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AIを活用した不正検知モデル
AI・データドリブンによる監査の高度化で不正リスク低減とガバナンス向上に貢献
近年、企業による会計不正が増加しており、コロナ禍による業績不振も勘案すると、今後もこの傾向は続くと考えられます。会計業務における不正の発生は、企業に大きな損失をもたらすものであり、いかに不正リスクを抑えるかが重要になっています。トーマツでは、AIを活用した新たな不正検知モデルを開発しています。さらに、仕訳分析モデルや異常検知モデル(2017年8月特許取得済)と組み合わせて、不正リスク評価から、対応手続の立案まで横断的にAI・アナリティクスを活用するアプローチを確立しています。トーマツは、不正検知モデルの開発などAIの活用を通じて、AI・データドリブンによる監査の高度化を目指します。
不適切会計の増加とリスクの抑制
近年、企業による会計不正事案が後を絶ちません。2015年以降、不適切会計が明らかになった企業の数は増加しており、コロナ禍による業績不振も勘案すると、今後もこの傾向は続くと考えられます。こうした不正の発生は、企業に大きな損失をもたらすものであり、いかに不正リスクを抑えるかが急務の課題であると言えます。
AIを活用した新たな不正検知モデル
この課題を解決するために、トーマツではAIを活用した新たな不正検知モデルの導入をしています。
これまでは、監査人は監査先の財務データに対し、異常とみなす基準値や予算との比較、前期からの趨勢把握などによって、監査で重点的にフォローするグループ会社や勘定科目を選別していました。新たな不正検知モデルでは、上場企業の過去の不正の傾向をAI・機械学習モデルに学習させており、監査先から入手した財務データを投入することで、予測モデルによる不正スコアの計算が実施され、不正リスクが高い会社、勘定科目及び財務指標を識別できるようになります。これにより監査人は不正リスクの分析を効率的に行うとともに、従来は識別しえなかった不正パターンの識別が可能となっており、不正検知モデルで検知された不正の兆候に基づいて監査人が監査先企業との議論をより深化させることで企業のガバナンス向上に貢献します。
仕訳分析モデル・異常検知モデルとの組み合わせによる網羅的な不正対策・不正対応
不正検知モデルでは、予測性能に優れる勾配ブースティング技術を採用し、2005年以降に公表された有価証券報告書および訂正報告書に含まれる財務諸表と為替レート、物価指数などの市況データをAIに学習させて、複数の財務指標から不正企業と正常企業との相違性を見出し、その結果を不正企業との近似度として0~1の間でスコアリングします。また、どの指標がスコアに影響しているのか、会社別の各指標の時系列推移や、指標値の算定に使用した勘定科目の実数値を詳細に確認することができるため、AIが算出したスコアがなぜ高いのかを説明することが可能です※1。あわせて、不正リスクが高いと評価された企業と類似した不正シナリオを持つ過去の不正企業を参照できる仕組みも構築しています。
※1 2023年1月 特許取得(第7216854号)
これにより、従前から活用してきた仕訳分析モデルや異常検知モデルと組み合わせて、より広範な観点から不正の兆候を把握するリスク評価から、不正リスクの高い仕訳や取引に対して個別・詳細に分析を行い、リスク対応手続の立案まで横断的にAI・アナリティクスを活用するアプローチを確立しました。
不正検知モデルの活用
不正検知モデルは利用を拡大しており、被監査会社から「客観的な視点で検討できる点に期待している」「小規模な会社のスコアも確認できるため管理強化に繋げられる」等のフィードバックをいただています。今後、不正検知モデルの更なる性能向上に向けて、監査先の同意を得た場合には当該監査先の財務情報をモデルの学習に用いることでモデルの精度を更に向上させることや、市況データのバリエーションを増やすことで、特に海外子会社に対するリスク評価の精度向上を予定しています。
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