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「収益認識に関する会計基準等」インダストリー別解説シリーズ(6) 第6回 商社-本人と代理人の区分について

(月刊誌『会計情報』2019年5月号)

本稿では、商社ビジネスで見受けられる仲介取引に関して、主にステップ2(契約における履行義務の識別)に関する本人と代理人の区分について、収益認識会計基準等の適用にあたっての検討ポイントを中心に解説を行う。

著者:公認会計士 木村ᅠ真理

2018年3月30日に企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」という。)、企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針(以下「収益認識適用指針」といい、これらを合わせて「収益認識会計基準等」という。)が公表されている。

本稿では、商社ビジネスで見受けられる仲介取引に関して、主にステップ2(契約における履行義務の識別)に関する本人と代理人の区分について、収益認識会計基準等の適用にあたっての検討ポイントを中心に解説を行う。

1.商社取引について

商社は、一般的には、需給ギャップの調整弁として、原材料又は商品もしくはサービスについて、その供給者と需要家との間を取り持ち、それぞれと売買契約を締結し、当該取引を推進することを中核機能として発展してきた企業を指す。需給ギャップの調整を通じて商社が長年にわたり蓄積してきた機能として、物流機能(取引先のニーズに即した輸送業務の提供等)、情報・調査機能(海外拠点を通じた各地域の政治経済、市場情勢等の収集・分析)、事業開発・経営機能(バリューチェーンの構築等)、金融機能(取引先への与信供与等)があるほか、このような機能全てを有機的に組み合わせてプロジェクト(例えば、海外での病院の建設等)を推進する機能もある。このように商社は、通常、供給者と需要家それぞれと契約を締結し、様々な付加価値を提供していることから、契約における履行義務の識別(ステップ2)、とりわけ特定の財又はサービスの顧客への提供において、本人として関与しているのか、又は代理人として関与しているのかの決定については判断が求められる場合が多いと考えられる。

※続きは添付ファイルをご覧ください。

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