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生成AIのビジネス活用と実証研究の実例紹介

FA Innovative Senses 第6回

生成AIは、機械学習や深層学習などの技術を活用して、テキスト、画像、音楽、動画など、さまざまな分野で活用されています。デロイト トーマツ グループでは、お客様のニーズに答えるために、生成AIの活用領域と生成AIを活用することで得られる効果に関しての整理、検討を行っています。また、生成AIを活用した実証研究や開発も積極的に取り組んでいます。

はじめに:生成AIとは

生成AIとは、テキスト、画像、音楽、動画など、さまざまな新しいコンテンツを生成できる人工知能(AI)の一種です。生成AIは、機械学習や深層学習などの技術を活用して、既存のデータからパターンや関係性を学習し新しいコンテンツを生成します。生成AIは、ニュース記事やブログ記事、小説などのテキストコンテンツを生成するために使用されているほか、最新の生成AIでは、画像や動画の生成も可能になるなど、さまざまな分野で活用されています。

ビジネスにおける生成AI活用のニーズは高まっており、デロイト トーマツ グループでもすでに様々な領域のお客様から生成AIを活用したビジネス推進に関するご相談をいただいております。活用ニーズとしては、以下のような内容があります。

  • 社内向けのシステム構築/活用支援
  • 社外向けサービス検討
  • 生成AI活用戦略/ユースケース検討
  • AIガバナンスの整備
     

デロイト トーマツ グループではお客様のニーズに答えるために、生成AIの活用領域と生成AIを活用することで得られる効果に関しての整理、検討を行っています。またデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(以下、DTFA)では生成AIを活用した実証研究や開発に積極的に取り組んでいます。

 

生成AIを活用した実証研究

DTFAではお客様へ提供するサービスでの生成AI活用を視野に、いくつかの実証研究や開発を積極的に行っています。

類似上場企業自動選定の実証研究

企業価値評価において、評価の対象となる会社(以下「対象会社」)の類似上場企業を選定することは重要なステップです。通常は業種分類からスタートして、手動で類似会社を検討するプロセスが必要ですが、生成AIを利用することで、より詳細な条件で検索することができるという発想で、実証研究を開始しました。

当初、生成AIに直接「上場類似企業を教えてください」と質問してみたところ、証券コードを間違えたり、財務数値が違ったりと、良い結果は得られませんでした。そこで、カスタマイズした開発を行いました。

まず、各上場会社の有価証券報告書から、事業の内容と財務数値等のデータを収集します。その後、データを生成AIに取り込んでカスタマイズします。これにより、ユーザーが対象会社の業務概要、大まかな業種区分等の定性情報を入力すると、類似上場企業をその直近の財務数値等と共に回答してくれるツールが開発できました。また、財務数値の定量条件を絞り込み、類似上場企業の企業数を調整することも可能です。 

このツールは、企業価値評価のプロセスを効率化し、より正確な評価結果を得るのに役立つと考えられます。また、生成AIの活用により、従来は困難であった詳細な条件での類似企業検索が可能になり、企業価値評価の精度向上に貢献することが期待されます。

類似上場企業自動選定機能はDTFAが提供している企業価値を算定する割引率計算ツールValuation Assistに実装するため開発中であり、今後加重平均資本コストの計算がより便利になります。

 

■割引率計算ツールValuation Assist紹介サイトはこちらから:https://lp.valuation-assist.fa-biz.deloitte.jp/

類似上場企業自動選定 デモ動画

生成AIを活用した実証研究

自動議事録作成とチャットによるQAシステムの実証研究

ミーティングや会議における議事録はプロジェクトの進捗や今後の方向性を確認するうえで重要な情報となります。しかし議事録の作成は工数を必要とするうえ、議事録作成者のミーティングや会議の議題に関する理解度や、議事録フォーマットの有無で、クオリティに差が出やすいという課題があります。そこで今回はGoogle Cloudを用いて、議事録自動作成と議事録に対するQAシステムの構築を行いました。

まず音声を入力データとして、Google Cloud Speech-to-Textを用いて書き起こしたテキストデータをGoogle Cloud Vertex AIの生成AIを使って校正・要約します。また校正済みのデータを生成AIに入力することで、チャットボット形式で校正済みの文章に対するQAを可能にしています。デモでは汎用的な出力になっていますが、生成AIへの入力(プロンプトエンジニアリング)を工夫することで、所望のフォーマットや文字数などの制約に対しても対応することが可能です。

ビジネスにおいてはテキストや音声といった様々な種類のデータが混在しています。それらを横断的にまとめたり、検索したりすることは、これまでの技術では難しいものでした。しかし生成AIを活用することで、データの種類の壁を越えた要約や情報検索がより短時間でかつより高精度で実現可能になります。

生成AIを用いたアプリケーション デモ動画

Google Cloudを活用した4つのコアサービス

DTFAの強みを生かしたコンサル×データ分析サービスを、Google Cloudを活用することで提供しています。

  • M&Aにおけるデータ活用:M&Aにおける重要トレンドであるデータ活用を、Google Cloudを活用して幅広く支援します。
  • AI・データガバナンス:Google Cloudを含め、データ利活用全般の活動を効果的・効率的に行うために必要な統制や管理監督の仕組みとして、AI・データガバナンスに関する検討、策定について支援します。
  • AI活用による経営基盤高度化:AIやML(機械学習)をビジネスプロセスへの導入し、経営基盤を高度化し競争優位性の源泉獲得を支援します。
  • 新規ビジネスにおけるデータ活用:新規事業検討において、新規ビジネスアイデアやユースケースに加えて事業計画の仮説検証に向けたオープンデータの提供やデータ分析を支援します。

図:Google Cloudを活用した4つのコアサービス
*クリックまたはタップで拡大

DTFAではGoogle Cloudを活用して環境構築やサービスを実現しています。Google Cloudを活用する利点として、高性能な生成AIが使えるだけでなく、クラウド経由で自由度の高いインフラストラクチャを構築可能なInfrastructure as a Service(IaaS)から、フルマネージドにアプリケーションを利用できるSoftware as a Service(SaaS)まで様々な機能が用意されており、データ分析環境や生成AI環境を簡単に構築できます。また生成AIに関しても、学習データの準備やモデル実装などの作業の必要はなく、高性能な学習済みモデルを利用することで様々なタスクに適用が可能です。

 

おわりに:生成AIのビジネス活用に関するDTFAの取り組み

生成AIのビジネス活用に関するニーズが高まっていることに対応し、DTFAでは生成AIの活用領域と価値の整理、検討、実証研究、開発に積極的に取り組んでいます。また、Google Cloudを活用したコンサル×データ分析サービスを提供しており、M&Aにおけるデータ活用、AI・データガバナンス、AI活用による経営基盤高度化、新規ビジネスにおけるデータ活用など幅広く支援しています。

 

(2024.2.16)
※動画の登場者の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

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