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固定資産税評価額の適正化事例

計算誤りが散見される固定資産税評価額の適正化の流れについて、実例に沿って解説します。

固定資産税の算定においては、その計算過程において一定割合で誤りが発生していることが確認されています。本来であれば必要のない固定資産税の支払いを行っていないか確認しておくことは、経費削減の観点に加え、ステークホルダーの利益にも資することから、一定規模以上の所有不動産については一度チェックしておくことを推奨します。本記事において、実際の固定資産税評価額の適正化の流れを解説します。

固定資産税(及び都市計画税、以下、固定資産税等という)の課税プロセスにおける問題点

  • 固定資産税等は、通常<固定資産税評価額(課税標準額)×1.7%>という算式によって計算されています(都市計画税が0.3%の場合)。
  • この計算の要素である家屋の固定資産税評価額は、総務省が定める「固定資産評価基準」に従い、再建築費評点数(※)を使用して市町村長等が決定しています。
  • しかし多くの場合、再建築費評点数の査定は不動産の専門家ではない市町村職員が行っており、評価数も膨大な数に上るため、実際には不適正な評価がなされているケースが存在しています。その結果、本来支払うべき金額よりも高額な固定資産税等を支払っているケースが存在します。
  • 土地については、地目の誤り、住宅用地の特例適用漏れ、市町村の採用する公図ベースによる測定と実測図ベースによる測定とのズレに起因する補正率の要修正事象等が存在します。
     

(※) 固定資産評価基準に定められた、部分別(屋根、外壁、天井など)に使用されている資材の各点数を積み上げて査定されるものをいいます。

 

固定資産税評価額の適正化の流れ

  • 固定資産税評価額を適正化するためには、①査定の見直し(Phase 1: 簡易的なスクリーニング、Phase 2: 詳細調査)、②見直し結果を基にした市町村等への減額の申し入れ(Phase 3)というプロセスが必要となります。
  • 通常これらの業務は、市町村による検討も踏まえると、数ヶ月~1年程度時間を要し、また不動産や税の専門的知識が必要となります。

 

固定資産税評価額の適正化の実例

地方に所在する事業用不動産について、申し入れを行った事例で、約3,000万円の税額還付(過払い分の還付)、及び翌年以降の税額の減額(年額約300万円)を実現した事例です。一般的にも、以下の流れでプロセスが進行していくため、実際のフローの参考にして頂ければと思います。
 

  • Phase1(スクリーニング):
    所有家屋10棟につき、スクリーニング(減額可能性のある物件の選定)を実施。1棟の家屋について相応の減額可能性が認められたことから、当該1棟の詳細調査へ進みました。

  • Phase 2 (詳細調査):
    本件では、家屋の固定資産税評価に精通した一級建築士による詳細調査(再計算)により、一部の計算に大きな誤りの可能性が確認されました。また、その他の躯体・仕上げ・設備に係る再計算も合わせて行い、詳細分析を実施しました(この際に、逆に税額が上昇するような項目が別途確認されるケースもあるため、全体に渡って慎重な検討が必要となります)。上記を経て、年額約300万円の減額可能性がある旨をクライアントに報告しました。

  • Phase 3 (減額の申し入れ):
    自治体を訪問し、書面にて再審査を申請しました。申請書を提出し、約3か月後に委員会での検討を経た自治体より返答を受領しました。修正後の数値が提示され(デロイト トーマツの算定額とほぼ同額)、税額還付及び翌年以降の減額が認められることとなりました。本件においては当該自治体の過徴収金返還要綱に基づき10年分の還付が行われることとなりました(年数は自治体により異なります)。

 

デロイト トーマツの固定資産税評価額適正化に関するサービス

デロイト トーマツの固定資産税評価額適正化サービスでは、当グループに所属する当該業務に精通した税理士・一級建築士・不動産鑑定士等による一気通貫でのサポートが可能です。
 

  • Phase 1,2:
    まずは関連資料を頂き、スクリーニングを行い、適正化の可能性のある対象物件候補の洗い出しを行います。その後より詳細な資料を受領後、固定資産税評価額の適正化見込みを検討致します。

固定資産税等の適正化にむけた事前調査プロセス
※クリックまたはタップして拡大表示できます

  • Phase 3:
    検討の結果、固定資産税評価額の適正化見込みがある場合は、当グループ所属の税理士が代理人として適正化のための再調査の申請を市町村に、又は審査の申出を固定資産評価審査委員会に行います。

減額の申し入れプロセス
※クリックまたはタップして拡大表示できます

不動産時価評価関連サービス

不動産に関する専門的知見に加え、会計・税務・監査・建築・環境・アナリティクス等の見識を有する専門家による総合的な支援が可能となっております。
 

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執筆者

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
不動産アドバイザリー
シニアヴァイスプレジデント 成田 正憲
ヴァイスプレジデント 藤武 健一 

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