調査レポート

2024年 デロイトZ・ミレニアル世代年次調査日本版

生成AIへのレディネスとパーパスの浸透は未だ途上、日本のZ・ミレニアル世代の現在

2024年の日本版作成においては、日本とグローバル全体の比較に加えて、主要7か国(日本、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、中国)とのデータ比較を行いました。その結果、日本のZ・ミレニアル世代は、生成AIの利用率や学習意向が調査参加国44か国の中で最低レベルであり、企業が打ち出すパーパスの重要性の認識や実感頻度についても、グローバルの同世代と比べてギャップが存在することもわかりました。

国際的に低い水準にある日本のZ・ミレニアル世代の生成AIレディネス

日本のZ・ミレニアル世代の職場における生成AIの利用率は、Z世代で27.7%、ミレニアル世代で18.1%であり、両世代ともに調査参加国44か国の中で最も低い結果となりました。また「生成AI関連の研修を受講済み/1年以内に受講予定」と回答した割合は、日本はグローバルの半分以下であり、生成AIに関する学習意向に大きなギャップが見られました(Z世代:日本24.7% グローバル54.9%、ミレニアル世代:日本15.6% グローバル51.1%)。

さらに生成AIによる職場の変化として、「生成AIによって、若い世代は就職するのが難しくなる」、「生成AI主導の自動化により、仕事がなくなる」といった個人のキャリアへのネガティブな影響を予想する意見も、日本のZ・ミレニアル世代はグローバルに比べて弱い傾向にあります。総じて日本のZ・ミレニアル世代の生成AIに関する学習意向やキャリアへのインパクト認識は、グローバルに比べて遅れている現状がうかがえます。

また、「自身の勤務先は生成AIがもたらす変化に備えている」との意見も、日本においてはグローバルに比べて低調に留まっています(Z世代:日本29.4% グローバル50.4%、ミレニアル世代:日本17.4% グローバル46.1%)。生成AIは世界中の企業で導入が進んでいますが、これらの日本とグローバルのZ・ミレニアル世代の認識のギャップは、日本においては未だ従業員の意識転換にまでは至っていないことを示唆しています。

“パーパスの浸透“においてもグローバルと日本において大きなギャップが存在

今回の調査からは”パーパスの浸透”においても日本と主要国の間でギャップがあることが明らかになりました。「企業に解決に向けて取り組んでほしい社会課題」については、総じてグローバルのZ・ミレニアル世代の方が日本の同世代よりも、解決に向けた何等かの取り組みを企業に対して期待しています。最大の関心事についてもグローバルでは「失業」、「気候変動」、「メンタルヘルス」などの社会問題が上位に挙がるのに対し、日本では「富と所得の不平等」、「出産・育児」、「経済成長」といった個人の経済的安定と将来設計に関わるものが関心を集めました。日本のZ・ミレニアル世代の特徴として、社会課題の解決に向けた企業への期待が弱く、そもそも社会課題への関心が低い傾向があります。

この違いに関連して、企業が社会に対する貢献・価値提供の在り方を言語化した“パーパス”の認識についても、日本とグローバルの各世代の傾向は異なります。「職場のパーパス実感は職場満足度やウェルビーイングに非常に重要だ」との意見に同意する回答者の割合に目を向けると、グローバルにおいてはZ世代で37.1%、ミレニアル世代で43.0%であるのに対し、日本はZ世代で19.8%、ミレニアル世代で13.9%とグローバルの半分程度にとどまりました。「職場でパーパスを感じることがある」と答えた回答者の割合についても、両世代でグローバルの同世代と20ポイント近いギャップが見られます(Z世代:日本61.6% グローバル80.9%、ミレニアル世代:日本61.5% グローバル82.1%)。

実質賃金が伸び悩み、少子高齢化が進む中で人生を歩んできた日本のZ・ミレニアル世代は、多くの企業の“パーパス”で謳われる社会への価値提供よりも、個人の経済的な不安に寄り添ったメッセージが発されることを望んでいる可能性があります。

調査概要

調査形式:Webアンケート方式、および一部対象者に定性インタビュー
調査時期:2023年11月~2024年3月
調査対象:44か国 22,841名(うち日本802名:Z世代501名、ミレニアル世代301名)
※本調査では、Z世代は1995年1月から2005年12月生まれ、ミレニアル世代は1983年1月から1994年12月生まれとして定義しています。

 

解説者紹介:

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
パートナー 小野隆
シニアアソシエイト 渋谷拓磨

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