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Sustainable Buildings(日本語版)

Designing, building, and operating to help create a greener future

排出量実質ゼロの追求により、エンジニアリング&コンストラクション(E&C)企業とサプライヤーは、新築・改修に伴うカーボンフットプリントの削減を迫られている。しかし、こうした構想の実現には相当の投資を伴うことになる。コストを抑えながらE&C業界の持続可能性を高めるための戦略を探る。

日本語版発行に寄せて

本レポートは、建物ライフサイクル全体での脱炭素化に向けた取り組みの潮流をエンジニアリング&コンストラクション(E&C)業界の視点から論じている。米国からの視点を前提とするレポートではあるが、日本国内におけるE&C業界の取り組みにおいても以下の2点で示唆があると考える。

① 米国と日本国内の潮流の類似性

② 建物ライフサイクル全体での脱炭素化に向けたバリューチェーン横断での取り組みの重要性

① 米国の潮流と日本国内の潮流の類似性

本レポート内では、排出削減を加速する因子として“イノベーション”や“デジタル技術”について触れている。本レポートで紹介される技術を念頭に、国内で相次いで公表される技術を見渡すと、両者同じ方向での開発が進んでいることが読み取られ、先進的な技術の開発が進んでいることがわかる。

例えば、フライアッシュ、高炉スラグ等を活用した次世代型コンクリートや外壁・ガラスでの断熱技術等があげられているが、国内においてもE&C関連業界の様々なプレーヤーで環境配慮型コンクリートの開発が進められており、実証段階へ移行しつつある。建物の断熱技術についても既存建築物へのレトロフィットすなわちリニューアルや改修を前提とするZEB化技術が相次いで発表されている。

複数の選択肢を比較検証しながら最適な案を決定するジェネレーティブデザイン技術であるオプショニアリングについても触れられているが、国内においても複数あるZEB仕様の選択肢の中からAIを活用し、最適な仕様パターンを提案していくといった試みも発表されている。

このように米国と国内で技術開発の潮流が重なっていることがわかる。それはすなわち、これらを普及させていくための課題も類似するところがあるということが想定される。

② 建物ライフサイクル全体での脱炭素化に向けたバリューチェーン横断での取り組みの重要性

本レポートでは、開発される新素材・デジタル技術の活用や、その他の排出量実質ゼロに向けた取り組みが加速するための課題や次なるアクションについても触れられている。“今後求められる動き”の章に、「企業は持続可能性を目標に掲げる建設や改修・リノベーションプロジェクトを、政策や規制、罰則、または炭素税を通じて促進し、優先することを検討すべきである。こうした取り組みには、デベロッパーや不動産会社、技術提供者を巻き込むべきである」と記載があるが、国内においても例外ではない。

国内では、政府・自治体によるZEB化を促進する法制度が議論されつつある。その一方で、E&C企業だけでなく、建築物の所有者であるデベロッパー(賃貸ビルを主とする不動産デベロッパーだけでなく、自社ビルや工場等の開発者・施主となる広義のデベロッパー)、運営を担う管理受託者、設計・施工を担う施工者・技術提供者が一丸となって、これら技術の適用を考えていく素地が整っていない状況にある。

前段で触れた環境配慮型コンクリートの活用(エンボディドカーボンの削減)や、ビルのZEB化(オペレーショナルカーボンの削減)等は、当然、これまでの新築や既存建築物の改修よりもイニシャルコストが嵩むことになる。投資の意思決定において、炭素排出の観点からのライフサイクル全体での評価(LCA)を通じて、技術導入の可否を判断する。その際には、排出削減という「守り」の観点だけではなく、建築物の環境価値向上によるビジネス貢献といった「攻め」の観点でも関係者が議論していくべきである。

こと日本においては不動産・建設業バリューチェーンにおける業種ごとの機能分化が進んでいることから、排出量実質ゼロの目標達成、建築物の環境価値向上に向けて、早期に業界を超えた検討を進めることが重要となる。本レポートがE&C業界、更には業界を超えたサステナブルな建築物の実現に向けた取り組みの一助になれば幸いである。

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