調査レポート

岐路に立つAI

信頼構築がAI活用拡大への道

アジアパシフィックにおける人工知能(AI)の急速な普及は、ビジネスのあり方を大きく変え、革新と成長のための画期的な機会を提供しています。しかし、AIが意思決定や業務の中核を担うようになるにつれ、信頼性、責任、ガバナンスに関する課題がますます重要になっています。最新の調査レポートでは、Deloitte Access EconomicsとDeloitte Asia Pacific AI Instituteが共同で、経営層や技術リーダーに対し、「信頼できるAI」を推進するための具体的なガイダンスを提供しています。このレポートは、アジアパシフィックの13カ国における約900名のシニアリーダーの視点を基に、DeloitteのAIガバナンス成熟度インデックスを活用し、実践的なAIガバナンスのあり方を探っています。

※本レポートはDeloitte Asia Pacificで公開されたレポートAI at a crossroads を翻訳したものです。和訳版と原文(英語)に差異が発生した場合には、原文を優先します。

 

2030年までにアジアパシフィックでのAI投資額が5倍増の1,170億ドルに達すると予測される中、調査結果は明確なメッセージを伝えています。組織は、AIの潜在能力を責任を持って引き出すために、堅固なガバナンスフレームワークを確立することが急務であるということです。

AIガバナンスの企業の現状に関するレポートでは、以下の重要な洞察と推奨事項が示されています。

  • AIガバナンスのフレームワークが成熟している企業では、従業員のAI活用率が28%増加し、収益成長も約5%高くなると報告されています。しかし、調査対象企業の91%は「基本的」または「道半ば」のガバナンス構造にとどまっており、AIガバナンスの実践には大幅な改善が必要です。
  • AI活用に伴う最も差し迫ったリスクとして、セキュリティの脆弱性(86%)、監視の問題(83%)、プライバシーの問題(83%)が挙げられています。過去の会計年度において、企業の4分の1がAIに関連するインシデント(例:データ漏洩)の増加を経験しており、また、40%の企業は職場のAI利用について質問したり、インシデントを報告したりできるシステムを持っていません。
  • 企業の45%は、AIガバナンスの強化が顧客からのレピュテーションを向上させたと述べています。また、従業員の58%は、責任を持ってAIを利用するためのスキルと能力を持っています。

レポートでは、AIガバナンスを改善するために企業が取るべき影響力の高い4つのアクションを以下のように示されています:

  1. ガバナンス強化の優先度を上げ、AIからのリターンを実現する:最新の基準を常に把握することを含め、ポリシーと原則、手順と統制などAIガバナンスを継続的に評価します。
  2. 広範なAI関連ステークホルダーを認識して活用する:開発者、運用者、規制当局、顧客を含む広範なAI関連ステークホルダーを理解し、AIソリューションのライフサイクル全般にわたって定期的な監査を行います。
  3. リスク回避ではなくリスク管理を構築する:従業員にリスクの特定・評価・管理するスキルと能力を開発させ、AIガバナンス成熟度インデックスの「人材とスキル」の柱に焦点を当てます。
  4. 組織全体でコミュニケーションを図り、AIによるトランスフォーメーションに備える:AI戦略や、事業に対するメリットとリスクについて透明性を保ち、トレーニングを提供し、チームにリスキリングします。具体的なアクションには、シナリオプランニング、ナラティブの策定、危機演習が含まれます。
    これらは、企業がAIガバナンスの成熟度を向上させ、リスクを効果的に管理し、競争上の優位性を確立するための具体的な行動指針となります。

お役に立ちましたか?