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調査レポート
Deloitte CFO Signals Japan: 2023Q1
財政環境見通しは総じて不変、不確実性は依然高水準
日本における第32回目の実施となったCFOを対象とした四半期ごとの意識調査。本調査前半では、CFOの経済環境に関する意識変化やマクロ視点での日本経済及び世界主要国のリスクシナリオについて時系列で意識調査を行い、調査時点での最新の見通しを考察しました。調査後半では、日本の独自のホットトピックとして、「ポートフォリオ経営(経営資源の適正配分)への参画」に関してお伺いしました。本ページでは、今回のサーベイ結果の中で特徴的な回答結果についてまとめています。(調査期間:2023/5/16~5/26)
目次
Deloitte CFO Signals について
Deloitte CFO Signalsは、デロイトがグローバルレベルで定期的に実施している、企業を取り巻く経済環境に関するCFOの意識調査です。毎回の調査で世界各国CFOの皆様から得られた回答結果を集約し、デロイトの専門家が考察を加え、CFOからの”Signals”として発信しています。日本で行うDeloitte CFO Signals Japanでは、「経済環境に関する調査」において、毎回グローバルで統一の設問を設定しています。それによって日本だけに限らず、グローバルレベルでCFOの動向を考察します。
2023Q1 CFO Signals Report Highlights
財政的な見通し
設問1. 財政的な見通し
各社の財政的な見通しが3ヶ月前と比べてどのように変化したかを調査した。
今回の2023Q1調査では、財政的な見通しは総じて前回から著変なく、「概して変わっていない」との回答が69%と全体の約3分の2を占めた。
調査期間の3~5月は、日本のグローバルな経済・政治情勢に大きな変動はなかった。3月の米国銀行破綻による金融不安はいったんは後退、その後米欧中銀は利上げを継続したものの経済は総じてゆるやかな拡大基調をたどった。ロシア・ウクライナ情勢や米中対立の先鋭化は継続しているものの目立った方向転換は無かった。日本経済は、コロナ制約解除による経済活動の再開やインバウンド需要の順調な拡大、そして為替市場での円安傾向により、国内経済は順調に回復した。他方、中国経済の悪化懸念や、中国など海外経済の減速による輸出の停滞が更なる成長へのハードルとなっている。CFOとして欧米の利上げを含む経済環境の変化を見極めるタイミングにあったといえる。
今後の財政環境は、米欧の利上げがインフレや経済にどう影響してくるかにかかわってこよう。デロイトでは、年後半に米国と欧州の景気は浅いリセッションに陥るとみており、この見方通りになればCFOの財政見通しもやや悪化する可能性がある。
(全文レポートより一部抜粋)
今後1年間の日本経済の注目点
設問4. 今後1年間の日本経済の注目点
今後1年間の事業展開を展望するうえで注目される日本経済の注目点を調査した。
注目点の1位は「生産コスト上昇とインフレ」、2位は「人材・労働力不足」、3位は「日本銀行の金融政策」と、いずれも前回と同じ項目が上位となった。グローバルなインフレ率は低下したとはいえ高い水準にあり、春闘のベア合意にみられるように人件費の上昇も目に見えて本格化している。企業の生産コストは依然上昇が見込まれ、企業としては販売価格引き上げの幅とタイミングについて的確な判断を迫られる環境にあるといえよう。日本銀行では4月に植田新総裁が就任、これまでのところ金融緩和政策を継続する意向を示している。とはいえ、インフレの定着やこれまでの金融政策のレビューを受けて、金融政策の正常化方向へのシフトの可能性は依然存在するといえるだろう。日本がゼロ金利を開始したのは約30年前であり、その後これまで日本企業はほぼゼロ金利以外の環境での財務運営を経験していない。日本円の金利上昇はその実現可能性はともかく、企業としては企業経営に大きな影響を及ぼすリスク要因として影響の特定や対応策を検討しておくべきであろう。
なお「フィンテック、AI活用、デジタル化」は今回は第5位だったが、生成AIの急速な実用化に鑑みれば、今後企業の重要な注目点とてさらに浮上する可能性がある。
(全文レポートより一部抜粋)
ポートフォリオマネジメントの実践状況
設問6. ポートフォリオマネジメントの実践状況
ポートフォリオマネジメントが「実践できている」と回答した企業が半数を超えた一方で、「大いに実践できている」と回答した企業はなかった。後続の設問において、成熟度が低いと認識している項目もあることや人的リソース等の課題を抱えていることを踏まえると、「実践できている」という回答が半数を超えた点は、少し意外な結果であった。
一方で、「大いに実践できている」という回答がなかった点から、多くの企業がポートフォリオマネジメントを自社戦略として掲げて取り組んではいるものの、まだ現状が最善ではなく、更なる高度化の余地があると考えていることがわかる。ポートフォリオマネジメントによって競争優位性につながる効果を創出するためには各社ともに改善の余地があると推察できる。
(全文レポートより一部抜粋)
ポートフォリオマネジメントの各プロセスの成熟度
設問7 ポートフォリオマネジメントの各プロセスの成熟度
プロセス別の成熟度では、③評価軸の設定、④評価プロセスの構築、⑤評価結果に基づくアクションの定義と実行について「よくできている」という回答が少ない結果となった。ポートフォリオマネジメントにおいては、事業を跨ぐ評価が必要になるが、個別の事業評価はできていても、事業横断での公平性の担保、専門家によるレビューまでは至っていないと推察できる。
⑥社内外への発信と合意形成は「できていない/あまりできていない」と「できている/よくできている」の回答が約半数で分かれる結果となり、他の設問と比べると「できていない/あまりできていない」の回答が多いことから、特に社外への発信という点で課題を感じている企業が多いと推察できる。
会社全体としての戦略や目指す提供価値を掲げる①~②の上流局面はできているものの、③以降のプロセスの実行局面においては体制が不十分と感じている企業が多いと言える。
(全文レポートより一部抜粋)
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デロイト トーマツ グループでは、様々な課題に直面するCFOを支え、ファイナンス組織の能力向上に寄与することを目指したサービスを展開しています。グローバルに展開するプロフェッショナルファームとして先進的な知見やネットワークの場を提供し、CFOにとっての“the Trusted Advisor"となることを目指します。詳しくは、CFOプログラム*をご確認ください。
*CFOプログラムとは、様々な課題に直面するCFOを支え、ファイナンス組織の能力向上に寄与することを目指すデロイト トーマツ グループによる包括的な取り組みです。