調査レポート

ファミリーエンタープライズの転機:オーナーの喪失への備え

事業継承に備える遺産相続のための評価とプランニング

ファミリービジネスが進化する過程のどこかで、創業者や現リーダーの喪失は回避することはできません。それが予期せずに訪れたとしても事前に備えることはできます。レガシーアセスメントを通じて適切な計画を立てることは、事業継続に向けたファミリーおよび関連ビジネスの位置づけと準備を整え、創業者やリーダーの意思を引継ぐことを可能にします。

どのようなファミリービジネスでも、進化する過程のどこかで、創業者や現リーダーの喪失を経験しなければなりません。それが予期せずに訪れたとしても、事前に備えることはできます。レガシーアセスメントを通じて適切なプランニングを実施すれば、事業継続に向けたファミリーおよび関連ビジネスの位置づけと準備が整い、創業者やリーダーの意思を明確に理解できるようになります。

レガシーアセスメントは、それだけにとどまるものではありません。相続税を賄うための流動性の不足、ファミリービジネスを最終的に管理することになる者、慈善寄付から不意にもたらされる影響、受益者間に生じる潜在的な対立、その他ファミリービジネスの安定と財務力を確保するための関連事項等、当主の死去がもたらす連鎖的な影響を、ファミリーとビジネスの観点から理解できるように支援します。レガシーアセスメントは、より全体的な視点をもたらし、調整と展開に費やす時間的余裕がまだあるうちに、ファミリーとビジネスに意思決定を促します。結局のところ、オーナーのビジネスに対する考え方や、誰に承継して欲しいかは、時間とともに変化することが多いのです。定期的に見直しと検証を行い、アセスメントがオーナーの現在の目標や目的と一致していることを確認することが重要です。

防げるものを防げるようにする

数多くのエビデンスが、ファミリービジネスは承継に向けた準備をさらにうまくできるはずだと示唆しています。プライベートカンパニーのリーダーに対して行われた(その多くはファミリービジネス)MLR Mediaによる直近のパルス調査では、回答者の52%が承継プランに関する正式な取締役会プロセスを整備していないと回答しました。さらに、承継プランを毎年見直しているという回答者はわずか30%であることが判明しました。

このような見過ごしは深刻な影響をもたらしかねません。遺産相続プランが不首尾に終わった場合の代償を、実際の事例が物語っています。相続税の負担が受け継いだビジネスの価値を上回ったために、「意図せず相続から排除されてしまった」子どもの事例、事業を維持する気のない慈善団体に託された後にエグゼクティブが離脱し、骨抜きになったファミリービジネスの事例、さらにはこれまでに協力し合った例もない兄弟姉妹に多額の遺産管理が一任された事例など、数え上げればきりがありません。

レガシーアセスメントは、ファミリー内の重要なメンバーが亡くなったり、責任ある立場から退いたりした場合に、どのような影響が生じるかの全体像を把握することを目的としています。ファミリービジネス、そして何よりもファミリーは、これらの評価によって、ファミリーの一員を失ったことによる潜在的な影響を対処するにあたり、極めて有利な立場になります。広範で、思慮深く、組織的なプロセスによるレガシーアセスメントを実施することで、ビジネスの継続性とファミリーの財務健全性に影響を及ぼす可能性のある、知識、文書、その他重要な分野に潜むギャップを特定することができます。喪に服している期間に、急いで重要な意思決定を行う必要がなくなるとともに、熟考されたプランが整備されていることによる安心感を得ることが、レガシーアセスメントによって可能になるのです。

 

影響を受けるかもしれない人々のために

多くの富裕層ファミリーは、資産の大部分をシニア世代が所有し、ファミリーエンタープライズにおいて強い主導権を握っていることから、自分が亡くなったときに何が起こるかを心配しています。しかし、レガシーに関する潜在的な課題を注視しているファミリーオフィスのリーダーや、会社や仕事の内容について知る必要のある経営幹部のリーダーなど、ファミリーのレガシーを維持していくことに注力し、リーダーの死を乗り越えていく関係者が他にも数多く存在します。

 

軌道修正の時

重要なのは、レガシーアセスメントによって、本プロセスの事実調査と予測の段階で特定された問題に対処するために、ファミリーとファミリービジネスが取ることのできる具体的なステップを編み出すことです。Janes は、「レガシーアセスメントの第二段階で行うべきことは、どのような問題が起こりうるかをより深く理解するために、計画の中で改善が必要な側面を特定し、より深堀りすることで、ファミリーやファミリーエンタープライズが適切なソリューションを実行できるようにすること」と述べています。

相続税の負担により「相続から排除された」子どもの例では、レガシーアセスメントによって兄弟姉妹全員が公正な税負担をするように資産分配の再構築をする必要性を喚起しておけば、そのような結果を回避することができます。エグゼクティブの突然の離職によるファミリービジネスへの影響を防ぎたいのであれば、リーダーは、従業員が所定の期間は会社に留まることを奨励するために一定の金銭的インセンティブ(「特別優遇措置」など)を導入するのが良いでしょう。

ファミリー内の受託者間の対立もよくある問題ですが、客観性と協調性を備えているファミリーメンバーに財産管理を任せることで回避することができます。最後の例として、ファミリービジネスでは、繰越欠損金のような既存の租税属性を利用することで、オーナーの死去に伴い、オーナーに紐づいた税制優遇措置が喪失するのを防ぐことができます。

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ファミリーエンタープライズの転機:オーナーの喪失への備え [PDF:1.5MB]

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