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IASB、第2の柱の法人所得税に関して、繰延税金資産及び負債に関する要求事項に対する一時的な例外を提供するIAS第12号の修正を公表

IAS Plus 2023.05.23  

IASBは、法人所得税の会計処理についてのOECDの第2の柱モデルルールの差し迫った適用の潜在的な影響に関する利害関係者の懸念に対応する「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール」(IAS第12号の修正)を公表した。

国際会計基準審議会(IASB)は、法人所得税の会計処理についてのOECDの第 2の柱モデルルールの差し迫った適用の潜在的な影響に関する利害関係者の懸念に対応する「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール」(IAS第12号の修正)を公表した。

 

背景

2022年3月OECDは、経済のデジタル化から生じる税の課題に対処するためのプロジェクトの第2の「柱」として合意された15%のグローバル・ミニマム課税についてテクニカル・ガイダンス を公表した。このガイダンスは、2021年12月に合意し公表されたグローバル税源侵食防止(GloBE)ルールの適用および運用について詳しく説明している。これは、収益が7億5,000万ユーロを超える多国籍企業(MNE)が、事業を行う各法域で発生する所得に対して少なくとも15%の税金を支払うことを保証するための調整されたシステムを構築する。

IASBは、法域における法人所得税の会計処理についての当該ルールの差し迫った適用の潜在的な影響に関する利害関係者の懸念に対応することを決定した。特に、IASBは、以下の状況は非常に複雑であることに留意した。

  • 法域が、低税率の状況とみなされることを回避するために法定税率を変更する可能性がある。
  • 会社がより高い法定税率の法域にビジネスを移転することを決定するかもしれない。
  • 会社がビジネスを行う法域は低税率の状況と一般的にはみなされないが、15%未満に法定税率が引き下げられるかもしれない税務上の優遇措置を受けるビジネスを会社が行うかもしれない。

これらのすべて及びさらなる検討が、法域がOECDのルールを異なるスピードで異なる時点で適用するという事実のために非常に変動する状況における、繰延税金の最も複雑な計算に伴うこととなる。多くの未知の変数が伴っているため、IASBは、グローバルな税務システムが確定し、再構築され、IASBが状況を十分に評価し信頼性のある解決策を提供することができるまで、強制的な免除規定を開発することを決定した。

 

変更点

「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール」(IAS第12号の修正)における変更点は、以下のとおりである。

  • 企業がOECD第2の柱の法人所得税に係る繰延税金資産及び負債を認識せず、それらに関する情報を開示しないという、IAS第12号における要求事項に対する例外を提供する。企業は、当該例外を適用した旨を開示しなければならない。
  • 企業が、第2の柱の法人所得税に係る当期税金費用(収益)を区分して開示しなければならないことを要求する。
  • 第2の柱の法制が制定または実質的に制定されているが未発効である期間について、企業が、当該法制から生じる第 2 の柱の法人所得税に対する企業のエクスポージャーを財務諸表利用者が理解するのに役立つ既知のまたは合理的に見積可能な情報を開示することを要求する。
  • 企業が、本例外の適用及び本例外を適用した旨の開示を、本修正の公表後直ちにIAS第8号に従って遡及適用することを要求する。残りの開示要求は、2023年1月1日以後開始する事業年度に要求される。

IASBは、第2の柱モデルルールの適用に関連する進展を継続してモニターする。IASBは、法域がどのように適用しているか及び企業に対する関連する影響について十分に明確になった後に、一時的な例外を削除するかどうか、または永久的なものにするかどうかを決定するために、さらなる作業を実施することを計画している。

IASBは、第2の柱モデルルール(及びIAS第12号の修正)が、IFRS for SMEsを適用する企業に目的適合性があることも決定している。IASBは、IFRS for SMEsの第29章「法人所得税」を修正する狭い範囲の基準設定プロジェクトを作業計画に追加した。

 

反対意見

1名のボード・メンバーが、本修正により、財務諸表の利用者が企業の将来キャッシュフローを評価するために役立つために有用ではない情報を、企業が開示することとなることを懸念しているため、最終修正には反対意見が含まれている。

 

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