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バーチャル株主総会の概要

月刊誌『会計情報』2022年3月号

公認会計士 清水 恭子

はじめに

経済産業省が2020年2月に公表した「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」(以下「実施ガイド」という)では、株主総会の開催方法を次のように分類している。


2022年1月時点において、上場会社は上記のいずれの方法でも株主総会を開催することが可能である。本稿では、バーチャル株主総会の概要について解説する。なお、本稿は有限責任監査法人トーマツ『会社法計算書類作成ハンドブック(第16版)』(2022年3月発売予定)第6章を基に執筆している。

559KB, PDF ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

1.リアル株主総会

リアル株主総会とは、取締役や株主等が一同に会する物理的な場所において開催される株主総会であり、上場企業の株主総会は、一般的にこの方法で開催されている。

株主総会の招集にあたっては、株主総会の日時及び場所を決定し、株主に通知しなければならない(会社法298Ⅰ①、299Ⅳ)とされている。会社法においては、定款に定めがない場合でも招集地を自由に定めることができ、株主の分布状況や出席状況をみながら柔軟な開催場所の選定が可能である。ただし、招集地が自由であるといっても、株主が出席困難であるような場所をあえて招集地として選定した場合には、招集手続が著しく不公正であるとの理由で株主総会決議の取消事由となり得るので注意を要する(会社法831Ⅰ①)。

株主総会の「場所」とは、株主が質問し説明を受ける機会を確保するため、株主が出席可能な会場を設けることと解されており、物理的な会場を用意しない株主総会は、会社法上認められないと解されていた。

 

2.ハイブリット型バーチャル総会

ハイブリット型バーチャル総会とは、取締役や株主等が一堂に会する物理的な場所で株主総会(リアル株主総会)を開催する一方で、リアル株主総会の場に在所しない株主がインターネット等の手段を用いて遠隔地から参加・出席することを許容する株主総会の形態である。現行の会社法でも開催が可能な方法であり、審議等を確認・傍聴することができるハイブリット「参加型」と、議決権行使や質問等ができるハイブリット「出席型」の二つの類型がある。

参加型の場合、リアル株主総会に出席していないバーチャル参加の株主は、会社法上の出席株主としては取り扱われない。そのため、株主総会に出席した株主に認められている質問(会社法314)や動議(会社法304等)を行うことはできない点留意が必要である。一方、出席型の場合、バーチャル出席の株主は、リアル株主総会に出席した株主と同じように会社法上の出席株主として取り扱われる。

「実施ガイド」では、ハイブリッド型バーチャル株主総会の留意事項として、円滑なインターネット等による視聴やバーチャル参加/出席を可能とする環境を整備・運用することや、映像配信時の株主の肖像権・個人情報・プライバシー等への配慮、招集通知等による株主等への議決権の行使や参加方法等の事前の十分な周知などの必要性等が指摘されている。また出席型の場合、どのような場合に決議取消事由にあたるかの経験則が不足していることや濫用的な質問が増加する可能性等も指摘されており、留意が必要である。

 

3.バーチャルオンリー型株主総会

バーチャルオンリー型株主総会とは、リアル株主総会を開催することなく、取締役や株主等が、インターネット等の手段を用いて株主総会に会社法上の「出席」をする「場所の定めのない株主総会」である。

2021年6月16日施行の産業競争力強化法の改正等(「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」(令和3年法律第70号)及び「産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会に関する省令」(令和3年法務省・経済産業省令第1号))により、会社法の特例として「場所の定めのない株主総会」に関する制度が創設された。

経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けた場合に限り、株主総会を「場所の定めのない株主総会」とすることができる旨を定款に定めることができ、この定款の定めのある上場会社については、バーチャルオンリー株主総会の開催を可能としている。(産業競争力強化法66Ⅰ・Ⅱ、産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会に関する省令1・2)。

なお、株主総会を場所の定めのない株主総会とすることができる旨の定款の定めを設けるには、株主総会の特別決議による定款変更が必要であるが、産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律(令和3年法律第70号)附則第3条で、施行後2年間は前述の両大臣の確認を受けた上場会社は、「定款の定め」があるものとみなすことができるとされている。

両大臣の確認方法や省令要件、定款の定め、招集通知、株主総会の運営方法等については、2021年6月に経済産業省と法務省の連名で「産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会に関する Q&A」が公表されている。

また、改正産業競争力強化法では、バーチャルオンリー型株主総会の実施に際し、いわゆる通信障害対策や、インターネットを使用することに支障のある株主の利益確保配慮策の策定が求められており(「産業競争力強化法第66条第1項に規定する経済産業大臣及び法務大臣の確認に係る審査基準」(2021年6月16日)」、留意を要する。

 

4.まとめ

以上をまとめると、以下の表のようになる。

リアル株主総会/ハイブリット型バーチャル株主総会/バーチャルオンリー型株主総会
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おわりに

COVID-19の感染拡大防止策の一環として、ハイブリット型バーチャル総会を開催する上場企業は増加している。さらに、バーチャルオンリー型株主総会を開催する企業も出はじめており、バーチャル株主総会については、今後実務が積みあがっていくものと思われる。

現時点でも、経済産業省から前述の「実施ガイド」に加え事例集(「ハイブリット型バーチャル株主総会の実施ガイド(別冊)実施事例集2021年2月3日策定」が公表されている。また、2021年11月に全国株懇連合会が、提案書「バーチャル総会の運営実務」(2021年10月22日付)を東京株式懇話会のウェブサイトで公表している。当該資料では、ハイブリット参加型/出席型バーチャル総会とともに、バーチャルオンリー型株主総会についても運営に係る実務上の考慮事項等が記載されている。

以 上

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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