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IASBが金融商品の分類及び測定に関する修正を最終化

IAS Plus 2024.05.30  

IASBは、IFRS第9号「金融商品」の分類及び測定の要求事項の適用後レビューの間に識別された問題に対処する、「金融商品の分類及び測定の修正(IFRS第9号及びIFRS第7号の修正)」を公表した。この改正は、2026年1月1日以後開始する事業年度に適用される。

国際会計基準審議会(IASB)は、IFRS第9号「金融商品」の分類及び測定の要求事項の適用後レビューの間に識別された問題に対処する、「金融商品の分類及び測定の修正(IFRS第9号及びIFRS第7号の修正)」を公表した。この改正は、2026年1月1日以後開始する事業年度に適用される。

 

背景

2022年、IASBはIFRS第9号 (IAS Plus-英語※ 1)「金融商品」の分類及び測定の要求事項の適用後レビュー (IAS Plus-英語※ 2)を完了した。全体的に、IASBは、作成者が要求事項を一貫して適用できることを見い出した。しかし、IASBは、理解可能性を改善する明確化により便益をもたらすいくつかの要求事項を識別した。

IASBは、このうち2つの事項は早急に対処すべきであり、他の事項についても、優先順位は低いが、これらの事項とともに対処することが有益であると考えた。IASBは、IASBがすべての修正を同時に公表するならば、利害関係者にとって最も効率的となるであろうという結論に達した。本日公表された修正は、2023年3月 (IAS Plus-英語※ 3)の公開草案の提案を最終化するものである。

 

変更点

「金融商品の分類及び測定(IFRS第9号及びIFRS第7号の修正)」における変更は、以下のとおりである。

電子送金を通じて決済される金融負債の認識の中止:
IFRS第9号の適用指針の修正により、企業は、特定の要件を満たすのであれば、電子送金システムを使用して決済される金融負債(又は金融負債の一部分)について、決済日前に弁済したとみなすことが認められる。当該認識を中止する選択肢を適用することを選択する企業は、同じ電子送金システムを通じて行われるすべての決済に当該選択を適用することが要求される。

金融資産の分類:

  • 基本的な融資の取決めと整合的な契約条件
    IFRS第9号の適用指針の修正は、契約上のキャッシュ・フローが基本的な融資の取決めと整合的かどうかについて、どのように企業が評価できるかに関する指針を提供する。適用指針の変更を説明するために、本修正においては、元本及び元本残高に対する利息の支払のみである契約上のキャッシュ・フローを有する、または有していない金融資産の例が追加されている。
  • ノンリコース要素のある資産
    本修正は、「ノンリコース」の用語の記述を拡張している。本修正では、キャッシュ・フローを受け取る企業の最終的な権利が、特定の資産が生み出すキャッシュ・フローに、契約上限定されている場合、金融資産にはノンリコース要素がある。
  • 契約上リンクしている商品
    本修正は、他の取引から区別される契約上リンクされた金融商品を含む取引の記述を明確化している。本修正は、全ての複数の負債性金融商品の取引が、複数の契約上リンクされた金融商品を有する取引の要件を満たすわけではないことを記述し、設例を導入する。さらに、本修正は、原金融商品プールにおける金融商品への参照は、分類の要求事項の範囲に含まれていない金融商品を含むことができることを明確化する。

開示:

  • その他の包括利益を通じて公正価値で測定するものとして指定した資本性金融商品に対する投資
    企業が提供する上記の投資に関する開示について、IFRS第7号の要求事項が修正されている。特に、企業はその他の包括利益に表示される当期中の公正価値利得又は損失を、当期中に認識の中止を行った投資に係る公正価値利得又は損失及び当期末現在で保有している投資に係る公正価値利得又は損失を区別して、開示することが要求される。
  • 契約上のキャッシュ・フローの時期または金額を変化させる可能性のある契約条件
    本修正は、基本的な融資の取決めの変更に直接関連しない偶発的事象の発生(又は不発生)により、契約上のキャッシュ・フローの時期または金額を変化させる可能性のある契約条件の開示を要求している。当該要求事項は、償却原価又はその他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の各クラス及び償却原価で測定する金融負債の各クラスに適用する。

 

本修正は、IFRS第19号「公的説明責任のない子会社:開示」の修正を含んでおり、適格な子会社の開示要求事項を限定している。

 
 

発効日と移行

本修正は、2026年1月1日以降に開始する事業年度から有効となる。すべての修正を同時に早期適用する方法、または金融資産の分類に対する修正のみ早期適用する方法が認められている。

企業は、修正を遡及的に適用する必要がある。企業は、修正の適用を反映するために以前の期間を修正再表示する必要はないが、事後的判断を使用せずにそれが可能な場合に限り、そうすることができる。

 

反対意見

IASBの1名の理事は、金融資産または金融負債の当初認識日または認識の中止日に関するIFRS第9号の修正の発効日に同意しないため、修正の発行に反対した。

 

さらなる情報

IASBプレスリリース (IFRS財団ウェブサイトへリンクー英語)
金融商品の分類および測定に関するIAS Plusプロジェクトページ(IAS Plusー英語)

 

※1》 ‘IFRS 9 — Financial Instruments’(IAS Plus-英語)
※2》 ‘Post-implementation review — IFRS 9 (Classification and measurement)’(IAS Plus-英語)
※3》 ‘IASB proposes amendments regarding the classification and measurement of financial instruments’(IAS Plus-英語)

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