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IASB、資本の特徴を有する金融商品に関する修正案を公表

IAS Plus 2023.11.29  

IASBは、公開草案IASB/ED/2023/5「資本の特徴を有する金融商品(IAS第32号、IFRS第7号及びIAS第1号の修正案)」を公表した。IAS第32号「金融商品:表示」の適用における実務上の問題に対処するための修正案が含まれている。コメントは、2024年3月29日まで募集されている。

国際会計基準審議会(IASB)は、公開草案IASB/ED/2023/5「資本の特徴を有する金融商品(IAS第32号、IFRS第7号及びIAS第1号の修正案)」を公表した。IAS第32号「金融商品:表示」の適用に際し生じる既知の実務上の問題に対処するために、IAS第32号における分類の要求事項を、その基礎となる原則を含めて明確化することを目的とした修正案が含まれている。コメントは、2024年3月29日まで募集されている。

 

背景

資本の特徴を有する金融商品についてのプロジェクトは、当初、負債と資本の区分を取り扱うIASBとFASBの共同プロジェクトとして開始された。共同プロジェクトは、2008年2月に公表されたディスカッション・ペーパー「資本の特徴を有する金融商品」(ASBJのWebサイト-※1)となったが、2010年11月の合同会議において、IASBとFASBは本プロジェクトのさらなる作業を延期することを決定した。2012年12月、アジェンダ協議2011年(ASBJのWebサイト-※2)への対応の一環として、IASBは、IASBのみのリサーチ・プロジェクトとして本プロジェクトを正式に再開した。2014年10月に、IASBでの議論が開始された。2017年3月、最初のフェーズの審議が終了した。 2018年6月28日、 ディスカッション・ペーパーDP/2018/1「資本の特徴を有する金融商品」(ASBJのWebサイト-※3)が公表された。

本プロジェクトの目的は、企業が発行した金融商品について財務諸表で提供する情報を、以下ように改善することである。

  • 企業がIAS第32号「金融商品:表示」を適用する際の、金融商品の分類に関する課題を検討する。
  • 分類の原則をより明確にし、表示および開示の要求事項を強化することにより、これらの課題にどのように対処するかを検討する。

 

変更案

公開草案IASB/ED/2023/5「資本の特徴を有する金融商品」 (IAS第32号、IFRS第7号及びIAS第1号の修正案)における修正案は、以下のとおりである。

