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IASBは、投資者が持分法をどのように適用するかについての適用上の問題に応えるために、IAS第28号の修正を提案

iGAAP in Focus 財務報告|月刊誌『会計情報』2024年12月号

トーマツIFRSセンター・オブ・エクセレンス

注:本資料はDeloitteのIFRS Global Officeが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。
この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、原文については英語版ニュースレター1をご参照下さい。

 

本iGAAP in Focusでは、2024年9月19日に国際会計基準審議会(IASB)から公表された公開草案「持分法会計」(ED)に示される、IAS第28号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」の修正案を解説する。

  • IASBは、投資者が持分法を以下に対してどのように適用するかについての質問に応えるために、IAS第28号の修正を提案している。
    • 重要な影響力又は共同支配の取得時における所有持分の変動
    • 重要な影響力又は共同支配を維持している所有持分の変動(以下の場合を含む)
      • 関連会社又は共同支配企業の所有持分の追加購入
      • 関連会社又は共同支配企業の所有持分の処分
      • 投資者の所有持分が変動する、関連会社又は共同支配企業の純資産のその他の変動
    • 以下を含む、損失に対する持分の認識
      • 関連会社又は共同支配企業に対する投資をゼロに減額した投資者が、関連会社又は共同支配企業の追加持分を購入する場合に認識していない損失を「キャッチアップ」する必要があるかどうか
      • 関連会社又は共同支配企業に対する持分をゼロに減額した投資者が、関連会社又は共同支配企業の純損益及びその他の包括利益(OCI)に対する持分を別個に認識するかどうか
    • 関連会社又は共同支配企業との取引
    • 関連会社又は共同支配企業の当初認識に対する繰延税金の影響
    • 条件付対価
    • 関連会社又は共同支配企業に対する投資の公正価値の下落が、純投資が減損している可能性があるという客観的な証拠であるかどうかの評価
  • EDには提案された発効日は含まれていない-IASBが提案を再審議するときに設定される。
  • 公開草案のコメント期間は2025年1月20日に終了する。
[PDF, 537KB] ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

背景

IAS第28号は、企業が関連会社及び共同支配企業に対する投資について、連結財務諸表において持分法を使用することを要求している。また、企業は、子会社、共同支配企業、及び関連会社に対する投資について、個別財務諸表で持分法を使用することも認められている。

利害関係者は、特定の状況で持分法をどのように適用するかについて疑問を投げかけている。今回の修正案により、IASBは、IAS第28号から導かれる原則を識別し、適用することにより、これらの適用上の問題を解決しようとしている。

 

修正案

関連会社又は共同支配企業の取得原価の測定

IAS第28号には、投資者が重要な影響力又は共同支配を取得する際にどのように投資の取得原価を測定するかに関する要求事項は含まれていない(例えば、以下を含む)。

  • 関連会社又は共同支配企業に対する以前に保有していた持分を公正価値で測定するかどうか。
  • 条件付対価を認識及び測定するかどうか、もしそうなら、どのように認識及び測定するか。

IASBは、投資者が以下を行うことを提案している。

  • 重要な影響力又は共同支配の取得時に、関連会社又は共同支配企業の取得原価は、移転された対価の公正価値(関連会社又は共同支配企業に対する以前に保有していた持分の公正価値を含む)で測定する。
  • 条件付対価を移転された対価の一部として認識し、公正価値で測定する。その後、投資者は次のことを行う。
    • 資本性金融商品として分類される条件付対価は再測定しない。
    • その他の条件付対価は各報告日における公正価値で測定し、公正価値の変動は純損益に認識する。

重要な影響力又は共同支配の維持における投資者の所有持分の変動

IAS第28号は、重要な影響力又は共同支配を維持している場合、投資者が関連会社又は共同支配企業に対して、以下から生じる所有持分の変動をどのように会計処理するかに関する要求事項を含んでいない。

  • 関連会社又は共同支配企業の所有持分の追加購入
  • 関連会社又は共同支配企業の所有持分の処分(一部処分)
  • 関連会社又は共同支配企業に対する投資者の所有持分のその他の変動

