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IASB、交換可能性の欠如が存在する場合の会計処理を明確化するIAS第21号の修正を公表
IAS Plus 2023.08.15
IASBは、「交換可能性の欠如」(IAS第21号の修正)を公表した。本修正は、通貨に交換可能性がある場合を特定し、交換可能性がない場合にどのように為替レートを決定するかのガイダンスが含まれている。本修正は、2025年1月1日以後開始する事業年度に発効する。
国際会計基準審議会(IASB)は、「交換可能性の欠如」(IAS第21号の修正)を公表した。本修正は、通貨に交換可能性がある場合を特定し、交換可能性がない場合にどのように為替レートを決定するかのガイダンスが含まれている。
背景
IAS第21号「外国為替レートの変動」には、直物為替レートが観察可能でない場合に企業が使用する為替レートについての明示的な要求事項が含まれていないため、IFRS解釈指針委員会は、長期に交換可能性が欠如している場合の為替レートの決定に関する要望書を受領した。解釈指針委員会は、狭い範囲の基準設定の可能性をリサーチし、最善の方法は、この問題に対処するために、IASBがIAS第21号に対する狭い範囲の修正を開発することを提言することであると結論付けた。
2019年11月、IASBはこの問題を引き受け、この後の会議にわたり、通貨に交換可能性があるかどうかをどのように評価するか、及び交換可能性がない場合にどの為替レートを使用するかについて議論した。IASBは、IAS第21号に、通貨が他の通貨に交換可能であるかどうかを企業が決定することに役立つ要求事項及び交換可能性がない場合に企業が適用することとなる要求事項を追加する提案を決定した。これに対応する公開草案が、2021年4月に公表された。
変更点
「交換可能性の欠如」(IAS第21号の修正)における変更は、以下のようにIAS第21号を修正する。
- 通貨が他の通貨に交換可能である場合、交換可能でない場合を特定する。
測定日においてかつ特定の目的で、必要以上の遅延なしに強制可能な権利及び義務を生じさせる市場または交換メカニズムを通じて、企業が通貨を他の通貨に交換することが可能である場合、通貨は交換可能である。企業が僅少な金額の他の通貨のみしか獲得できない場合、通貨は他の通貨に交換可能でない。 - 通貨に交換可能性がない場合に、企業はどのように為替レートを決定するかを特定する。
測定日において通貨に交換可能性がない場合、企業は、測定日において市場参加者の間での秩序ある取引において適用されるものであり、全般的な経済状況を忠実に反映するレートとして、直物為替レートを見積もる。 - 通貨に交換可能性がない場合に、追加情報の開示を要求する。
通貨に交換可能性がない場合、企業は、通貨の交換可能性の欠如が、どのように財務業績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響するかを財務諸表の利用者が評価することを可能にする情報を開示する。
本修正には、交換可能性についての適用指針の新しい付録及び新しい設例も含まれる。本修正は、これまで交換可能性を参照していたが定義されていなかったIFRS第1号の修正の確認にも及んでいる。
発効日及び経過措置
企業は本修正を、2025年1月1日以後開始する事業年度に適用する。早期適用は認められる。
企業は、本修正を遡及的に適用しない。その代わり、企業が外貨建取引を報告する際に、企業は、本修正の適用開始の影響を、利益剰余金の開始残高の修正として認識する。企業が、その機能通貨以外を表示通貨として使用する場合、企業は、資本に為替差額の累計額を認識する。
さらなる情報
》IASBのプレス・リリース(IASBのWebサイトー英語)
》IAS Plusのプロジェクト・ページIAS第21号— 交換可能性の欠如(IAS Plus-英語版)