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IASB、公開草案「資本の特徴を有する金融商品」を公表

iGAAP in Focus 財務報告|月刊誌『会計情報』2024年2月号

注:本資料はDeloitteの IFRS Global Officeが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、原文については英語版ニュースレター*をご参照下さい。

トーマツIFRSセンター・オブ・エクセレンス

公開草案(ED)「資本の特徴を有する金融商品」に示されたIAS第32号「金融商品:表示」、IFRS第7号「金融商品:開示」及びIAS第1号「財務諸表の表示」の修正案を解説する。

  • IASBは、IAS第32号の原則を明確にすることにより、金融商品の分類から生じる課題に対処し、 表示及び開示の要求事項を拡充する、 IAS第32号、IFRS第7号及びIAS第1号の修正を提案する。
  • 特に、IASBは、以下を明確にするためにIAS第32号の修正を提案する。
    • 金融商品の分類における関連性のある法令の影響(金融商品に適用される法律上又は規制上の要求等)
    • 発行体自身の資本性金融商品で決済される又は決済される可能性のあるデリバティブを分類するための「固定対固定」の条件
    • 企業自身の資本性金融商品を購入する義務を含む金融商品を分類する要求事項
    • 条件付決済条項を有する金融商品を分類する要求事項
    • 金融商品の分類に対する株主の裁量の影響
    • 金融商品(又はその構成部分)が 当初認識後に金融負債又は資本性金融商品に分類変更される状況
  • IASBはまた、企業が発行する金融商品に関する開示及び表示の要求事項を拡充する、IFRS第7号及びIAS第1号の修正を提案する。
  • EDは、本修正の発効日を指定していない。企業は、本修正を遡及的に適用することが要求される。しかし、IASBは、複数の比較期間についての情報の修正再表示を要求しないことを提案する。
  • EDのコメント期間は、2024年3月29日に終了する。

 

571KB, PDF ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

背景

IAS第32号が公表されて以降、金融のイノベーション、市場の力及び金融セクターの規制の変更により、金融負債と資本の両方の特徴を有する複雑な金融商品の数が増加している。この状況は、IAS第32号を適用する企業にとって課題であり、そのような金融商品の分類に関する実務上の不統一をもたらし、財務諸表の比較可能性及び理解可能性を低下させている。これにより、財務諸表の利用者は、金融商品が発行者の財政状態及び財務業績に与える影響を評価することが困難になる。

IASBは、2018年6月に公表されたディスカッション・ペーパー(DP)「資本の特徴を有する金融商品」に対して受け取ったフィードバックを検討した後、DPで提案された分類アプローチを採用しないことを決定した。その代わりに、IASBは、IAS第32号の適用において生じる既知の実務上の問題に対処するために、IAS第32号の分類の要求事項を、その基礎となる原則を含めて明確化することに重点を置くことを決定した。また、IASBは、企業が発行する金融商品に関するIFRS第7号の開示要求、及びIAS第1号における普通株主に帰属する金額の表示を拡充することを提案する。

 

修正案

関係法令の影響

IAS第32号における金融資産及び金融負債の定義は、契約上の権利及び契約上の義務を参照している。しかし、(法律上又は規制上の要求のような)金融商品に適用される法令が金融商品の分類に影響を与えるかどうか、またどのように影響を与えるのかについて、実務上問題が生じる。

IASBは、金融商品(又はその構成部分)の分類において、法律により強制可能であり、かつ関連性のある法令により生じる権利及び義務に追加する契約上の権利及び義務のみが考慮されることを明確にすることを提案する。権利又は義務が関連性のある法令により生じ、契約上の取決めに含まれているかどうかに関係なく適用される場合、企業は、金融商品(又はその構成部分)を金融負債、金融資産、又は資本性金融商品として分類する際に、当該権利又は義務を考慮しない。
 

企業自身の資本性金融商品による決済

資本性金融商品として分類されるためには、デリバティブは、IAS第32号で要求されているように、発行者が固定額の現金又は他の金融資産を、発行体自身の資本性金融商品の固定数と交換することによってのみ決済されるものでなければならない。 この要求事項は、「固定対固定」条件と呼ばれることがある。実務上の問題として、固定対固定の条件を満たすために、交換される対価の金額、又は引き渡す企業自身の資本性金融商品の数の変動が許容されるかどうかについて生じている。
IASBは、IAS第32号の固定対固定条件が満たされる状況を明確にすることを提案する。特に、企業のそれぞれの資本性金融商品と交換される対価の金額が、企業の機能通貨建でなければならないことを明記することを提案している。さらに、次のいずれかであるかについての検討が要求される。

