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「収益認識に関する会計基準等」インダストリー別解説シリーズ(7)第7回 物流企業における収益認識の論点
(月刊誌『会計情報』2019年7月号)
本稿では、物流企業における収益認識に関して、主にステップ2(履行義務の識別)とステップ5(履行義務の充足による収益の認識)について、収益認識会計基準等の適用にあたっての検討ポイントを中心に解説を行う。
著者:公認会計士 蕨 高明
2018年3月30日に企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」という。)、企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針(以下「収益認識適用指針」といい、これらを合わせて「収益認識会計基準等」という。)が公表されている。
本稿では、物流企業における収益認識に関して、主にステップ2(履行義務の識別)とステップ5(履行義務の充足による収益の認識)について、収益認識会計基準等の適用にあたっての検討ポイントを中心に解説を行う。
1. 物流企業の取引
物流企業は、集荷した荷主の荷物を配送先まで届ける集配業務だけでなく、入出庫や荷物の積み下ろし及び倉庫での保管等の荷役業務、荷主の依頼に基づく流通加工業務のほか、物流システムを利用した荷物の情報管理業務を含めて、提供する業務が多岐にわたる。
これは、物流企業に対する期待が、単に荷主の指示のもと、荷物を配送先までスピーディに届けることにとどまらず、荷主企業における物流プロセスを受託し、リードタイムの短縮、コストの削減、消費者ニーズへの柔軟な対応を実現するまでに広がってきたことによるものである。
今日の物流企業が担う業務が多岐にわたるために、収益認識会計基準等の適用にあたっては、まず契約における履行義務の識別(ステップ2)において判断が求められると考えられる。また、物流企業が委託先に委託してサービス提供している場合、特定の財又はサービスの顧客への提供において、本人として関与しているのか、又は代理人として関与しているのかの決定も論点になると考えられる。加えて、集配業務だけを捉えても、物流企業が荷主から荷物を集荷してから配送を完了するまでにはリードタイムが生じるため、履行義務の充足による収益の認識(ステップ5)においても判断が求められる場合が多いと考えられる。
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