う事業を展開する。2022年3月にデロイト トーマツ グループに参画後、現在は有限責任監査法人トーマツでのCaaSデジタルアセット開発責任者としての任に当たっている。

服部 邦洋/Kunihiro Hattori

服部 邦洋/Kunihiro Hattori

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー パートナー

都市銀行を経て、監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ、以下トーマツ)に入社。トーマツおよび米国デロイトコンサルティングLLPにて金融・人事コンサルティング、経営コンサルティングに従事。 ビジネスアナリティクスの担当パートナーとしてデータガバナンス、データ分析コンサルティング業務を多数実施。そのほか、アナリティクス、IoT、AIを活用した業務改善や新規事業設立支援、ビジネスモデル提案など技術を活用した経営コンサルティング業務に従事している。また、テレマティクスを活用した事業の立ち上げなど、IoTサービス事業を展開している。米国公認会計士、McGill大学MBA。