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COVID-19対応におけるオペレーショナル・レジリエンス、BCMでの対応確認事項

COVID-19に関する足許の各国当局の動向およびBIS FSIの公表内容を踏まえて

BIS FSI(Financial Stability Institute)が「COVID-19対応とオペレーショナル・レジリエンス」というタイトルで非公式見解ながらコメントを出し(2020年4月)、各国当局のガイダンスを基にパンデミックリスク対応におけるオペレーショナル・レジリエンスおよびBCMにおける対応事項を整理しています。英当局が2019年12月にオペレーショナル・レジリエンスの対応事項や実施時期を明確にして以降、関心が高まっていますが、COVID-19への対応を契機にその重要性が一層高まっています。

COVID-19に関する足許の各国当局の動向(BCM等に関連)

COVID-19が、欧米含め世界中を席巻し、ロックダウンや出入国禁止など感染防止に向けた措置が取られています。第2波の懸念もある中、現時点では収束の時期は不透明ですが、金融機関は自身の業績がどこまで影響を受けるのかという財務的な問題とともに、決済業務や資金繰支援など重要な社会的なインフラである金融システムを支えていくため、職員の感染防止に配慮しながら対応を取る必要があります。このような中、EBA、FDIC等から、COVID-19への対応につき、BCM、オペレーショナル・レジリエンスの観点から金融機関に対して対応・確認事項が公表された他、BISのFSI(Financial Stability Institute)がこうした各国当局のガイダンスを整理しています。甚大なパンデミックリスクに対して金融機関が安定した業務を継続する観点から、オペレーショナル・レジリエンスの重要性の認識が高まっています。

足元の各国当局の動向

足元の各国当局の動向
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BIS FSIの公表内容(オペレーショナル・レジリエンス)

BIS FSIが非公式見解ながら、「COVID-19対応とオペレーショナル・レジリエンス」というタイトルでコメントを公表し、各国当局のガイダンスを基にパンデミックリスク対応におけるオペレーショナル・レジリエンスおよびBCMにおける対応事項を整理しています。
オペレーショナル・レジリエンスは、英当局が2019年12月に対応事項や実施時期を明確にして以降、関心が高まっていますが、COVID-19への対応を契機に、今後の国際的なスタンダード確立に向けて、各国の連携を促すものと捉えています。オペレーショナル・レジリエンスのスタンダードとなる要素としては、具体的には、1.重要業務を支えるのに必要な機能とこれに対応する職員の特定、2.急激な利用の増加や長期間の利用に耐えられるITインフラの整備、3.重要業務に関係するサードパーティーサービス提供者の対応の確認、4.サイバーアタックへの備え、等を挙げています。

COVID-19 and operational resilience

COVID-19 and operational resilience
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BIS FSIの公表内容(BCM)

BIS FSIは、BCMについても各国当局が出したガイダンスを整理しています。パンデミックリスクは、自然災害、インフラ障害、サイバー、テロ等とは異なり、1.数週間、数か月続く、2.グローバルに影響する、3.1回ではなく、数度波がある、4.アセット毀損ではなく人員等の経営資源不足を引き起こす、などの特徴があるため、従来のBCMの主な手段である、重要業務を行うバックアップサイトの確保では効果的ではないとしています。今回の対応でBCM上留意すべき事項としては、1.顧客と職員への安全配慮、2.パンデミックシナリオを踏まえたBCM手続の改定、3.テレコミュニケート能力の評価とサイバーリスクへの対応、4.重要業務を実施する人員の確保、5.サードパーティーサービス提供者との連携、6.内外関係者との連絡手段の確保、などを挙げています。

COVID-19に関するBCMの確認ポイント(各国当局ガイダンスの概要)

COVID-19に関するBCMの確認ポイント(各国当局ガイダンスの概要)
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今後の対応の方向性

COVID-19への対応を基に、BCM、オペレーション・レジリエンスの観点から、これまでのパンデミックリスクへの対応では予期してこなかった課題が再認識され、各国当局も重要な社会的なインフラである金融システムを支えるために、様々な対応を取っています。英当局がCPを出した時にはあまり想定していませんでしたが、業務の強靭化というテーマは広い範囲をカバーするものとして改めて認識され、その重要性は一層増したものと言えます。金融機関には、今回のパンデミックシナリオを含め、様々なシナリオに十分に備え、金融インフラを支えるために不断に業務継続を強靭にしていく努力が求められています。

  

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