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IASB、OECDの第2の柱モデルルールから生じる繰延税金の会計処理について一時的な例外を導入するIAS第12号の修正を提案する

iGAAP in Focus 財務報告|月刊誌『会計情報』2023年3月号

注:本資料はDeloitteのIFRS Global Officeが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、原文については英語版ニュースレターをご参照下さい。

トーマツIFRSセンター・オブ・エクセレンス

本iGAAP in Focusは、2023年1月に国際会計基準審議会(IASB)によって公表された公開草案IASB/ED/2023/1「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール」に示されているIAS第12号「法人所得税」の修正案について解説するものである。

  • IASBは、OECD第2の柱モデルルールの実施から生じる繰延税金の会計処理について一時的な例外と、影響を受ける企業に対する的を絞った開示要求を導入する、IAS第12号の修正を提案する。
  • 本例外を適用することにより、企業はOECD第2の柱モデルルールに関する法人所得税に関連する繰延税金資産及び負債を認識しない。また、これらの繰延税金資産及び負債に関する情報も開示しない。
  • 第2の柱モデルルールに関する法制が制定された、又は実質的に制定されたが、まだ施行されていない期間において、企業は以下を開示する。
    • 企業が営業を行っている法域で制定又は実質的に制定された法制に関する情報
    • 企業の当期平均実際負担税率が15%未満である法域
    • 15%の閾値が適用されないが、企業が第2の柱モデルルールに関する法人所得税を支払うことを見込んでいる法域、又は15%の閾値が適用されているにもかかわらず第2の柱モデルルールに関する法人所得税を支払わない法域があるかどうか
  • IASBは、本例外を適用すること及び本例外を適用したことを開示する要求事項について、本修正の公表後直ちに、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従って、企業が遡及的に適用することを提案する。残りの開示要求は、2023年1月1日以後開始する事業年度に要求される。
  • 修正案に対するコメントは、2023年3月10日まで募集している。
508KB, PDF ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

背景

2022年3月OECDは、経済のデジタル化から生じる税の課題に対処するためのプロジェクトの第2の「柱」として合意された15%のグローバル・ミニマム課税についてテクニカル・ガイダンス*1を公表した。このガイダンスは、2021年12月に合意し公表されたグローバル税源侵食防止(GloBE)ルール*2の適用及び運用について詳しく説明している。これは、収益が7億5,000万ユーロを超える多国籍企業(MNE)が、事業を行う各法域で発生する所得に対して少なくとも15%の税金を支払うことを保証するための調整されたシステムを構築する。

IASBは、IAS第12号を適用する法人所得税の会計処理に関するこれらの「第2の柱」モデルルールの、法域での差し迫った実施の潜在的な影響に関する利害関係者の懸念に対応することを決定した。

修正案

IASBは、IAS第12号の範囲を修正し、OECDが公表した第2の柱モデルルールを実施するために制定又は実質的に制定された税法(同ルールに記載された適格国内ミニマム・トップ・アップ税を実施する税法を含む)に適用されることを、明確化することを提案する。

本修正は、IAS第12号の繰延税金の会計処理の要求事項に一時的な例外を導入し、企業は、第2の柱モデルルールに関する法人所得税に関連する繰延税金資産及び負債に関する情報を、認識も開示もしないこととなる。

見解

IASBは、第2の柱モデルルールに関する法人所得税に関連する繰延税金を会計処理するために、企業がIAS第12号の原則及び要求事項をどのように適用するかを決定するために、さらなる作業が必要であることを認識している。IASBはまた、利害関係者とさらに関与し、例えば、IAS第12号の一貫した適用を支援するために何らかの行動が必要かどうかを検討する時間を必要とする。

したがって、IASBは、EDの公表時点では、そのような作業にどれくらいの時間を要するかを判断することはできないと結論付けた。したがって、IASBは、一時的な例外がいつまで実施されるかを特定しないことを提案している。

 

企業は、本例外を適用した旨の開示が要求される。

第2の柱モデルルールに関する法制が制定又は実質的に制定されたが、まだ施行されていない期間において、企業は以下を当期について開示する必要がある。

  • 企業が営業を行っている法域で、制定又は実質的に制定された法制に関する情報
  • 当期の平均実際負担税率(すなわち、税金費用又は収益を会計上の利益で割ったもの)が15%未満である法域。企業はまた、これらの法域の税金費用又は収益及び会計上の利益の合計、及び結果としての加重平均実際負担税率を開示する
  • 企業が第2の柱モデルルールに関する法制を遵守するための準備において行った評価により、次のいずれかとなる法域があることを示しているかどうか:
    • 実際負担税率が15%未満であるが、企業が第2の柱モデルルールに関する法人所得税の支払いの対象とならない可能性がある
    • 実際負担税率が15%を超過しているが、企業が第2の柱モデルルールに関する法人所得税の支払いの対象となる可能性がある場合

第2の柱の法制が施行された場合、企業は、第2の柱モデルルールに関する法人所得税に関連する当期税金費用又は収益を区分して開示する。

発効日、経過措置及びコメント期間

IASBは、企業が本例外を適用すること及び本例外を適用したことを開示する要求事項を、本修正の公表後直ちに、IAS第8号に従って遡及的に適用することを提案する。

残りの開示要求は、2023年1月1日以後開始する事業年度に適用される。

見解

第2の柱モデルルールの実質的な制定は、2022年末の時点でほとんどの国及び法域では行われていない。*3これは、2022年12月31日時点でIAS第12号に基づいて計算された税金の残高は影響を受けないことを意味する。しかし、IAS第10号「後発事象」は、一般的に開示が要求される修正を要しない後発事象の例として、「報告期間後に制定又は発表された税率又は税法の変更で、当期税金及び繰延税金の資産及び負債に重大な影響を及ぼすもの」を挙げていることに留意すべきである。

したがって、企業は、OECDのテクニカル・ガイダンスとその実施に対する該当する政府のコミットメントのレベルが、営業を行っている法域における税法の変更の発表を構成するかどうかを評価する必要がある。この場合、本ルールが営業に重大な影響を与える可能性があると企業が結論付けた場合、当該事実を、影響の見積り又はそのような見積りを行うことができない旨とともに財務諸表に開示する。

 

EDのコメント期間は2023年3月10日に終了する。

以上

*1 OECDのウェブサイトを参照いただきたい。(https://www.oecd.org/tax/beps/oecd-releases-detailed-technical-guidance-on-the-pillar-two-model-rules-for-15-percent-global-minimum-tax.htm)
*2 OECDのウェブサイトを参照いただきたい。(https://www.oecd.org/tax/beps/tax-challenges-arising-from-the-digitalisation-of-the-economy-global-anti-base-erosion-model-rules-pillar-two.htm)
*3 (訳者注)2022年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正大綱」には、第2の柱モデルルールのうち所得合算ルール(IIR)を2024年4月1日以後開始する事業年度に導入することが含まれている。我が国においては、第2の柱モデルルールに関する法人税法の改正が、国会において可決、成立した場合に、実質的な制定が行われているかどうかの検討が必要になると考えられる。

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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