  • 固定(すなわち、いかなる状況においても変動しない)、又は
  • 以下のいずれかの理由のみで変動する。
    • 維持調整により企業が将来の株主の相対的な経済的持分を既存の株主と同等か又はそれを下回るように維持することを要求される場合。
    • 以下のすべてを満たす、時の経過による調整:
      • 事前に決定されている。
      • 時の経過によってのみ変動する。
      • 当初認識時に、企業自身のそれぞれの資本性金融商品に対して交換された対価の金額の現在価値に固定する効果を有する。
         
見解

IASBは、どのような時の経過による調整が固定対固定条件と整合的であるかを決定するにあたり、以下を要求することを含むさまざまなアプローチを検討した。

  • 可能性のあるそれぞれの決済日において企業自身の資本性金融商品のそれぞれに対して支払われる又は受け取る対価の金額が、契約の開始時に事前に決定され、時間の経過によってのみ変化し、合理的である。
  • 単に調整が合理的である(調整が契約の開始時に事前に決定されていること、又は時の経過とともにのみ変動することを要求しない)。

IASBは、いずれのアプローチも、調整が合理的かどうかを決定するために企業に判断を要求するため、これらのアプローチを提案しないことを決定した。IASBは、企業がその判断を支援するための適用指針が開発されたとしても、そのような調整は実務上非常に主観的である可能性があるため、要求事項の一貫した適用を達成することは困難であるという見解を示した。

 

またIASBは、一方の当事者に、企業自身の2つ以上のクラスの資本性金融商品間の決済の選択肢を与えるデリバティブの会計処理を明確にすることも提案する。そのような場合、企業は、決済時に引き渡される可能性のある自身の各クラスの資本性金融商品について、固定対固定の条件が満たされているかどうかを検討する。このようなデリバティブは、すべての決済の選択肢が固定対固定の条件を満たしている場合にのみ、資本性金融商品となる。

IASBはさらに、ある企業のあるクラスのデリバティブ以外の資本性金融商品の固定数を、自身の別のクラスのデリバティブ以外の資本性金融商品の固定数とに交換することによって決済される、又は決済される可能性のある契約は、資本性金融商品であることを明確にすることを提案する。

EDは、固定対固定条件の適用に関する設例を提案している。
 

企業自身の資本性金融商品を購入する義務

IAS第32号は、企業が自己の資本性金融商品を購入する義務を含む契約に対する要求事項を定めている。これらには、企業自身の株式を購入する先渡契約、及び保有者に企業に自己の株式を購入することを要求する権利を与える売建プット・オプションが含まれる。

当該要求事項から生じる実務上の問題に対処するため、IASBは、以下を明確にすることを提案する。

  • 当該要求事項は、現金又は他の金融資産で決済される契約上の義務にのみ適用されるわけではない。これらは、企業自身の他のクラスの資本性金融商品の可変数を引き渡すことにより決済される契約にも適用される。
  • 自身の資本性金融商品を購入する義務の当初認識時において、企業が、原資産である資本性金融商品の所有持分に関連する権利及びリターンに対するアクセスをいまだ有していない場合、当該資本性金融商品は、引き続き認識される。そのため、金融負債の当初認識額は、借方は非支配持分又は発行済資本金で認識されない。代わりに、金融負債の当初金額は、資本の他の内訳項目から控除される。
  • 企業は、金融負債の当初測定及び事後測定に同じアプローチを使用することが要求される(すなわち、償還金額の現在価値で負債を測定し、相手方がその償還権を行使する蓋然性及び時期の見積りを無視する)。
  • 金融負債の再測定による利得又は損失は、純損益に認識される。
  • 契約が引渡しをせずに期限満了する場合:
    • 金融負債の帳簿価額は、金融負債から除去され、金融負債の当初認識において控除された資本の同じ内訳項目に含まれる。
    • 金融負債の再測定によってこれまで認識された利得又は損失は、純利益に戻入れされない。しかし、企業は、当該利得又は損失の累計額を、利益剰余金から利益剰余金から資本の他の内訳項目に振り替えることができる。
  • 総額現物決済される企業自身の資本性金融商品についての売建プット・オプション及び先渡購入契約(すなわち、自己の資本性金融商品と対価との交換がある場合)は、総額ベースで表示することが要求される。
     
