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IASBが財務諸表の表示及び開示に関する新基準を公表

IAS Plus 2024.04.09  

IASBは、IAS第1号「財務諸表の表示」を置き換える新基準IFRS第18号「財務諸表の表示及び開示」を公表した。新基準は、いわゆる基本財務諸表プロジェクトの成果であり、2027年1月1日以後開始する事業年度に発効する。

国際会計基準審議会(IASB)は、IAS第1号「財務諸表の表示」を置き換える新基準IFRS第18号「財務諸表の表示及び開示」を公表した。新基準は、いわゆる基本財務諸表プロジェクトの成果であり、企業が財務諸表においてどのようにコミュニケーションするかを改善することを目的としており、2027年1月1日以後開始する事業年度に発効する。

 

背景

IASBは、企業の業績報告の比較可能性及び透明性に関する投資者の懸念に対応し、主要な財務諸表プロジェクトに着手し、2016年4月に本プロジェクトにおける議論を開始した。

2019年5月まで議論を続け、その間に範囲が徐々に具体化され、(i)財政状態計算書、キャッシュ・フロー計算書、持分変動計算書の抜本的な見直し、(ii)OCIの内容及びリサイクルのタイミングに関するガイダンス、(iii)セグメント報告、及び(iv)非継続事業の表示が、本プロジェクトの範囲から除外された。

IASBは、4つの主要な分野に焦点を当てることを決定した。

  1. 純損益計算書における定義された小計及び区分(category)の導入
  2. 集約及び分解を改善するための要求事項の導入
  3. 財務諸表注記における経営者業績指標(MPM)の開示の導入
  4. IAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」 の修正によるキャッシュ・フロー計算書の的を絞った改善

2019年12月17日、新基準案の公開草案(デロイトトーマツのWebサイト-※1)が公表された。その中で、IAS第1号「財務諸表の表示」の関連する要求事項は、限定的な文言の変更の上新基準に引き継がれることが提案された。

IAS第1号の他の要求事項は、IAS第8号及びIFRS第7号に移動することが提案された。IASBは、2020年12月及び2021年1月に公開草案に対するフィードバックを議論し、2021年3月から2023年6月にかけて提案を再審議した。IASBは、2024年4月9日に新しくIFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」を公表した。

 

範囲

IFRS第18号は、IFRS会計基準に従って作成および表示するすべての財務諸表に適用される。

 

概要

IAS第1号のこれまでの要求事項と比較した、新基準の主な変更点は次のとおりである。

  • 純損益計算書に区分および定義された小計を導入し、追加的な関連性のある情報を目的とし、企業間でより比較可能性がある純損益計算書の体系を提供する。特に、次の点が含まれる。

・収益及び費用の項目は、純損益計算書において次の区分に分類することが要求される。
 ・営業
 ・投資
 ・財務
 ・法人所得税
 ・非継続事業
主要な事業活動として、顧客にファイナンスをするまたは資産に投資する企業は、区分が異なる場合がある。

・企業は、次の小計を表示することが要求される。
 ・営業利益または営業損失
 ・財務及び法人所得税前純損益
 ・純損益
これらの小計は、純損益計算書を区分に構造化するものであり、区分の見出し(category headings)を表示する要求はない。

・IFRS第18号に列挙されている科目は、企業の収益及び費用の有用な体系化された要約を提供する上で、純損益計算書がどれほど効果的であるかを低下させる場合を除き、表示することが要求される。

  • 追加的な関連性のある情報を提供し、重要性がある情報が不明瞭にならないことを確保することを目的とする、集約及び分解を改善する要求事項の導入。特に、次の点が含まれる。

    ・IFRS第18号は、情報を基本財務諸表(その役割は、有用な体系化された要約を提供することである)に含めるべきか、注記に含めるべきかについてのガイダンスを提供する。

    ・企業は、個々の取引または他の事象から生じる資産、負債、資本、収益及び費用を識別し、それらを共有する特徴に基づいてグループに分類し、その結果、少なくとも1つの特徴を共有する基本財務諸表における科目とすることが要求される。これらのグループは、さらに異なる特徴に基づいて区分され、その結果、注記において重要性がある項目が個別に開示される。関連性がある情報が不明瞭になることを避けるため、異なる特徴を有する重要性がない項目を集約する必要がある場合がある。企業は、記述的な名称を使用するか、それが不可能な場合は、そのような集約された項目の構成に関する情報を注記で提供しなければならない。

    ・営業費用の分析が性質別か機能別かについての、より厳格なガイダンスが導入される。表示は、いくつかの要因を考慮して、営業費用の最も有用な体系化された要約を提供する方法で行われなければならない。機能別に分類された営業費用の1つ以上の科目を表示する場合、例えば減価償却費など、5つの特定の費用の金額を開示することが要求される。

  • このような指標についての透明性及び規律、及び1か所での開示を目的とする、財務諸表の注記における経営者が定義した業績指標(MPM)に関する開示の導入。特に、次の点が含まれる。

    ・MPMは、財務諸表外での財務諸表の利用者との公開のコミュニケーションで使用される収益及び費用の小計で、IFRS会計基準に含まれる合計または小計を補完し、企業の財務業績の一側面についての経営者の見方を伝達するものとして定義される。

    ・付属する開示は、次を含む単一の注記で提供することが要求される。
     MPMがなぜ経営者の見方を提供するかの説明
     ・MPMがどのように計算されるかの説明
     ・当該指標がどのように企業の財務業績に関する有用な情報を提供するかの説明
     ・MPMとIFRSで規定された最も直接的に比較可能な小計または合計との調整表
     ・MPMが企業の財務業績の一側面についての経営者の見方を提供するという記述
     ・MPMとIFRSで規定された最も直接的に比較可能な小計または合計との各差額について、個別に税効果及び非支配持分への影響
     ・MPMがどのように計算されるかが変更された場合、変更の理由および影響の説明

IAS第7号の的を絞った改善は、企業間の比較可能性の向上を目的としている。変更には次のものが含まれる。

  • 営業利益の小計を、営業活動から生じるキャッシュ・フローを報告する間接法の単一の出発点として使用する。
  • 利息及び配当金の表示の選択肢を削除する。

 

発効日及び経過措置

IFRS第18号は、2027年1月1日以後開始する事業年度から発効する。本基準は、特定の経過措置と共に遡及的に適用され、早期適用が認められる。

 

追加情報

IFRS財団のウェブサイト
プレスリリース(PDF:214.31KB-日本語訳
IASB議長によるビデオメッセージ (英語)
IFRS第18号の1ページのクイックビュー(PDF:44.03KB-英語)
プロジェクト概要(PDF:168.68KB-英語)
効果分析(PDF:518.10KB-英語)
フィードバック文書(PDF:221.14KB-英語)
IAS第1号とIFRS第18号の要求事項の比較(PDF:536.37KB-英語)
基準、設例、及び結論の根拠へのアクセス(購読が必要)

 

IAS Plus
IFRS第18号「財務諸表の表示及び開示」の概要(英語)
プロジェクト・ヒストリーの概要 (英語)

 

※1》IFRS in Focus「IASB が新基準「全般的な表示及び開示」を提案」(デロイトトーマツのWeb サイト)

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