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IASB、超インフレ表示通貨への換算に関するIAS第21号の修正を提案

iGAAP in Focus 財務報告|月刊誌『会計情報』2024年10月号

トーマツIFRSセンター・オブ・エクセレンス

注:本資料はDeloitteのIFRS Global Officeが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。
この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、原文については英語版ニュースレター1をご参照下さい。

 

本iGAAP in Focusでは、2024年7月25日に国際会計基準審議会(IASB)から公表された公開草案「超インフレ表示通貨への換算」(ED)に示される、IAS第21号「外国為替レート変動の影響」の修正案を解説する。

  • IASBは、企業が超インフレではない経済の通貨である機能通貨から超インフレ経済の通貨である表示通貨に金額を換算する場合、比較金額を含め、当該金額を直近の財政状態計算書の日の決算日レートを使用して換算するようIAS第21号を修正することを提案している。
  • 企業の表示通貨が超インフレ経済の通貨でなくなり、その機能通貨が引き続き超インフレではない経済の通貨である場合、企業は、そのような状況にIAS第21号で現在適用されている方法を(比較金額を再表示せず)将来に向かって適用する。
  • 企業は、換算方法案を適用して換算した在外営業活動体に関する要約財務情報を含む、EDで提案されている方法を適用していることを開示することが要求される。
  • 本修正は、遡及的に適用しなければならない(発効日はまだ決定されていない)。
  • コメント期間は、2024年11月22日までである。
[PDF, 488KB] ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

背景

IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)は、超インフレ経済におけるIAS第21号及びIAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」の適用に関する要望書を受け取った。当該要望書は、機能通貨及び表示通貨が超インフレ経済の通貨である企業が、機能通貨が超インフレ経済でない通貨である在外営業活動体の成果及び財政状態をどのように換算するかを質問した。当該状況では、企業はIAS第21号39項を適用し、以下を行う。

  • 各財政状態計算書の資産及び負債を、当該財政状態計算書の日の決算日為替レートで換算する。
  • 取引日の為替レートを使用して収益及び費用を換算する。
  • 比較金額を修正再表示しない。

しかし、企業の機能通貨及び表示通貨は超インフレ経済の通貨であるため、IFRS ICは、IAS第21号39項を適用した後、企業がIAS第29号26項及び34項を適用して、当期の収益と費用、及び在外営業活動体のすべての比較金額を報告期間の末日の現在の測定単位に基づいて修正再表示することが要求されるかどうかを質問された。

IFRS ICは、企業が当期の収益、費用、及び比較金額を修正再表示することも、修正再表示しないことも正当化できることに留意した。したがって、IFRS ICは、当該事項をIASBに委ね、当該論点に対処するためにIAS第21号の狭い範囲の修正を提案することを決定した。

 

修正案

換算方法案

IASBは、ある企業の表示通貨が超インフレ経済の通貨であるが、その機能通貨が超インフレではない経済の通貨である場合、企業は、比較を含む財務諸表のすべての金額を、直近の財政状態計算書の日の決算日レートで換算することを要求するようIAS第21号の修正を提案する。

企業の表示通貨が超インフレ経済の通貨でなくなり、その機能通貨が引き続き超インフレではない経済の通貨である場合、企業は、そのような状況に、IAS第21号で現在適用されている方法を(比較金額を修正再表示せず)将来に向かって適用する。すなわち、各財政状態計算書の資産及び負債は、当該財政状態計算書の日の決算日レートで換算される。また、収益及び費用は取引日の為替レートで換算され、結果として生じるすべての為替差額は他の包括利益に認識される。

見解

本論点について協議した利害関係者は、超インフレ経済の通貨で表示された金額は、現在の測定単位で表現された場合にのみ有用であると説明した。

IASBは、換算方法案が、機能通貨が超インフレの通貨である企業の財務諸表の換算にすでに使用されている結果として、企業が現在の測定単位で換算の対象となる金額を表示することになると見込んでいる。

 

開示要求案

換算方法案を使用する企業は、以下を開示することが要求される。

  • 換算方法案を適用したという事実
  • 換算方法案を適用して換算した在外営業活動体に関する要約財務情報
  • 通貨が企業の表示通貨である経済が超インフレでなくなった場合、当該事実

IASBは、IFRS第19号「公的説明責任のない子会社:開示」の適用に適格であり、適用することを選択した子会社にも、同じ開示要求が適用されることを提案している。

 

発効日、経過措置及びコメント期間

EDは発効日を提案していない。発効日は、IASBが本提案を再審議する際に決定される。

移行に関して、IASBは以下を提案する。

  • IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従って、本修正を遡及的に適用することを企業に要求する。
  • IAS第8号28項(f)又はIFRS第19号178項(f)で要求される情報の開示を、企業に要求しない。
  • 企業が、発効日より前に本修正を適用することを認める。

本EDのコメント期間は、2024年11月22日に終了する。

以上

 

1 英語版ニュースレターについては、IAS Plusのウェブサイトを参照いただきたい。
(https://www.iasplus.com/en/publications/global/igaap-in-focus/2024/hyperinflation-ed)

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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