見解

長年にわたり、総額現物決済される、企業自身の資本性金融商品についての売建プット・オプション及び先渡購入契約に関するIAS第32号の適用についてのいくつかの質問は、IFRS解釈指針委員会が取り扱ってきた。 また、DPへの回答として、そのような契約の適切な総額表示に関する懸念も提起された。

しかし、IASBは、義務の決済時に支払われる対価の総額について金融負債を認識することは、利用者が企業の流動性リスクへのエクスポージャーを評価するのに役立つという見解を維持している。そのため、IASBは、この要求事項の変更を提案していない。

1名のIASBメンバーは、この決定に同意しないため、EDの公表に反対票を投じた。彼はまた、子会社の所有持分を購入する契約について相殺する借方は、非支配持分に対してではなく、親会社の株主の所有持分の内で認識されるという、要求事項案に同意しない。

 

条件付決済条項

金融商品には、条件決済条項が含まれる場合がある。例えば、ある金融商品は、発行者と金融商品の所有者の双方のコントロールが及ばない不確実な将来の事象が発生した場合にのみ、現金での決済を要求する場合がある。IASBは、そのような金融商品がIAS第32号を適用してどのように分類されるかについての要求事項を明確にすることを提案する。

特に、IASBは、以下を明確にすることを提案している。

  • 金融商品が負債と資本の両方の構成部分を含むかどうかを評価するIAS第32号28項の要求事項は、条件付決済条項を有する金融商品にも適用される。したがって、そのような金融商品は、(全体として金融負債ではなく)負債と資本の構成部分を有する複合金融商品である可能性がある。
  • 条件付決済条項から生じる金融負債(又は複合金融商品の負債の構成部分)の当初及び事後測定は、偶発的事象の発生又は非発生の蓋然性及び時期の見積りを考慮しない。
  • 複合金融商品の資本の構成部分の当初の帳簿価額がゼロである場合でも、発行者の裁量で行われる支払いは、資本に認識される。
  • 「清算」という用語は、企業がその営業を永久に終了することを開始する過程にあることを指す。
  • 契約条件が「真正なものでない」かどうかの評価には、特定の事実と状況に基づく判断が要求され、 偶発的な事象が発生する確率又は可能性にのみに基づくことはない。
     

株主の裁量

企業が、IAS第32号を適用して金融商品を金融負債又は資本性金融商品として分類する際に、契約上の義務を決済するために現金又は他の金融資産の引渡しを回避する無条件の権利を有するかどうかを検討する。場合によっては、決済は企業の株主の裁量による。例えば、企業は、普通株主の承認を条件とするクーポンの支払いを企業に要求する優先株式を発行する場合がある。そのような場合、株主の決定を企業の決定として扱うかどうか、また、企業が現金又はその他の金融資産の引渡しを回避する(又は金融負債となるような方法で決済する)無条件の権利を有するかどうかに、株主の意思決定権がどのように影響するかについて、実務上の問題が生じる。

これらの問題に対処するため、IASBは以下を提案する。

  • 企業が現金又は他の金融資産の引渡しを回避する(又は金融負債となるような方法で金融商品を決済する)無条件の権利を有するかどうかは、株主の裁量が生じる事実及び状況によることを明確にする。株主の決定が企業の決定として扱われるかどうかを評価するには、判断が要求される。
  • 以下の、当該評価を行う際に企業が考慮することが要求される要素を記述する。
    • 株主の決定は、企業の事業活動の通常の過程で行われる、本質的に日常的なものである。 日常的な決定は、企業の決定として扱われる可能性が高い。
    • 株主の決定は、提案された行動又は経営者により行われた取引に関連している。経営者が行動を提案しないことにより現金の流出を回避できる場合、株主の裁量は分類に影響を与えない。しかし、株主の決定が第三者によって行われた行動に関連する場合、株主の決定が企業の決定として扱われる可能性は低い。
    • 異なるクラスの株主は、株主の決定から異なる便益を得る。それぞれのクラスの株主が特定のクラスの株式の投資者として独立した決定を行う可能性が高い場合、株主の決定は企業の決定として扱われる可能性は低い。
    • 株主の意思決定権を行使することにより、株主は、企業に現金又は他の金融資産による(又は金融負債となるような方法で決済する)株式の償還(又は株式のリターンの支払い)を要求することができる。そのような意思決定権は、株主が投資者として個別に決定をおこない、株主の決定が企業の決定として扱われる可能性が低いことを示している。
       
