GIPS 2020(グローバル投資パフォーマンス基準2020)の公表 ブックマークが追加されました
ナレッジ
GIPS 2020(グローバル投資パフォーマンス基準2020)の公表
2020年12月31日以降を基準日として作成されるパフォーマンス報告に適用
CFA協会より2020年1月1日付けでGIPS 2020が公表されました。GIPS 2010からの主な変更点や概要をまとめています。
GIPS 2020では、【FIRM会社編】【アセットオーナー編】【検証者編】の3部で基準が構成されています。また、GIPS 2020の特徴として、アセットクラスよりもポートフォリオのストラクチャーにフォーカスされています。
運用会社は、【FIRM会社編】の必須基準及び採用される勧奨基準に加え、今後公表が予定されているハンドブック及びガイダンスステートメントに準拠する必要があります。
GIPS 2020の主な変更点
- 新しく「プールド・ファンド」が規定されました
- GIPS報告書としてコンポジット報告書とプールド・ファンド報告書があります
- GIPS 2010で禁止された事後的現金配分によるカーブアウトが再び可能となりました
- 金額加重収益率の提示が可能となる範囲が拡大しました
- 適切なモデルフィー(運用報酬)の使用が可能となりました
- 検証意見の範囲が変更されました
変更概要
1.「プールド・ファンド」の規定
ポートフォリオは、ストラクチャーにより以下の3つに分類されます。
- 個別運用口座 「Segregated Account」:
運用の再委託を受けた運用会社にとって運用する当該ポートフォリオも個別運用口座に含まれる
- 私募プールド・ファンド 「Limited Distribution Pooled Fund」 :
一対一の資料の提示によって勧誘されるプールド・ファンド、公募プールド・ファンド以外のプールド・ファンド - 公募プールド・ファンド(公募投信) 「Broad Distribution Pooled Fund」:
一般大衆がプールド・ファンドのシェアを購入または保有することが可能である制度下で規制され、一対一の資料の提示による募集
プールド・ファンドの戦略がプールド・ファンドのストラクチャーとしてのみ提供され、個別運用口座として提供される会社の戦略を代表するものでなければ、そのプールド・ファンドのためのコンポジットの構築及び当該新規コンポジットへの組み入れの必要はありません。ただし、既存のコンポジットの定義に合致するプールド・ファンドは、当該コンポジットに組み入れなければなりません。運用実績のある運用報酬を課す投資一任ポートフォリオはすべて、少なくとも1つのコンポジットに組み入れなければならないとういう概念に変更がないことに留意する必要があります。
ポートフォリオのストラクチャーにより上記の3つに分類されることに伴い、以下の作成が求められています。
- コンポジット概略一覧表
- 私募プールド・ファンド概略一覧表
- 公募プールド・ファンド一覧表:
ファンド名のみのリストで可、会社のウェブサイトに開示されている場合は代替可 - GIPS報告書:
GIPSコンポジット報告書及びGIPSプールド・ファンド報告書
2.GIPS報告書の作成及び提示
GIPSコンポジット報告書は見込顧客のために作成、提示されることに変更はありません。GIPS 2020において、上記1.のポートフォリオのストラクチャーにより分類されることに伴い、GIPSプールド・ファンド報告書について規定されています。
- プールド・ファンドの見込投資家のためにGIPSプールド・ファンド報告書の作成、提示が可能となる
- 公募プールド・ファンドの投資家にGIPSプールド・ファンド報告書を提示することは必須ではない
- 私募プールド・ファンドがコンポジットに組み入れられており、GIPSコンポジット報告書が使用されている場合、当該私募プールド・ファンドの投資家に対しGIPSプールド・ファンド報告書を提示することは必須ではない
GIPSコンポジット報告書とGIPSプールド・ファンド報告書の提示及び開示の規定について、CFA協会から比較表が公表されています。
CFA Institute - Global Investment Performance Standards(外部リンク)
会社は見込顧客および見込投資家に対し、GIPS 2020では、以下の事項についてあらゆる努力をどのように行ったかを示すことができなければならないとされています。
- 見込顧客に対してGIPSコンポジット報告書を提供する
- 見込投資家に対してGIPSプールド・ファンド報告書を提供する
また、見込顧客/投資家に提供する際、直近一年の情報を含めたGIPS報告書を基準日以降12ヶ月以内に更新しなければならないとされています。見込顧客/投資家の特定と報告書の配布に係る記録が求められています。
3.カーブアウト
2010年1月1日以降、キャッシュバランスを有して個別管理されていない限りカーブアウトをコンポジットに含めてはならないとされていましたが、GIPS 2020において適時に一貫性のある方法で現金を割り当て、カーブアウトに当該現金を配分する方法によりコンポジットに含めることも可能となります。ただし、特化型のポートフォリオがある場合、カーブアウトを含まない特化型ポートフォリオのみのコンポジットの構築が求められていることに留意が必要です。
4.金額加重収益率の提示
時間加重収益率の提示が原則ですが、会社が外部キャッシュフローの管理に一任を有し、以下のいずれかの条件を満たす場合、金額加重収益率での提示が可能となります。
- クローズドエンドポートフォリオ
- 有期
- 確定したコミットメント
- 流動性の低い資産に戦略の重要な部分を占める
金額加重収益率を使用する際、コンポジットの開始日からの直近の年度末時点までの期間の金額加重収益率の提示のみが必須となります。各年度末時点までの金額加重収益率の提示は必須ではなくなりました。
5. モデルフィー(運用報酬)
最も高い運用報酬を使用した運用報酬控除後の計算は必須ではなくなり、見込顧客に対し適切なモデルフィーを使用することが可能となります。モデルフィーを使用したコンポジットの運用報酬控除後収益率を計算する場合、その収益率は実際の運用報酬を使用した場合と同じかそれ以下でなければならないことに留意が必要になります。
6.検証意見
検証意見の範囲が、「検証対象期間において、会社のコンポジット及びプールド・ファンドの維持管理並びにパフォーマンスの計算、提示及び配布に関する方針と手続が、GIPS 2020に準拠してデザインされ、会社全体に適用されているか否か。」となり、期末時点から検証対象期間(1年)においての意見に変更になります。会社の経営者が、検対象期間において、GIPS 2020に準拠しているかの評価を行い、「検対象期間において、会社のコンポジット及びプールド・ファンドの維持管理並びにパフォーマンスの計算、提示及び配布に関する方針と手続が、GIPS 2020に準拠してデザインされ、会社全体に適用されている。」ことの表明である「経営者の記述書」に対する意見であることに変更はありません。
GIPS 2020への準拠について保証業務は、日本公認会計士協会が公表した保証業務実務指針3000「監査及びレビュー業務以外の保証業務に関する実務指針」及び保証業務実務指針3801「2020年版グローバル投資パフォーマンス基準準拠の検証」の保証業務に関する実務指針」に基づいて実施されます。