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IASB、IFRS第9号の適用後レビューについての2つ目の情報要請を公表

IAS Plus 2023.05.30  

IASBは、IFRS第9号「金融商品」における減損の要求事項が、財務諸表の利用者に有用な情報を提供しているかどうか等を識別するために利害関係者からのコメントを求める、情報要請(RFI)を公表した。コメントは、2023年9月27日まで募集している。

国際会計基準審議会(IASB)は、IFRS第9号「金融商品」における減損の要求事項が、財務諸表の利用者に有用な情報を提供しているかどうか、適用が困難及び基準の整合的な適用を妨げる要求事項があるのかどうか、及び基準を適用または強制することに関連して生じている予想外のコストがあるのかどうかを識別するために利害関係者からのコメントを求める、情報要請(RFI)を公表した。

 

IASBは、IFRS9のレビューを全体的に行うが、3つのパートに分けて行うことを決定している。

  • 2022年にIASBは、分類及び測定の要求事項のレビューを完了し、当該要求事項は意図された通りに機能していると結論づけた。
  • 本日公表された情報要請により、IASBは、減損の要求事項についてのフィードバックを求めている。
  • IASBは、別途、ヘッジ会計の要求事項についてのフィードバックを求める。

IFRS第9号の減損の要求事項についての適用後レビュー・プロセスは、2022年7月に正式に追加された。2022年9月から2023年2月まで、適用後レビューの目的の文脈の中で、IASBが検討すべき問題が何かを質問するアウトリーチを実施した。

アウトリーチからのフィードバックを議論し、IASBは2023年2月に以下をさらに検討することを決定した。

  • 予想信用損失(ECL)の認識についての一般的なアプローチ
  • 信用リスクの著しい増大
  • ECLの測定
  • どのように購入または組成した信用減損金融資産に対するECLの要求事項を適用するかについての企業からの特定の質問が広まっていること
  • 営業債権、契約資産及びリース債権に対するECLの認識の単純化したアプローチ
  • ローン・コミットメント、担保及び保有する他の信用補完、及びIFRS第9号の範囲に含まれる発行した金融保証契約についての会計処理
  • IFRS第9号または他のIFRS会計基準の他の要求事項と同時のECLの要求事項の適用
  • IASBが提供する経過的な救済措置の影響及び財務諸表の作成者のコストを減少させることと財務諸表の利用者に有用な情報を提供することとのバランス
  • IFRS第7号の信用リスクについての開示要求

その結果、RFIは以下のセクションで構成されている。

 

減損―全体的な評価

 

IFRS第9号における減損の要求事項が、IAS第39号と比べて信用損失の認識をより適時に行う結果となるか、金融商品に対して複数の減損モデルがあることにより生じる複雑性に対処しているか、および将来キャッシュ・フローの金額、時期及び不確実性に対する信用リスクの影響に関して財務諸表の利用者に有用な情報を提供する結果となるかどうかを質問している。

 

一般的なアプローチ

 

一般的なアプローチに関して致命的な欠陥があるか、及び適用のコストが予想より著しく多いかまたは利用者の便益が予想より著しく少ないかどうかを質問している。

 

信用リスクの著しい増大の判定

 

信用リスクの著しい増大の評価に関して致命的な欠陥があるか、及び信用リスクの著しい増大の評価が一貫して適用できるかどうかを質問している。

 

予想信用損失の測定

 

予想信用損失の測定についての要求事項に関して致命的な欠陥があるか、測定の要求事項が一貫して適用できるかを質問している。

 

購入または組成した信用減損金融資産

 

購入または組成した信用減損金融資産に対する要求事項が一貫して適用できるかどうかを質問している。

 

営業債権、契約資産及びリース債権に対する単純化したアプローチ

 

単純化したアプローチに関して致命的な欠陥があるか、及び適用のコストが予想より著しく多いかまたは利用者の便益が予想より著しく少ないかどうかを質問している。

 

他の要求事項と同時の減損の要求事項の適用

 

IFRS第9号の他の要求事項または他のIFRS会計基準の要求事項と同時に、減損の要求事項をどのように適用するかが明確かどうかを質問している。

 

経過措置

 

経過措置を適用する、監査する及び適用を強制するコストが予想より著しく多いか、または利用者の便益が予想より著しく少ないかどうかを質問している。

 

信用リスクの開示

 

信用リスクについてのIFRS第7号の開示要求に関して致命的な欠陥があるか、及び適用のコストが予想より著しく多いかまたは利用者の便益が予想より著しく少ないかどうかを質問している。

 

他の事項

 

IFRS第9号の減損の要求事項のPIRの一環としてIASBが検討すべき他の事項があるかどうか、及び理解可能性及びアクセス可能性について、要求事項を開発するIASBのアプローチから学んだ教訓があるかどうかを質問している。

 

RFIに対するコメントは、2023年9月27日まで募集される。情報要請は、IASBのWebサイト(英語※ 1)から入手可能であり、対応するプレスリリースの日本語訳は、ASBJのWebサイト(※ 2)にて確認できる。

 

※1》‘Request for Information and comment letters: Post-implementation Review of IFRS 9—Impairment’(IFRS財団のWebサイト-英語)
※2》「IASBが金融危機期の貸付金に係る損失の会計処理の改革について予定していたレビューを開始」(ASBJのWebサイト)

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