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調査レポート
Deloitte CFO Signals Japan: 2023Q2
財政環境見通しはやや好転、日銀金融政策やAIへの注目度が高まる
日本における第33回目の実施となったCFOを対象とした四半期ごとの意識調査。本調査前半では、CFOの経済環境に関する意識変化やマクロ視点での日本経済及び世界主要国のリスクシナリオについて時系列で意識調査を行い、調査時点での最新の見通しを考察しました。調査後半では、日本の独自のホットトピックとして、前回に引き続き「ポートフォリオ経営(経営資源の適正配分)への参画」に関してお伺いしました。本ページでは、今回のサーベイ結果の中で特徴的な回答結果についてまとめています。(調査期間:2023/8/17~8/29)
目次
Deloitte CFO Signals について
Deloitte CFO Signalsは、デロイトがグローバルレベルで定期的に実施している、企業を取り巻く経済環境に関するCFOの意識調査です。毎回の調査で世界各国CFOの皆様から得られた回答結果を集約し、デロイトの専門家が考察を加え、CFOからの”Signals”として発信しています。日本で行うDeloitte CFO Signals Japanでは、「経済環境に関する調査」において、毎回グローバルで統一の設問を設定しています。それによって日本だけに限らず、グローバルレベルでCFOの動向を考察します。
2023Q2 CFO Signals Report Highlights
財政的な見通し
設問1. 財政的な見通し
各社の財政的な見通しが3ヶ月前と比べてどのように変化したかを調査した。
今回の調査でも前回同様、財政的な見通しが「概して変わっていない」回答が60%と過半数を占めた。「大いに楽観的になった」「やや楽観的になった」回答の合計が23%と前回調査の3%から増加した一方で「大いに楽観的でなくなった」「やや楽観的でなくなった」回答の合計は14%と前回調査の28%から減少しており、全体的に見ればやや楽観度が高まった傾向にはある。
今後は、中国経済の動向、米国と欧州の金融引き締め策の経済影響、そして再び上昇を始めた原油価格など資源高とインフレ動向が財政環境のカギとなろう。さらに、日本では日本銀行が7月にイールドカーブ・コントロールの運用緩和を決定し、今後金融政策正常化も視野に入れた動きを見せていることも新たな材料だ。デロイトでは、米国経済が今後利上げの影響で来年初にかけて減速するとみており、また日本銀行は来年春にはマイナス金利政策を解除するとみている。このシナリオ通りの展開になれば、CFOの財政見通しにも下方の圧力がかかってくるだろう。
(全文レポートより一部抜粋)
今後1年間の日本経済の注目点
設問4. 今後1年間の日本経済の注目点
今後1年間の事業展開を展望するうえで注目される日本経済の注目点を調査した。
今回調査では日本経済にかかる注目点につきいくつかの変動があった。第1位の「生産コスト上昇やインフレ」は前回と同じだったが、第2位は「日本銀行の金融政策」が前回の第3位から順位を上げ、代わりに「人材・労働力不足」が2位から3位に順位を下げた。また第4位には「フィンテック・AI活用・デジタル化」が前回の5位から順位を上げた。コストや人材の問題はもはやほぼ定常的な注目点となっているが、日銀金融政策とAIが注目度を高めた点は今回調査で判明した大きな動きである。
日本銀行は7月の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロールの運用の柔軟化を決定して事実上長期金利の上昇許容幅を拡大した。日本銀行の会合声明文やその後の植田日本銀行総裁の発言からは、今後の経済とインフレの動向次第では金融政策の正常化もありうるとの示唆がなされた。のべ20年以上にわたるゼロ金利・マイナス金利政策からの脱却は、企業の資金調達コスト上昇など財務への相応のインパクトが考えられるため、今後も日銀金融政策はCFOの主要な注目点となるだろう。
ChatGPTなどの生成AIの急速な普及で、各企業は生成AIの活用とリスクについて様々な角度から検討をしていると考えられる。生成AIは企業のビジネスプロセスやビジネスモデルに大きなインパクトをもたらす可能性のあるものであり、当面CFOとしても目を離せない注目点になるだろう。
(全文レポートより一部抜粋)
ポートフォリオマネジメントの実践に影響を与えた指針
設問6. ポートフォリオマネジメントの実践に影響を与えた指針
各社のポートフォリオマネジメントの実践に際し、今年3月に東証より発出された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」の影響を受けたと回答した企業が半数を超えた。従前からポートフォリオマネジメントに取り組んでいた企業にとっても、改めて東証から指針が出されたことで、検討を加速/見直しするきっかけになったと考えられる。
「上記の指針等が発信される以前より積極的に実施しており、特段影響を受けていない」と回答した企業は23%にとどまり、各機関からの指針や社会・市場の潮流が、各社の意思決定に影響を与えていることがうかがえる。
一方で、「上記の指針等の発信有無に関わらず、実践できていない」という回答も9%あり、今後の競争力を高めていくためには、自発的にポートフォリオマネジメント実践に向けた検討をしていくべきだろう。
(全文レポートより一部抜粋)
各事業を評価する際のESG関連指標
設問9. 各事業を評価する際のESG関連指標
ポートフォリオマネジメントに取り入れているESG指標はE(環境)の指標の一つである「GHG関連指標」が大差をつけて第一位となった。第三位の「資源・エネルギー関連指標」も同様にEの指標であるが、Eの指標は事業単位での取得・判断がしやすい一方、S(社会)・G(ガバナンス)の指標は事業単位では取得しづらいことも要因であると考えられる。
「ポートフォリオマネジメントを目的とした評価にはESG関連指標は取り入れていない」と回答した企業も3割にのぼった。ESG対応は既に各企業のCFOにとって切り離せないトピックである一方で、まずは開示・制度対応を優先していて、自社のポートフォリオマネジメントへの活用は浸透しきれていないと言える。昨今の潮流やステークホルダーからの要請の潮流を踏まえると、今後はポートフォリオマネジメントにおいても、ESG指標の適用がさらに広がると想定される。
(全文レポートより一部抜粋)
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デロイト トーマツ グループでは、様々な課題に直面するCFOを支え、ファイナンス組織の能力向上に寄与することを目指したサービスを展開しています。グローバルに展開するプロフェッショナルファームとして先進的な知見やネットワークの場を提供し、CFOにとっての“the Trusted Advisor"となることを目指します。詳しくは、CFOプログラム*をご確認ください。
*CFOプログラムとは、様々な課題に直面するCFOを支え、ファイナンス組織の能力向上に寄与することを目指すデロイト トーマツ グループによる包括的な取り組みです。