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ブロックチェーンと内部統制:COSOの視点
新たなリスクと新たなコントロールの必要性
ブロックチェーンの潜在的な利点は明らかであり、改善効率、信頼性、およびコンプライアンスの向上があります。一方で、リスクもまた明白です。企業が責任を持ってブロックチェーンを使用する場合は、ブロックチェーン関連のリスクとそれらのリスクに対処する方法を完全に理解する必要があります。 COSOの視点を知ることから、始めましょう。
ブロックチェーンと内部統制の複雑な関係
ブロックチェーンが主流になるにつれ、この技術が組織の内部統制とどのように関わっていくかに着目することが適切です。ブロックチェーンの慎重な実装と統合により、ブロックチェーンの特徴的な機能を活用して、組織はより強固なコントロールを作成できます。さらに、ブロックチェーンが組み込まれた高機能なツールは、業務の効率性と有効性を高め、財務報告やその他の報告の信頼性と即応性を向上させ、法律や規制の遵守を改善する可能性があります。一方で、ブロックチェーンの導入により新たなリスクが生み出され、それに対するコントロールが必要となります。
COSOの内部統制の統合的フレームワーク(2013フレームワーク)は、ブロックチェーンに関連する固有のリスクに対処するためのコントロールをデザインし、業務に適用するために活用できる、効果的かつ効率的なアプローチを提供しています。
ブロックチェーンの使用を組織がCOSOのフレームワークを通じて評価する場合、取締役会と上級管理職は、状況をよりよく理解し、内部統制に関する技術の可能性と適用可能性について、より多くの情報に基づいて評価することができます。これにより、組織は詳細なリスク分析を実施し、次に、そのようなリスクに対処するための適切なコントロール活動を構築し、ブロックチェーンの効果的な導入と使用を促すことができます。
本レポートは、2013フレームワークを用いて、財務報告におけるブロックチェーンの使用に関連するリスクを評価し、そのようなリスクに対処するためのコントロールをデザインし、業務に適用するためのガイドを提供します。本レポートは、組織の監督、リスクおよび財務報告に係る内部統制(ICFR)に関する意思決定を支援することを目的としています。本レポートの目的は、ブロックチェーンの複雑さを説明することでも、主要なプラットフォーム間の技術的な違いを詳細に説明することでもありません。
このように、本レポートは、財務報告に関わる様々なステークホルダーにとって、それぞれの対象の中で価値あるものとなることが期待されます。
COSOの視点から考察するブロックチェーン
ブロックチェーンを使用することによって生じるより重要な変化の1つは、組織の階層に関連します。2013フレームワークで表されている階層の最上位レベルは全社レベルであり、部門、営業単位、および機能にドリルダウンしますが、ブロックチェーンは分散ベースで動作する一方で共有データと結合されており(すなわち、分散型データベース)、異なるエンティティにまたがる新しい共同単位を作成する機能があります。台帳や記録管理の共有から包括的なガバナンス(スマートコントラクトを監督および組織間の内部統制に活用するものも含まれるであろう)まで、ブロックチェーンは、内部統制環境における「組織」 の概念、ならびに関連する責任と要件を変えることができます。
2013フレームワークの3つの目標である業務、報告、コンプライアンスは、目標の達成方法の観点から、ブロックチェーンによって大きな影響を受ける可能性があります。特に、多くの提唱者は、記録管理は完全に変革され、完全な特定の目的のための自動化されたオンデマンドのレポート作成およびコンプライアンス活動につながると考えています。このような変革により、経営陣、経営会計担当者、財務担当役員、内部監査人および外部監査人の役割が変わる可能性があります。
ビジネス環境へのブロックチェーンの導入は、次のように、2013フレームワークの5つの構成要素に影響を与えます。
ゲームチェンジャー
台帳や記録管理の共有から包括的なガバナンス(スマートコントラクトを監督および組織間の内部統制に活用するものも含まれるであろう)まで、ブロックチェーンは、内部統制環境における「組織」の概念、ならびに関連する責任と要件を変えることができます。
ブロックチェーンについて知っておくべき10のこと
ブロックチェーンの利用は今後も発展を続け、導入の拡大は組織の運営方法を変革する可能性が高いと見込まれます。多くの組織が、ブロックチェーンが財務報告や内部統制に及ぼす潜在的な影響について慎重ながらも楽観的な見方を示しています。あらゆる破壊的技術と同様に、各組織はそれぞれ固有の状況に応じて、課題を評価し、関連するリスクをよりよく理解し、最善の行動方針を決定し、そのリスクを是正するために協力する必要があります。
組織はブロックチェーンの使用を検討するにあたり、このテクノロジーについて以下の10のことを知っておく必要があります。
内部統制と財務報告に対するブロックチェーンの潜在的なメリットは、財務報告、内部統制、監査を理解し、責任を持つ人々が、ブロックチェーンに関する議論に積極的に関与し、共同のアジェンダを前進させるために協力している場合にのみ最大の効果があります。
他のテクノロジーとの連携
ブロックチェーンの導入によってもたらされる変革の多くは、ブロックチェーン単独では達成されません。最も成功するのはブロックチェーンプラス何か(他の新たなテクノロジー)です。例えば、ブロックチェーン+人工知能(AI)、ブロックチェーン+モノのインターネット(IoT)、ブロックチェーン+高度な分析、です。基礎的な技術として、ブロックチェーンはグローバルなデジタルビジネスの展望を根本的に変える可能性があり、それがほとんど全てに大きな影響を与えるでしょう。
プロフェッショナル
野根 俊和
有限責任監査法人トーマツ / パートナー
三浦 崇
有限責任監査法人トーマツ / シニアマネジャー
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グローバル・ブロックチェーンサーベイ 2020
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