IASBは、以下を要求することを提案している。

  • 関連会社又は共同支配企業の追加所有持分を購入した日において、投資者は以下を行う。
    • その追加の所有持分を認識し、移転された対価の公正価値で測定する。
    • 帳簿価額には、関連会社又は共同支配企業の識別可能な資産及び負債の公正価値に対する投資者の追加持分を含める。
    • これら2つの金額の差額は、投資の帳簿価額の一部として含まれるのれんとして会計処理されるか、又は、割安購入からの利得として純損益に会計処理される。
  • 所有持分を処分する日において、投資者は以下を行う。
    • 関連会社又は共同支配企業に対する投資の処分された部分を、投資の帳簿価額の割合として測定し、認識を中止する。
    • 受領した対価と処分された部分との差額を、利得又は損失として純損益に認識する。
  • 関連会社又は共同支配企業の所有持分のその他の変動、例えば、関連会社又は共同支配企業が新株を発行したり、発行済み株式を償還したりする場合、投資者は以下を行う。
    • 追加の所有持分を購入するかのように、所有持分の増加を認識する。その場合、投資者は、関連会社又は共同支配企業による株式の償還から生じる関連会社又は共同支配企業の純資産の変動の持分として、移転された対価の公正価値を決定する。
    • 所有持分を処分するかのように、所有持分の減少を認識する。その場合、投資者は、関連会社又は共同支配企業の資本性金融商品の発行から生じる関連会社又は共同支配企業の純資産の変動の持分として、受け取った対価を決定する。

損失に対する投資者の持分の認識

IAS第28号38項は、損失に対する投資者の持分が関連会社又は共同支配企業に対する投資者の持分と等しいか又はそれを超過する場合、投資者はさらなる損失に対する持分を認識することを中止することを要求している。しかし、IAS第28号は、関連会社又は共同支配企業への投資の帳簿価額をゼロに減額した投資者が、以下のとおりであるかどうかを特定していない。

  • 追加の所有持分を購入する際に、「キャッチアップ」調整として認識していない損失を認識し、それらの損失を追加の所有持分の取得原価から差し引く。
  • 関連会社又は共同支配企業の包括利益の各構成要素に対する持分を別個に認識する。

IASBは、投資者が以下を行うことを提案している。

  • 追加の所有持分を購入する際には、追加の所有持分の帳簿価額を減額することにより、認識していない関連会社又は共同支配企業の損失に対する持分を認識しない。
  • 関連会社又は共同支配企業の純損益に対する持分、関連会社又は共同支配企業のOCIに対する持分を別々に認識し、表示する。

見解

IASBは、投資者が関連会社又は共同支配企業の利益に対する持分を認識することを再開する場合の、純損益及びOCIにおける利益を認識する順序など、他の関連する適用上の問題に対する回答案を作成しないことを決定した。IASBの見解では、これらの問題は実務上一般的には生じておらず、したがって、プロジェクトのために選択された適用上の問題のリストには含まれなかった。

 

関連会社又は共同支配企業との取引

投資者が子会社を関連会社又は共同支配企業に売却する場合、以下の相反する要求事項がある。

  • IAS第28号28項は、投資者に対し、自身と関連会社又は共同支配企業との間の取引から生じる利得及び損失を、関連会社又は共同支配企業に対する関連のない投資者の持分の範囲でのみ認識することを要求している。
  • IFRS第10号25項及びB97項からB99項は、子会社の支配を喪失した場合の利得又は損失を全額認識することを要求している。

したがって、IASBは、投資者に対し、子会社の支配の喪失を伴う取引を含む、その関連会社又は共同支配企業とのすべての「アップストリーム」及び「ダウンストリーム」の取引から生じる利得及び損失を全額認識することを要求することにより、この矛盾を解決することを提案している。

見解

2014年、IASBは、「投資者とその関連会社又は共同支配企業の間での資産の売却又は拠出(IFRS第10号及びIAS第28号の修正)(2014年修正)」を公表した際に、IAS第28号の要求事項を修正した。2014年修正では、関連会社又は共同支配企業への譲渡が事業を含む場合は利得又は損失が全額認識され、譲渡された資産に事業が含まれていない場合は部分的な利得又は損失が認識されることを明確にした。認識されない利得又は損失は、投資の取得原価に対して消去される。

2014年の修正の確定後、IASBは、修正の適用に影響を与えるいくつかの実務上の問題を識別した。その結果、2015年12月、IASBは、2014年修正の発効日を無期限に延期した。