  • 金融商品の分類における関連性のある法令の影響:
    IASBは、金融商品またはその構成部分の分類において、法令により強制可能であり、かつ、関連性のある法令によって生じさせる権利及び義務に追加される契約上の権利及び義務のみが考慮されることを明確にすることを提案する。また、法令によってのみ生じるのではなく、関連性のある法令により生じる権利または義務に追加される契約上の権利または義務は、金融商品またはその構成部分を分類する際に全体として考慮しなければならない。
  • 発行者自身の資本性金融商品で決済される、または決済される可能性のあるデリバティブを分類するための「固定対固定の」条件:
    IASBは、固定対固定の条件に関して、及び企業の各資本性金融商品と交換される対価の金額が企業の機能通貨建であることが要求され、かつどちらかが固定または可変であるのは維持調整(preservation adjustments)または時の経過による調整のみによるものである場合、固定対固定の条件を満たすことを提案する。また、IASBは、一方の当事者に、企業自身の2つ以上のクラスの資本性金融商品間の決済の選択肢を与えるデリバティブ、及び企業自身の1つのクラスのデリバティブ以外の資本性金融商品の固定数を、自身の他のクラスのデリバティブ以外の資本性金融商品の固定数と交換することによって決済される、または決済される可能性のある契約に関する明確化を提案している。
  • 企業が自身の資本性金融商品を購入する義務を含む金融商品を分類する要求事項:
    IAS第32号は、企業が償還金額の現在価値で金融負債を認識することを要求している(企業自身の他のクラスの資本性金融商品の可変数が引き渡される場合を含む)。IASBは、この金額を資本のどの内訳項目から控除するか(控除しないか)、及び金融負債を純損益を通じて償還額の現在価値にどのように測定するかを明確にすることを提案する。また、IASBは、企業自身の資本性商品を購入する義務を含む契約が引渡しをせずに消滅する場合に、企業が当該要求事項をどのように適用するかを明確にすることを提案している。もう1つの明確化は、総額現物決済される企業自身の資本性金融商品に対する売建プット・オプション及び先渡購入契約の総額表示に関連する。
  • 条件付決済条項を有する金融商品を分類する要求事項:
    IASBは、条件付決済条項を有する一部の金融商品は、負債及び資本の構成部分を有する複合金融商品であることを明確にすることを提案する。また、IASBは、複合金融商品の資本部分が当初の帳簿価額がゼロであっても、発行者の裁量による支払いを資本で認識することを提案している。さらに、IASBは、「清算」という用語と「真正なものでない」という用語を明確にすることを提案している。
  • 株主の裁量が金融商品の分類に与える影響:
    IASBは、企業が現金または他の金融資産の引渡しを回避する(または金融商品を金融負債となるような方法で決済する)無条件の権利を有するかどうかは、株主の裁量が生じる事実及び状況に依存することを明確にすることを提案する。株主の決定が企業の決定として扱われるかどうかを評価するには、判断が要求される。また、IASBは、企業がその評価を行う際に考慮しなければならない要因を記述することを提案している。
  • 金融商品(またはその構成部分)が、当初認識後に金融負債または資本に分類変更される状況:
    IASBは、16E項(プッタブル金融商品及び清算時にのみ企業の純資産の比例的な取り分を他の当事者に引き渡す義務を企業に課す金融商品の分類変更)が適用される場合、または契約上の取決めの実質が、契約上の取決め外の状況の変化により変化した場合を除き、当初認識後の金融商品の分類変更を禁止する全般的要求事項を追加することを提案する。IASBは、このような分類変更をどのように会計処理するかに関する要求事項を提案している。

IASBは、資本性金融商品に関するIFRS第7号「金融商品:開示」の目的及び範囲の修正、及び開示する情報を改善するための当基準のその他の修正を提案している。

また、IASBは、IAS第1号「財務諸表の表示」について、普通株主に帰属する金額に関する追加情報の表示を企業に要求する修正を提案している。これらの修正案は、企業の財政状態計算書、財務業績計算書、および資本変動計算書に影響を与える。IASBは、特定の移行上の救済措置を条件として、本修正を遡及的に適用することを提案する。

さらに、IASBは、 EDの提案が最終化される前に公表される会計基準「公的説明責任のない子会社:開示(子会社基準)」のドラフトの修正を提案している。これにより、適格な子会社は、開示を減少した上で、IFRS会計基準の認識、測定および表示の要求事項を適用することが認められる。

変更案に対するコメントは、2024年3月29日まで募集される。

 

発効日

IASBは、公開後に修正案の発効日を決定する。IASBは、企業に本修正を遡及的に適用することを要求することを提案している。早期適用は認められる。

 

さらなる情報

》IASBのプレス・リリースの日本語訳 (ASBJのWebサイト)
》IFRS財団のウェブサイト上の公開草案へのアクセス (PDF:262.72KB-IASBのWebサイト-英語)
》本提案の概要を示すスナップショット (PDF:227.14KB-IASBのWebサイト-英語)
》IAS Plusのプロジェクトページ資本の特徴を有する金融商品(IAS Plus-英語版)

 

※1》 「IASB、資本の特徴を有する金融商品に関するディスカッション・ペーパーを公表する」(ASBJのWeb サイト)
※2》 「IASBが、3年ごとの公開協議の結論を受けての将来の作業プログラムを策定」(ASBJのWeb サイト)
※3》 「IASBが資本の特徴を有する金融商品の会計処理に関して協議」(ASBJのWeb サイト)

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