見解

株主の裁量が金融商品の分類にどのような影響を与えるかを検討するにあたり、IASBは、株主は企業の一部であると考える利害関係者(株主の決定は企業の決定として扱われるべきである)と、株主は企業とは別個のものであると考える利害関係者(株主の決定は決して企業の決定として扱われるべきではない)という対照的な見解に留意した。

IASBは、金融商品の分類にこのような「オール・オア・ナッシング」アプローチを適用することは、会計の根本的な変更を表し、IASBのプロジェクトの範囲を超えると結論付けた。その代わりに、IASBは、株主の決定が企業の決定として扱われるかどうかを評価する際に、企業が考慮する要素のリストを提案することを決定した。

 

金融負債と資本性金融商品の分類変更

IAS第32号は、金融商品の発行者に、契約上の取決めの実質と金融負債と資本性金融商品の定義に基づいて、金融負債又は資本性金融商品として当初認識において金融商品を分類することを要求する。

しかし本基準には、当初認識後に金融商品を分類変更するかどうか、又はいつ分類変更するか、分類変更する場合、当該分類変更をどのように会計処理するかについての全般的な要求事項は含まれていない。

実務上、金融商品を分類変更すべきかどうかの問題は、主に契約条件を変更することなく契約上の取決めの実質が変更される場合に生じる。これは、契約上の取決めの外にある状況の変化(例えば、企業の機能通貨又はグループ構造の変更など)のためである場合がある。

この問題に対処するため、IASBは以下を提案している。

  • IAS第32号16E項が適用される場合(これは、プッタブル金融商品及び清算時にのみ企業の純資産の比例的な取り分を他の当事者に引き渡す義務を企業に課す金融商品の分類変更)、又は契約上の取り決めの内容が、契約上の取決め外の状況の変化により変更される場合を除き、当初認識後に金融商品の分類変更を禁止する全般的な要求事項を追加する。
  • 契約上の取決めの実質が、契約上の取決め外の状況の変化により変化した場合、企業は以下を行う。
    • 状況の変化が発生した日から将来に向かって金融商品を分類変更する。
    • 資本から分類変更された金融負債は、分類変更日における当該金融負債の公正価値で測定する。分類変更日における資本性金融商品の帳簿価額と金融負債の公正価値との差額は、資本で認識する。
    • 金融負債から分類変更された資本性金融商品は、分類変更日における当該金融負債の帳簿価額で測定する。分類変更において、利得又は損失は認識されない。
  • 分類変更が要求される契約上の取決め外の状況の変化の例を提供する。
     
見解

IASBは、金融商品が金融負債又は資本性金融商品に分類変更される日の代替案を検討した。例えばIASBは、状況の変化が生じた報告期間の末日にのみ、金融商品の分類変更を要求することを検討した。これは、企業が適用するのが最も簡単で、最もコストがかからない。

しかし、そのようなアプローチを適用した場合、分類変更の時期は報告頻度によって異なることとなる。さらに、 本アプローチは、IAS第32号の既存の分類変更の要求事項と矛盾するものである。当該要求事項は、プッタブル金融商品及び清算時にのみ企業の純資産の比例的な取り分を他の当事者に引き渡す義務を企業に課す金融商品が特定の要件を満たしている場合、当該金融商品に適用される。IAS第32号は、そのような金融商品は、当該金融商品が資本性金融商品と分類されるための特定の要件を満たす(又は満たさなくなる)時に、分類変更されることを要求している。

したがってIASBは、状況の変化の日が金融商品の分類変更に最も適切な日であることを決定した。

 

