調査レポート

今治.夢スポーツが生み出す社会的インパクトの可視化 2022

サッカーを通じて社会創りに取り組む今治.夢スポーツのSROI分析レポート

近年、スポーツへの投資は社会的課題解決においても大きな意味を持つようになっています。本レポートは、サッカーを通じて社会創りに取り組む株式会社今治.夢スポーツの事例を通じ、社会的投資収益率(”Social Return on Investment” 以下、「SROI」という。)を分析することで、社会的価値の可視化・定量化を行いました。昨年度の分析に加え、アンケート調査やSNSデータの分析を採用することで、より広い範囲における社会的価値の可視化・定量化が可能となりました。

2022年度における分析手法の概要

スポーツビジネスの効果の可視化を狙い、昨年度(2021年度)実施した「今治.夢スポーツの事業に関するSROI分析」においては、今治.夢スポーツが持つデータを基に分析を行い、各事業においてどのような効果があったかを定量化することに成功した。(詳細レポートはこちら

一方、昨年度は、分析時点で取得可能なデータを基に分析したことから、可視化可能な範囲は限定的であり、今治.夢スポーツの活動による価値のすべてが可視化できたとは言えなかった。

アウトカムは発現する時期に応じて「短期(1-2年)」「中期(3-5年)」「長期(5年~)」に分けられ、一般的に、短期アウトカムはデータがとりやすい一方でインパクトは小さく、長期アウトカムはデータがとりにくい一方でインパクトは大きいという関係にある。昨年度調査で定量化した価値の多くは短期アウトカムに属していた。本年度の調査においては、昨年度の調査では可視化が難しかった中長期アウトカムを中心に、アンケート分析や、SNSデータの調査による可視化を実施した。

アンケート分析に関しては、今治.夢スポーツの協力を得て、FC今治のファンに対してアンケートを実施し、380名程度の回答を得た。またSNSデータに関しては、FC今治の協力も得て、TwitterとFacebookを対象に、評価対象期間のデータを取得し、各活動における投稿に対するリプライ・引用RTの内容を分析した。

SROI分析結果サマリー

今治.夢スポーツは「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」ことを企業理念として掲げ、サッカークラブ運営事業、育成・普及事業、ホームタウン活動、アースランド・野外教育・その他の活動を実施している。

本件では、昨年度のロジックモデルを用いてアウトカムを定量化した。

今治.夢スポーツのアウトカム
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サッカークラブ運営事業に関しては、現時点では分析に必要なデータが取得できていないなどの理由から、パートナーアクティベションや、レディースチーム運営などの活動は評価対象から除外している。新型コロナウイルスの影響からの回復により2022年の現地観戦者数は増加に転じ、SROIは2倍近い結果となっている。

育成・普及事業においても、巡回サッカー教室やアカデミー生・スクール生との活動が評価対象の中心で、OKADA METHODを通じた指導者育成活動は評価対象外ながらも、 SROIは2.6倍という結果となった。

ホームタウン活動においては、他事業と比較して、クラブとして割ける予算規模が小さいものの、 SROIは3.5倍と投資効率は他事業よりも大きく、今後予算規模を拡大することができれば、より大きな効果が見込める領域であることを示す結果となっている。

アースランド・野外教育などに関しては、新型コロナの影響に加え、現時点では分析に必要なデータが取得できていないなどの理由から、「アースマルシェ」や「アースランド・野外教育に関するSNS発信」を始めとした一部の活動を分析対象外としたにもかかわらず、SROIは2.1倍となっている。

本分析では、アンケートやSNS分析を用いて、今治.夢スポーツの活動による中長期的なアウトカムの一部も測定範囲として分析を実施した。今後の展望として、アウトカムの直接的な効果に留まらない間接的、波及的な効果についての検討や、分析対象とする活動の拡大、発展途上の事業の成長によって、スポーツビジネスの持つ潜在的・顕在的価値をさらに見出すことができると考えられる。

留意事項

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