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IASB、IFRS第19号の修正を提案

iGAAP in Focus 財務報告|月刊誌『会計情報』2024年11月号

トーマツIFRSセンター・オブ・エクセレンス

注:本資料はDeloitteのIFRS Global Officeが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、原文については英語版ニュースレター1をご参照下さい。

 

本iGAAP in Focusでは、2024年7月30日に国際会計基準審議会(IASB)から公表された公開草案「IFRS第19号『公的説明責任のない子会社:開示』の修正」(ED)を解説する。

  • IASBは、新たな又は最近修正されたIFRS会計基準の開示要求の削減を提供するIFRS第19号の修正を提案する公開草案を公表した。
  • 修正案は、以下の新たな基準及び最近の修正に関するものである。
    –IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」
    –「サプライヤー・ファイナンス契約」(IAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」の修正)
    –「国際税務改革―第2の柱モデルルール」(IAS第12号「法人所得税」の修正)
    –「交換可能性の欠如」(IAS第21号「外国為替レート変動の影響」の修正)
  • 以下の項目については、開示要求の削減は提案されていない。
    –金融商品の分類及び測定に関する最近の修正
      (IFRS第9号「金融商品」及びIFRS第7号「金融商品:開示」の修正)
    –将来公表予定のIFRS会計基準「規制資産及び規制負債」
  • 発効日又は経過措置は提案されていない。
  • コメント期間は2024年11月27日までである。
[PDF, 506KB] ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

背景

2024年5月、IASBはIFRS第19号を公表した。IFRS第19号の適用を選択した要件を満たす子会社は、開示要求を除き他のIFRS会計基準の要求事項を適用し、代わりにIFRS第19号の開示要求を適用する。

IFRS第19号の開示要求は、他のIFRS会計基準に由来する。IFRS第19号には、2021年2月28日より前に公表されたIFRS会計基準の開示要求の削減が含まれている。2021年2月28日から2024年5月1日の間に公表された新たな又は修正されたIFRS会計基準の開示要求は、IASBがこれらの要求事項の削減について協議していなかったため、現在、IFRS第19号に削減されることなく含まれている。

IASBは、IFRS第19号の開示要求をこれらの新たな基準又は修正基準から更新し、IFRS第19号が、削減された開示要求を開発するためのIASBの原則を反映した開示要求のみを含むようにすることを提案している。さらに、IASBは、将来公開予定のIFRS会計基準「規制資産及び規制負債」の開示要求を削減するべきかどうかについて見解を求めている。

見解

IFRS第19号は、他のIFRS会計基準の新たな又は修正された開示要求と常に最新の状態を維持し、一貫性を確保するために、必要に応じて引き続き修正される。IASBは、新たな基準を開発する又は基準の修正を行う際には、開示要求の削減に関する原則を適用し、要件を満たす子会社のコストと便益を評価する。その後、IASBは、開示要求の削減に関するフィードバックを得て、それらをIFRS第19号の結果的修正として公表し、これは新たな基準又は修正の付録に含まれる。

 

修正案

財務諸表における表示及び開示

IASBは、IFRS第18号に関連するIFRS第19号の開示要求の大部分を維持することを提案している。唯一の大幅な変更案は、IFRS第19号から、経営者が定義した業績指標(MPM)に関する要求事項を削除することである。代わりに、IFRS第18号で定義されているMPMを使用する要件を満たす子会社は、IFRS第18号の関連する(完全な)開示要求を適用することが要求される。

IASBはまた、特約条項付非流動負債に関するIFRS第19号の開示目的を削除することを提案している。

サプライヤー・ファイナンス契約

IASBは、サプライヤー・ファイナンス契約に関するIFRS第19号の開示要求を、一部の修正を加えつつも維持することを提案している。IASBは、IFRS第19号に開示目的を含めないという決定と整合的に、IFRS第19号にこれまで含まれていた開示目的を削除することを提案している。また、以下も提案している。

  • IAS第7号からサプライヤー・ファイナンス契約の記述を含む新しい項を追加する。
  • IFRS第19号において、削除が提案されている開示目的への参照を削除する。

国際税務改革―第2の柱モデルルール

IASBは、以下を導入したIAS第12号の修正に関連するIFRS第19号の開示要求を維持することを提案している。

  • 第2の柱の法人所得税に関連する繰延税金資産及び負債に関する情報を認識し開示する要求事項の一時的な例外
  • 影響を受ける企業に対する的を絞った開示要求

唯一の変更案は、IFRS第19号から、当該修正によって導入された開示目的及び当該目的への参照を削除することである。

交換可能性の欠如

IASBは、2023年8月に公表された交換可能性の欠如についての修正に関するIFRS第19号の開示要求を維持することを提案している。IASBは、IAS第21号を修正し、企業に対して以下についての一貫したアプローチを適用することを要求した。

  • 通貨が他の通貨に交換可能かどうかを評価する。
  • 通貨が交換可能でない場合に、使用する為替レート及び提供する開示を決定する。

唯一の変更案は、IFRS第19号から、当該修正によって導入された開示目的、及び当該目的を充足するために必要な詳細な金額への参照を削除することである。

金融商品の分類及び測定

2024年5月、IASBは、「金融商品の分類及び測定の修正」の結果として、IFRS第19号に開示要求を追加した。当該要求事項は、基本的な融資のリスクやコスト(貨幣の時間的価値又は信用リスクなど)に直接関係しない偶発的な事象の結果として、契約上のキャッシュ・フローの金額を変更する可能性のある契約条件の影響に関連している。

当該要求事項は、IASBによって削減されていない。もたらされる開示が、要件を満たす子会社の財務諸表の利用者に、短期的なキャッシュ・フロー及び義務、ならびにソルベンシー及び流動性に関する情報を提供することになるため、IASBは、この決定を維持することを提案している。

規制資産及び規制負債

IASBは、2025年に「規制資産及び規制負債」という表題の新たな基準を公表する予定である。IFRS第19号及び新たな基準を適用する企業は、新たな基準の開示要求を適用することが要求される。IASBは、新たな基準が公表された際にIFRS第19号の現行の開示要求であるIFRS第14号「規制繰延勘定」に関する既存の開示要求を削除し、IFRS第19号において、新たな基準の開示要求が適用されることを追加することを提案している。

本EDは、規制資産及び規制負債に関する開示要求の削減を提案していない。

 

発効日、経過措置及びコメント期間

発効日又は経過措置は提案されていない。発効日は、本提案の再審議中に設定される。

本EDのコメント期間は2024年11月27日までである。

以上

 

  1. 英語版ニュースレターについては、IAS Plusのウェブサイトを参照いただきたい。
    https://www.iasplus.com/en/publications/global/igaap-in-focus/2024/ifrs-19-catch-up-ed

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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