開示要求

IASBは、DPの開示要求の一部を改良した。それは、金融商品の将来キャッシュ・フローの時期、金額、性質及び不確実性について有用な情報を開示することを要求するために開発された。

IASBは、IFRS第7号の目的及び範囲を拡大し、IAS第32号の範囲に含まれる資本性金融商品を含めることを提案する。また、IASBは、分類及び表示のトピックに関する審議に基づいて、追加の開示要求を提案している。

  • 清算時に金融負債及び資本性金融商品から生じる企業に対する請求権の性質及び優先順位
  • 金融負債と資本の両方の特徴を有する金融商品の契約条件
  • 時の経過により有効になる、又は有効でなくなる契約条件
  • 普通株式の潜在的な希薄化
  • 企業自身の資本性金融商品を購入する義務を含む商品
  • 企業の業績又は企業の純資産の変動に基づいて金額を支払う契約上の義務を含む金融負債
  • 金融負債と資本性金融商品の分類変更
  • 判断

EDには、IFRS第7号の適用ガイダンスへの追加が提案されている設例が含まれている。

普通株主に帰属する金額の表示

IAS第32号及びIFRS第7号における分類及び開示要求の修正案は、企業が発行した金融商品について財務諸表の利用者に提供する情報を改善することを意図している。 

この目的をさらに追求するため、IASBは、IAS第1号を修正し、普通株主に帰属する金額に関する追加情報の提供を企業に要求することも提案する。修正案を適用することにより、企業は以下を行うこととなる。

  • 財政状態計算書において、親会社の普通株主に帰属する発行済資本金及び剰余金を、親会社の他の所有者に帰属する発行済資本金及び剰余金と区分して表示する。
  • 包括利益計算書において、親会社の普通株主と親会社の他の所有者に帰属する純損益及びその他の包括利益の配分を表示する。
  • 持分変動計算書又は注記における資本の内訳項目の調整において、各クラスの普通株式資本金及び各クラスの他の拠出済資本を含める。
  • 普通株主に関連する配当額を、企業の他の所有者に関連する金額と区分して表示する。

EDには、IAS第1号の適用ガイダンスに追加することが提案されている設例が含まれている。
 

適格子会社に対する開示要求

IASBは、EDにおける提案が最終化される前に公表される、会計基準「公的説明責任のない子会社:開示」のドラフトを修正することを提案している。これにより、適格な子会社は、IFRS会計基準の認識、測定及び表示要求事項を、削減された開示とともに適用することが認められる。

EDは、IFRS第7号について提案された開示要求のうち、IASBが合意した開示削減の原則に基づいて、削減された開示のフレームワークで適用されるものを示している。

 

経過措置、発効日及びコメント期間

IASBは、比較情報の修正再表示と共に、修正案を遡及的に適用することを企業に要求することを提案している。しかし、コストを最小化するため、IASBは、企業が財務諸表に複数の比較期間を表示することを選択している又は要求されている場合でも、複数の比較期間について情報の修正再表示を要求しないことを提案している。

IFRS会計基準をすでに適用している企業に対して、IASBは以下を提案している。

  • 企業がIFRS第9号「金融商品」における実効金利法を遡及的に適用することが実務上不可能な場合(IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬の訂正」で定義)、企業は、移行日における公正価値をその時点での金融負債の償却原価として取り扱うことが要求される。
  • 条件付決済条項を伴う複合金融商品の負債の構成部分が、適用開始日にもはや残高がない場合、負債と資本の構成部分を分離することを企業に要求しない。
  • 本修正の適用開始日を含む報告期間に、企業に本修正の適用から生じる分類の変更の性質及び金額を開示することを要求する。
  • IAS第8号28項(f)における定量的開示からの経過的な救済措置を提供する。
  • 企業が最初に本修正を適用する年次期間中に発行される期中財務諸表について、IAS第34号「期中財務報告」に関連して特定の経過措置を提供しない。

IASBは、初度適用企業に対する追加の移行時の要求事項を提案していない。

EDは発効日を提案していない。発効日は、IASBが提案を再審議した時点で決定される。

EDのコメント期間は2024年3月29日までである。

以上

 

* 英語版ニュースレターについては、IAS Plusのウェブサイトを参照いただきたい。
https://www.iasplus.com/en/publications/global/igaap-in-focus/2023/ed-fice

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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