IASBは現在、2014年の修正の廃止を提案し、代わりにEDに示されたアプローチを提案している。また、2014年の修正によって導入された要求事項を削除するために、IFRS第10号の修正を提案することも決定した。

 

減損の兆候(公正価値の下落)

IAS第28号41A項から41C項は、関連会社又は共同支配企業への純投資が減損している可能性があることを示すさまざまな事象を説明している。これには、資本性金融商品への投資の公正価値がその取得原価を下回る著しいか又は長期にわたる下落が含まれる。

適用上の問題の1つは、投資者が投資の公正価値の下落を、その公正価値を報告日における関連会社又は共同支配企業の純投資の帳簿価額と比較することによるか、又は当初認識時の投資の取得原価と比較することにより評価すべきかどうかを問うものであった。

IASBは以下を提案している。

  • 「取得原価を下回る[...]下落」を「帳簿価額を下回る[...]下落」に置き換える。
  • 公正価値の「著しいか又は長期にわたる」下落を削除する。
  • 投資の公正価値に関する情報は、関連会社又は共同支配企業の追加持分を購入するために支払った価格、又は持分の一部を売却するために受け取った価格、又は当該投資の相場市場価格から観察される可能性があることを説明する要求事項をIAS第28号に追加する。

IASBはまた、減損に関するIAS第28号の要求事項の適用が容易になるように再編成し、その文言をIAS第36号「資産の減損」の要求事項に合わせることも提案している。

IFRS第12号「他の企業への関与の開示」及びIAS第27号「個別財務諸表」の開示要求の修正案

持分法を用いて会計処理する投資について、IASBは、投資者に以下の開示を要求するようIFRS第12号を修正することを提案している。

  • その他の所有持分の変動による利得又は損失
  • 関連会社又は共同支配企業との「ダウンストリーム」取引から生じる利得又は損失
  • 条件付対価契約に関する情報
  • その投資の期首の帳簿価額と期末の帳簿価額の間の調整表

IASBはまた、親会社に対して、個別財務諸表において持分法を使用して子会社に対する投資を会計処理する場合、子会社との「ダウンストリーム」取引から生じる利得又は損失を開示することを要求するよう、IAS第27号を修正することを提案している。

見解

IAS第27号10項は、親会社が個別財務諸表で、IAS第28号の持分法を使用して子会社、共同支配企業、及び関連会社に対する投資を会計処理することを認めている。

IASBは、IAS第27号10項を変更しないことを提案しており、これは、EDの提案が、投資者の個別財務諸表において持分法が適用される子会社に対する投資に適用されることを意味する。

 

IFRS第19号「公的説明責任のない子会社:開示」の修正案

IASBは、要件を満たす子会社に対し、条件付対価契約に関する情報を開示すること、及び、その関連会社又は共同支配企業との「ダウンストリーム」取引から生じる利得又は損失を開示することを要求するようIFRS第19号の修正を提案している。

IASBはまた、個別財務諸表において持分法を適用してその子会社に対する投資を会計処理することを選択した子会社に対し、当該子会社との「ダウンストリーム」取引から生じる利得又は損失を開示することを要求するようIFRS第19号の修正を提案している。

 

発効日、経過措置及びコメント期間

EDは発効日を提案していない。発効日は、IASBが本提案を再審議する際に決定される。

経過措置に関して、IASBは、企業に以下を要求することを提案している。

  • 関連会社又は共同支配企業とのすべての取引において利得又は損失を全額認識する要求事項を遡及適用する。
  • 移行日(通常は、適用開始日の直前の事業年度の期首)に公正価値で条件付対価を認識・測定し、それに応じて関連会社又は共同支配企業に対する投資の帳簿価額を調整することにより、条件付対価に関する要求事項を適用する。
  • その他の要求事項は移行日から将来に向かって適用する。

IASBはまた、表示される追加的な過去の期間を修正再表示することからの救済を提案している。

EDのコメント期間は2025年1月20日に終了する。

以上

 

1 英語版ニュースレターについては、IAS Plusのウェブサイトを参照いただきたい。
https://www.iasplus.com/en/publications/global/igaap-in-focus/2024/ed-equity-method

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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