調査レポート

不透明な時代の中でZ・ミレニアル世代が求めるものは「安心」?

2022年 デロイト Z・ミレニアル世代年次調査日本版 予測不可能な未来を見据えるZ・ミレニアル世代のキーワード

2022年度のZ・ミレニアル世代年次調査は、グローバルでは欧州を中心にCOVID‐19の感染が再拡大していた一方、日本では新規感染者数が小康していた2021年11月~2022年1月に実施されました。本年の調査ではZ世代の回答者数を加増して焦点を当てながら、パンデミックやそれに伴う経済・社会の不透明感がZ・ミレニアル世代の日常生活や社会観、就業・勤続意識にもたらした影響を分析し、日々の生活に懸念を抱えながらも社会や地球環境のために試行錯誤する姿を浮かび上がらせました。

本年で11回目となるZ・ミレニアル世代年次調査は、世界各国のZ・ミレニアル世代約23,220名を対象として2021年11~2022年1月に実施されました。Z世代の最高齢が27歳となる本年は、Z世代の消費者・労働者としての影響力がますます大きくなる現状を踏まえ、当該世代の調査対象者数を拡大しました。本稿では主な調査結果をご紹介するとともに、人事・組織課題の側面からの解釈と施策に対する示唆を提示します。

主な調査結果

■生活費に対する関心が高く、日々の家計状況に懸念が持たれている

今年の調査においてはグローバル・日本ともに30%近いZ・ミレニアル世代が最大の関心事として“生活費”を挙げており、世界的に日々の家計状況に対して懸念が持たれていることが分かります(図1)。

最大の関心事
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より直接的に家計の状況や経済的余裕について尋ねた設問の回答状況を見ても、「日々の出費を賄い切れない」と回答したZ・ミレニアル世代の割合はグローバルでは50%近く、日本でも30%を超えています。「経済的に余裕がない」と回答した割合については各群で30%近くであり、家計に不安を抱えているZ・ミレニアル世代が少なくないことが伺えます(図2)。

家計の状況・経済的余裕
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■今後の経済見通しについても悲観的な見方が強く、貧富の差とともに将来に対する悲観・楽観が二極化

今後12か月間の経済見通しをみると、グローバルのZ・ミレニアル世代では昨年に引き続き「悪化する」との見方が優勢となりました。一方日本ではZ世代の43%、ミレニアル世代の38%が「変わらない」と回答しており、コロナ禍の最中で悲観的な経済見通しが強まっていた昨年から、未だ景気回復の道筋が見えていないと受け止められています(図3)。

今後12か月の経済見通し
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また、グローバルのZ・ミレニアル世代の70%近く、日本の同世代では50%近くが自国における経済的な格差の拡大を認識しており(図4)、定年退職時の経済的余裕について尋ねた設問において、グローバルのZ世代では26%、ミレニアル世代では31%、一方の日本のZ世代は34%、ミレニアル世代では38%が「余裕なし」と回答しており、特に日本においては「余裕なし」と答えたZ・ミレニアル世代の割合が「余裕あり」を上回っています。現在から将来にかけて経済見通しの明暗が分かれており、Z・ミレニアル世代という若年層において経済的な二極化が進んでいる可能性があります(図5)。

貧富の差の拡大に関する認識
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定年退職時の経済的余裕
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■サステナビリティに対する危機意識は世界的に高まるも、日本において個人の行動実践は未だ途上

本調査において「世界が気候変動に対応する限界に達している」と認識するZ・ミレニアル世代の割合はグローバルで見ると70%を超えており、日本においてもZ世代で58%、ミレニアル世代では60%に達しています。環境問題に対する危機意識は世界的に共有されており、この世代のサステナビリティへの関心が高いことが伺えます(図6)。

気候変動に対する危機意識
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一方で実際に環境のためにどのような行動がなされているかに着目すると、日本のZ・ミレニアル世代が環境負荷を削減するために各行動を実施している割合はグローバルの同世代に比べて低く(図7)、日本では未だ環境問題に対する個人の行動実践は普及途上であることが示されました。

環境負荷を削減するために各行動を実施している割合
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■企業へのロイヤリティは本年も低水準にとどまっているがZ世代では反動的に上昇

経年で2年以内の離職意向を見ると、2020年以降は経済成長の鈍化や不安定な社会情勢を主な理由として低い水準にとどまっていました。本年の2年以内離職意向はグローバルのZ・ミレニアル世代、日本のミレニアル世代においては昨年を下回っており、未だ経済回復の道筋が見えていないとの悲観的な見通しが影響していると考えられます。一方で日本のZ世代においては反動的に2年以内の離職意向は高まっており、日本のZ世代特有の価値判断やコロナ禍における従業員体験が彼らの離職意向を高めている可能性があります (図8)。

2年内離職意向の推移
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■就業、および離職・勤続の意思決定において重視される要素は地域・世代により変動

就業中のZ・ミレニアル世代が現在の勤務先を選んだ理由に注目すると、グローバルでは“学習・能力開発の機会“、“成長機会“といった個人の成長機会につながる要素が相対的に重視され、一方で日本では”働き甲斐”や”職場のカルチャー“といった職場環境に関する観点を重視する傾向があります (図9-10)。

Z世代・ミレニアル世代の現在の勤め先を選んだ理由(Z世代)
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Z世代・ミレニアル世代の現在の勤め先を選んだ理由(ミレニアル世代)
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また、5年以上の勤続意向のある群(高ロイヤリティ群)と2年以内に離職する意向のある群(低ロイヤリティ群)の間で職場満足度を比較したところ、グローバル・日本の間で勤続・離職の意向を左右する観点の違いが明確となりました。グローバルのZ・ミレニアル世代においては、2つの回答者群の職場満足度は”ワークライフバランス”や”報酬”といった特定の観点で変動することはなく、特にZ世代においては2つの群の間で職場満足度のギャップは決して大きくありません(図11)。

5年以上勤続意向群・2年以内離職意向群の職場満足度(グローバル)
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これに対して、日本のZ・ミレニアル世代では高ロイヤリティ群・低ロイヤリティ群の間で、明確に満足度に差が出る観点が存在します。具体的にはZ世代においては”従業員ファーストな組織風土”、”サステナビリティ”、”上長の指導・成長機会”、ミレニアル世代においては”帰属意識”、“学習機会”、“ストレスへのサポート”といった観点で2つの回答者群の満足度が大きく異なります(図12)。グローバルのZ・ミレニアル世代に対し、日本においては世代ごとに“組織に期待する着眼点”が明確であるという特徴が見られ、これらは各世代の人材リテンションを考える上で注目すべき点といえます。

5年以上勤続意向群・2年以内離職意向群の職場満足度(日本)
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■リモートワークは生活にポジティブな影響をもたらす一方で、最適な勤務形態ではない可能性が高い

コロナ禍に対応する勤務形態として多くの企業でリモートワークの採用が広まりましたが、このワークスタイルの変化はZ・ミレニアル世代にどのように受け止められたのでしょうか。本調査においてリモートワークによる生活の変化を尋ねたところ、グローバル・日本ともに自由時間の増加だけでなく、”節約“という経済的なメリットも同時に見出されていることが分かりました(図13)。

リモートワークによる生活の変化
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しかしながら、リモートワークには個人の生活の質に資する面がある一方で、最適な勤務形態とは限らない可能性があります。今年度の調査で希望する勤務形態について尋ねたところ、100%のリモートワークを希望するZ・ミレニアル世代はグローバル・日本ともに少なく、より希望が集まったのは出社・リモートを組み合わせた“ハイブリッドワーク“でした(図14)。この背景には、異なる場所で働く従業員同士のコミュニケーションの難しさや、職場の対人交流が減少することによるモチベーション低下といったリモートワークならではのチャレンジが存在すると考えられます。

希望する勤務形態
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ハイライト

今回の調査からは、日本のZ・ミレニアル世代が不安定な経済・社会情勢の中で「経済性」への関心を高めながら、サステナビリティに対する向き合い方や組織への見定め方を試行錯誤し、自身にとって最適な働き方・ライフスタイルを模索していることが伺えます。人材としてのZ・ミレニアル世代に向き合う企業は、彼らが現在から将来にかけての不安を抱きながら日々の意思決定を行っていることを認識するとともに、働く上での「安心」に寄与する施策を実現していくことが求められます(図15)。

解釈と提言
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解説者紹介:

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
ディレクター 澤田 修一

デロイト トーマツ コーポレートソリューション合同会社
シニアアソシエイト 渋谷 拓磨

※所属・役職は執筆時点の情報です。

 

本レポートはDeloitte Globalが発表した内容をもとに、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社が翻訳・加筆したものです。和訳版と原文(英語)に差異が発生した場合には、原文を優先します。

デロイトのミレニアル年次調査について

デロイトが2021年11月~2022年4月に世界46 カ国14,808人の1995年~2002年生まれのZ世代、8,412人の1983年~1994年生まれのミレニアル世代に対して行った調査。

調査形式

:Webアンケート方式

調査時期

:2021年11~2022年1月

調査対象

:23,220名(内、国内回答者は801名)

 

グローバルのレポート(英文)はこちらをご参照ください。

グローバルレポートの日本語版は9月頃に掲載予定です

過去のミレニアル年次調査

2021

2021年の調査は、世界でも日本でもCOVID-19(新型コロナウイルス)の感染がまだ拡大傾向にあった2021年1月~2月に実施し、パンデミックの同世代への日常生活や社会観、また就業意識における影響を分析しています。今回の調査では、COVID-19の影響を受け、ミレニアル・Z世代が将来に対する悲観的観測を強め、「柔軟性・適応性」を持って乗り越えようとする姿が浮き彫りになりました。

2021年 デロイト ミレニアル年次調査を読む
 

2020

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大以前(2019年末)に定点調査(第一次調査)を実施し、その後、世界的パンデミックの影響を把握するために、追加調査を2020年4月~5月に実施しました。今回の調査では、過去調査では増加傾向にあった離職意向が低下に転じ、COVID-19に対する企業の対応についても、概ねポジティブに評価する姿が浮かび上がりました。

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2019

日本のミレニアル世代の約半数が2年以内の離職を見込み、日本の離職意向はグローバル水準に並びました。一方、雇用形態としては企業への所属を望み、4割弱が第四次産業革命に向けた準備に最も責任があるのは企業だと回答しています。

≫ 2019年 デロイト ミレニアル年次調査を読む
 

2018

第四次産業革命の進展によって、労働の本質が変化している中、多くのミレニアル世代が「安心感」を求めています。また、彼らは「企業は収益と同時に、社会や環境に対してよい影響を与えるべきだ」と考えている一方、現実には企業は収益をあげることを最優先としており、そのギャップによりミレニアル世代は所属組織に帰属意識を持てないでいます。

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2017

このレポートは柔軟な勤務形態と業務の自動化の進展がいかにミレニアル世代の姿勢とパフォーマンスに影響を与えるかを説明しつつ、従業員の目的意識とリテンションとの関係性を改めて示しています。

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2016

ミレニアル世代は、労働人口に一層大きな割合を占めるようになり、上級職に就く人も増えています。もはや未来のリーダーではなく、次第に今日のリーダーになってきていることもあり、彼らのビジネスの手法や姿勢に対する見解は、単なる学術的な関心を超えるものとなっています。

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